車両に固定されたタンクへ危険物を注入する一般取扱所には、開放型の建物を認める専用の特例(規則第28条の58)が定められています。
しかしこの特例には、扱う危険物が高引火点危険物のみに限られる場合だけ使える、もう一段踏み込んだ上乗せの特例があります。
それが規則第28条の62で定める特例です。
建物の耐火性能に関する基準まで、開放型の条件に置き換わる仕組みを解説します。
うちはタンク車への注入専用の設備なので、開放型の建物の特例はすでに使っています。
それに加えて高引火点危険物のみを扱っているなら、規則第28条の62の特例がさらに使えるかもしれません。
まずは根拠条文から確認していきましょう。
今の開放型の建物より、さらに基準が緩むということでしょうか。
はい、建物の耐火性能まわりが大きく置き換わります。
順番に見ていきましょう。
- 対象は車両に固定されたタンクへ危険物を注入する作業を専ら行う一般取扱所(あわせて容器への詰替えを行うものを含む)です
- 高引火点危険物のみを100度未満の温度で取り扱う場合に限り、規則第28条の62の特例が使えます
- 免除される基準は保安距離・保有空地・建物の耐火性能・床の防液措置など令第9条第1項の広い範囲に及びます
- 距離の数字自体は用途を問わない特例と同じ短縮表を使いますが、建物や設備の基準はタンク注入専用の開放型の条件に置き換わります
- 対象はタンク注入・詰替え専用の一般取扱所に限られ、それ以外の作業を兼ねる施設には及びません
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目次
タンク注入専用の一般取扱所とは何を指すのか

まずはこの区分がどう定義されているかを確認します。
車両に固定されたタンクに危険物を注入する作業を専ら行う一般取扱所その他これに類する一般取扱所
(同令に基づく規則第二十八条の五十四第四号より)専ら車両に固定されたタンクに液体の危険物(アルキルアルミニウム等、アセトアルデヒド等及びヒドロキシルアミン等を除く。)を注入する一般取扱所(当該取扱所において併せて液体の危険物を容器に詰め替える取扱所を含む。)
壁を2方向省いた開放型の建物や、タンク車用と容器詰替え用に分けた空地といった条件を満たせば、地階の禁止や耐火構造といった一般的な基準の一部が適用されません。
本記事ではこの土台の上に、扱う危険物を高引火点危険物のみに絞った場合の上乗せの特例を解説します。
両方の条件を組み合わせると、基準はどこまで軽くなるのかを見ていきましょう。
開放型の建物の特例は知っていましたが、それとは別の特例が重なるとは知りませんでした。
はい、用途の特例と危険物の特例は別の条文で定められています。
次は条件を確認しましょう。
高引火点危険物ならなぜ二段目の特例が使えるのか

まず政令の授権規定を確認します。
高引火点危険物のみを総務省令で定めるところにより取り扱う一般取扱所については、総務省令で、前二項に掲げる基準の特例を定めることができる。
これを受けて規則は、用途を問わない特例(第28条の61)と、用途別特例に上乗せする特例(第28条の62など)の2通りを用意しました。
タンク注入専用の一般取扱所(第28条の54第4号)に上乗せするのが第28条の62です。
根拠条文を確認します。
令第十九条第三項の規定により同条第二項に掲げる基準(第二十八条の五十四第四号に定める一般取扱所に係る基準に限る。)の特例を定めることができる一般取扱所は、高引火点危険物のみを百度未満の温度で取り扱うものとする。
違うのは、上乗せする先が第1項の基本基準ではなく第28条の54第4号(タンク注入専用)に限った用途別特例である点です。
つまりこの特例は、タンク注入専用の一般取扱所にだけ効く上乗せということになります。
条文の文言はほぼ同じなのに、上乗せする先が違うんですね。
上乗せする先の違いが、免除される基準の広さの違いにつながります。
中身を見ていきましょう。
免除される基準はどこまで広がるのか

