石油コンビナートの特定事業所には、化学消防車などの防災資機材と、それを動かす防災要員を備えなければなりません。
車1台につき要員が何人という決まりがある以上、その人数が全員乗れる車でなければならないのか。
昭和62年の回答は、そこに別の答えを出しました。
問われているのは乗れるかどうかではありません。
甲種の化学消防車は、防災要員5名が乗車できる車でなければならないのでしょうか。
必ずしも乗車できるものに限られないとされました。
求められているのは、直ちに防災活動を行えるよう措置することです。
義務づけられた車より大きい車を備えた場合、要員の数はどちらに合わせるのでしょうか。
実際に備えた車のほうです。
小型消防車の義務のところに普通消防車を置いたなら、5人の防災要員を置かなければなりません。
- 甲種化学消防車は必ずしも防災要員5名が乗車できるものに限られませんが、防災要員が直ちに防災活動を行えるよう措置する必要があります
- 小型消防車の備え付けが義務づけられている第二種事業所で普通消防車を備え付けた場合は、5人の防災要員を置かなければなりません
- 消火用屋外給水施設の共同設置が認められている複数の油槽所では、泡消火薬剤を一括して共同保管してさしつかえありません
- オイルフェンス展張船と油回収船を兼用することはできないとされています
- 担当者であっても、防災管理者を補佐し防災管理者に代わつて自衛防災組織を統括できると認められる者は副防災管理者に選任できます
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目次
化学消防車に要員5名が乗れる必要があるか

この5名という数字を、車の乗車定員と結びつけてよいのかという問いでした。
5名という数字は、その車を運用するのに必要な人数です。全員が同じ車で現場へ向かう必要はありません。
ただし条件が付いています。防災要員が直ちに防災活動を行えるよう措置すること。別の車で追いかけるにせよ、徒歩で駆けつけるにせよ、車と人が同じタイミングで現場に揃う段取りが要ります。
前の記事で見た1キロメートルという範囲も、この段取りを成り立たせるための条件だったと読めます。
乗車定員の話ではないのですね。
運用に必要な人数です。
車ごとの要員数を、体制表で確かめてください。
義務より大きい車を備えたら要員は何人か

このとき、要員の数は義務づけられた小型消防車の基準で足りるのか、それとも実際に置いた普通消防車の基準になるのか。
示されたのは5人の防災要員という数字だけでした。義務づけの水準ではなく、現に備え付けた資機材に応じた人数になります。
ここは前の記事で見た論点と区別が要ります。あちらは法基準を満たしたうえで別に車両を増やした場合で、増やしたぶんに要員を置く法的義務はないとされていました。
今回は、義務づけられた1台の枠に、より大きい車を当てはめた場合です。代替として置いた以上、その車の基準で人を置くことになります。
上位の車を置けば体制も上位に揃える。増設とは扱いが違うという整理です。
実際に置いた車で決まるのですね。
数字が示されています。
増備の前に、必要な人数を計算してください。
泡消火薬剤を複数の事業所で一括保管できるか

照会では、隣り合う3つの油槽所がいずれも第一種事業所で、消火用屋外給水施設の共同設置がすでに認められている状況が示されました。敷地は350メートル×240メートルの範囲に収まっています。
判断の理由がはっきり書かれています。防災活動上、一の事業所と同様の条件にあること。
すでに給水施設を共同設置しているという事実が効いています。水を共有できる距離にあるなら、薬剤も同じように扱えるという筋道です。
逆にいえば、給水施設が別々であったり、駆けつけるのに時間がかかる位置関係であれば、同じ結論にはなりません。距離と既存の共同設備が前提になっています。
共同での保管が認められた例もあるのですね。
条件がそろっていました。
共同化を考えるなら、距離と管理の方法を整理してください。
展張船と油回収船を兼用できるか

どちらも船である以上、1隻で両方を兼ねられないかという相談でした。
理由は書かれていませんが、2つの船が担う役割を考えれば筋は通ります。
オイルフェンス展張船は、流出した油が広がる前に囲い込む船です。油回収船は、囲い込んだ油を吸い上げる船です。
どちらも流出直後に同時に動く必要があります。1隻でこなそうとすれば、囲い込みが終わるまで回収を始められません。
役割が違うだけでなく、同じ時間帯に並行して働く関係にある。だから兼用が認められないという読み方になります。
1隻で兼ねることはできないのですね。
役割が異なります。
備え付けの内容を、区分ごとに確認してください。
担当者全員を副防災管理者にできるか

そこで問われたのが、誰を選べるのかという範囲です。
全員という問いに、そのまま全員でよいとは答えていません。示されたのは選べる人の条件です。
1つは防災管理者を補佐できること。もう1つは、防災管理者に代わつて自衛防災組織を統括できると認められること。緊急時の措置を習得しているだけでは足りず、組織全体を動かせるかどうかが問われます。
そのうえで、代行する順位をあらかじめ定めておく必要があるとされました。複数選任しておきながら順位が決まっていなければ、発災時に誰が指揮を執るのか分からなくなるためです。
選任の範囲を広げることと、指揮系統を明確にすることが、ひとつの答えの中で組み合わされています。
選べる人には条件があるのですね。
統括できることが要件です。
選任の候補を、条件と照らして選んでください。
よくある質問
まとめ
- 甲種化学消防車は必ずしも防災要員5名が乗車できるものに限られません
- ただし防災要員が直ちに防災活動を行えるよう措置する必要があるとされています
- 小型消防車の備え付けが義務づけられている第二種事業所で普通消防車を備え付けた場合は、5人の防災要員を置かなければなりません
- 法基準を満たしたうえで別に車両を増やした場合とは扱いが違い、代替として置いた車はその車の基準で人を置くことになります
- 消火用屋外給水施設の共同設置が認められている3油槽所は、防災活動上、一の事業所と同様の条件にあるとして泡消火薬剤の共同保管が認められました
- オイルフェンス展張船と油回収船を兼用することはできません
- 副防災管理者に選任できるのは、防災管理者を補佐し、かつ防災管理者に代わつて自衛防災組織を統括できると認められる者です
- 複数選任する場合は、防災管理者の業務を代行する順位をあらかじめ定めておく必要があります
置いた設備に体制を合わせる、という考え方なのですね。
すっきりしました。
設備を良くしたつもりが人員の義務を増やしていた、ということも起こります。
㈱防災屋でも体制の見直しからご相談を承っています。
参考・出典
- 石油コンビナート等災害防止法に関する質疑応答(昭和62年1月12日 消防地第12号 消防庁地域防災課長から関係都道府県消防防災主管部長あて回答)
- 石油コンビナート等災害防止法施行令第20条
- 石油コンビナート等における特定防災施設等及び防災組織等に関する省令
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の事業所についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