ここがこの特例のいちばんの核心です。
第一項の一般取扱所のうち、その位置、構造及び設備が次の各号に掲げる基準に適合するものについては、令第十九条第一項において準用する令第九条第一項第一号、第二号、第四号から第十二号まで、第十八号及び第十九号(中略)の規定は、適用しない。
一 第十三条の六第三項第一号及び第二号並びに第二十八条の五十八第二項第三号から第七号までに掲げる基準に適合するものであること。
二 建築物を設ける場合にあつては、当該建築物は、壁、柱、床、はり及び屋根を耐火構造とし、又は不燃材料で造るとともに、窓及び出入口に防火設備又は不燃材料若しくはガラスで造られた戸を設けること。
用途を問わない特例(第28条の61)では免除されなかった床の防液措置・採光や換気の設備・可燃性蒸気の排出設備・屋外設備の囲い(第9号から第12号)まで、この特例では免除の対象に入ります。
その代わりに適用されるのが、保安距離と保有空地の短縮表(第13条の6第3項第1号・第2号)と、開放型の建物の条件(第28条の58第2項第3号から第7号)です。
建物を設ける場合も、壁や屋根を耐火構造にするか不燃材料にするかを選べるという軽い基準に置き換わります。
免除される号は増えても、代わりの基準がゼロになるわけではないという点は他の特例と同じです。
用途を問わない特例より免除される号が増えるのは、なぜなんでしょうか。
対象がもともとタンク注入専用の開放型の施設に絞られているためと考えられます。
次は見落としやすい点を確認しましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

とくに注意したい点を確認します。
令第十九条第三項の規定により同条第二項に掲げる基準(第二十八条の五十四第四号に定める一般取扱所に係る基準に限る。)の特例を定めることができる一般取扱所は、高引火点危険物のみを百度未満の温度で取り扱うものとする。
第28条の61の建物では屋根を不燃材料にし窓や出入口に防火設備を設ける基準がそのまま残りますが、この特例では開放型の空地や舗装の条件(第28条の58)が主役になり、建物自体を設けない構造も想定されています。
また、この特例は第28条の54第4号に定める一般取扱所に限られるため、同じ敷地内でタンク注入以外の作業(塗装や詰替えなど)を兼ねている部分には適用されません。
高引火点危険物以外を少しでも混在させたり、取扱温度が100度以上に達したりすれば、この特例からは外れます。
「距離の数字が同じだから建物の基準も同じはず」という思い込みが、いちばんの見落としどころです。
うちはタンク注入のほかに容器への詰替えも同じ敷地でやっていますが、それも対象になりますか。
条文上はタンク車への注入とあわせて行う詰替えも対象に含まれます。
最後に確認事項をまとめます。
明日から何を確認すればよいのか

順番に見ていきましょう。 まず、自社の施設が第28条の54第4号のタンク注入専用の区分に当てはまるかを確認してください。
そのうえで扱う危険物の引火点が100度以上か、実際の取扱温度が100度未満かの両方を確認します。
条件を満たすなら、保安距離と保有空地は第13条の6第3項の短縮表に、建物や空地の基準は第28条の58の開放型の条件と第28条の62自体の建物条件に置き換わっているかを図面で確かめます。
同じ敷地で他の作業(塗装や詰替え専用の別区分など)を兼ねている場合は、その部分にはこの特例が及ばないことを忘れず確認しましょう。
判断に迷う場合は、着工前に所轄消防署へ事前相談することをおすすめします。
用途の区分と危険物の条件、両方を確認すればいいんですね。
用途の区分と危険物の条件の両方から確認してみてください。
次によくある質問をまとめます。
よくある質問
まとめ
分かりました、用途の区分と危険物の条件を次の点検であわせて確認します!
上乗せの特例の当てはめは複雑なので、迷ったら早めにご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第十九条第二項第四号・第三項
- 危険物の規制に関する規則第二十八条の五十四第四号・第二十八条の五十八
- 危険物の規制に関する規則第二十八条の六十二
- 危険物の規制に関する規則第十三条の六第三項
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





