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高引火点危険物のみを100度未満で扱う一般取扱所はなぜ用途を問わず基準が緩和されるのか|保安距離の短縮表と窓の扱いを解説

高引火点危険物のみを扱う一般取扱所はなぜ用途を問わず基準が緩和されるのかを解説する記事のアイキャッチ画像

危険物を取り扱う一般取扱所には、塗装や詰替えといった用途ごとに細かく分かれた特例が数多く定められています。
しかしそれらとは別に、扱う危険物の引火点と取扱温度だけに着目した特例が1つあります。
それが高引火点危険物のみを100度未満で取り扱う一般取扱所の特例です。
用途を問わず、保安距離と保有空地の基準を短縮できる仕組みを解説します。

うちの一般取扱所は塗装や詰替えのような決まった用途をしていないので、特例は使えないとあきらめていました。

用途を問わない特例もあります。
高引火点危険物だけを扱うなら、規則第28条の61の特例が使えるかもしれません。
まずは根拠条文から確認していきましょう。

特例を使うと保安距離や保有空地は要らなくなるということでしょうか。

いいえ、短い距離の基準に置き換わるだけです。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 対象は引火点が100度以上の第四類の危険物(高引火点危険物)のみを100度未満の温度で扱う一般取扱所です
  • 塗装や詰替えのような用途の限定が無く、どんな一般取扱所でも条件を満たせば使えます
  • 特例を使うと保安距離保有空地は、通常より短い距離の表に置き換わります
  • 距離がゼロになるわけではなく、住居・学校・文化財・高圧ガス施設ごとに定められた距離は残ります
  • 取扱温度が100度以上になったり、対象外の危険物を混ぜて扱ったりすると、この特例は使えなくなります

高引火点危険物の一般取扱所の特例として対象は用途を問わない引火点100度以上のみ取扱温度は100度未満距離は短縮表で決まるの4段階を示す図解

高引火点危険物だけを扱う一般取扱所とは何か

一般取扱所の建物と温度計付きの危険物容器のイメージ
一般取扱所には政令が用途別に多くの特例を定めていますが、それらとは性質の違う特例が1つあります。
まずはこの特例がどんな考え方に基づいているかを確認します。
危険物の規制に関する政令第十九条第三項(一般取扱所の基準)
高引火点危険物のみを総務省令で定めるところにより取り扱う一般取扱所については、総務省令で、前二項に掲げる基準の特例を定めることができる。
(同令第九条第二項より)引火点が百度以上の第四類の危険物(以下「高引火点危険物」という。)
この特例は「専ら〇〇を行う一般取扱所」という用途の縛りがありません
塗装・詰替え・油圧装置など個別の作業を条件にする他の特例と違い、扱う危険物の引火点取扱温度だけで対象になるかどうかが決まります。
高引火点危険物とは、引火点が100度以上の第四類の危険物のことです。
用途を問わないぶん、多くの一般取扱所に当てはまる可能性がある特例といえます。

うちは危険物を詰め替える設備なんですが、それでもこの特例を使える余地はありますか。

作業の種類は問いません。
扱う危険物と温度の条件を満たすかどうかで判断します。

どんな条件ならこの特例を使えるのか

温度計の針が安全域を指すタンクと危険物容器のイメージ
対象になる一般取扱所の条件は、規則が具体的に定めています。
条文を確認します。
危険物の規制に関する規則第二十八条の六十一第一項(高引火点危険物の一般取扱所の特例)
令第十九条第三項の規定により同条第一項に掲げる基準の特例を定めることができる一般取扱所は、高引火点危険物のみを百度未満の温度で取り扱うものとする。
条件は「高引火点危険物のみを100度未満の温度で取り扱うこと」という1文で定められています
危険物そのものの引火点が100度以上であることに加えて、実際に取り扱う温度が100度未満に収まっている必要があります。
塗装専用や詰替え専用の特例(第28条の55・第28条の59など)にあった指定数量の倍数の上限は、この特例には条文上定められていません。
一方で、対象になる危険物の種類は高引火点危険物だけに限られ、他の危険物を混ぜて扱うことはできません。
まずは自社が扱う危険物の引火点と、実際の取扱温度を確認することから始めましょう。

うちは指定数量の倍数が30を超えているので、特例は無理だと思っていました。

この特例には倍数の上限がありません
温度と危険物の種類が条件を満たすか確認してみましょう。

保安距離と保有空地の基準はどう変わるのか

一般取扱所から住宅までの短縮された距離を示すイメージ
条件を満たすと、どの基準が置き換わるのかを確認します。
ここがこの特例のいちばんの核心です。
危険物の規制に関する規則第二十八条の六十一第三項
第一項の一般取扱所のうち、その位置及び構造が第十三条の六第三項各号に掲げる基準に適合するものについては、令第十九条第一項において準用する令第九条第一項第一号、第二号、第四号、第六号から第八号まで、第十八号及び第十九号(中略)の規定は、適用しない。
距離がゼロになるのではなく、通常より短い距離の表に置き換わる点が他の特例と違います
第十三条の六第三項の表では、住居用の建築物までは10メートル以上、学校や病院までは30メートル以上、重要文化財までは50メートル以上、高圧ガス施設までは20メートル以上という距離が定められています。
保有空地も3メートル以上で足り、防火上有効な塀を設けるなどの措置でさらに短縮・免除できる場合があります。
一方で建物の屋根は不燃材料とし、窓や出入口には防火設備を、延焼のおそれのある部分にはガラスの代わりに網入りガラスを用いる必要があります。
塗装専用の特例のように「無窓の耐火区画にすれば距離を確保しなくてよい」という完全な免除ではなく、あくまで短い距離の表に差し替わるという理解が正確です。

建物の種類によって距離の基準がいくつも分かれているんですね。

はい、相手方の建物ごとに距離が違うので、周囲をすべて洗い出す必要があります。
次は見落としやすい点を見ていきましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

温度計の針が危険域に近づき警告マークが付いたイメージ
条件をいったん満たしても、日々の運用の中で外れてしまうことがあります。
とくに見落としやすい点を確認します。
危険物の規制に関する規則第二十八条の六十一第一項(再掲)
令第十九条第三項の規定により同条第一項に掲げる基準の特例を定めることができる一般取扱所は、高引火点危険物のみを百度未満の温度で取り扱うものとする。
「引火点100度以上」と「取扱温度100度未満」は別の条件で、両方を常に満たす必要があります
加熱工程などで取扱温度が100度以上に達した瞬間、この特例の対象から外れてしまいます。
また、対象は高引火点危険物のみを扱う一般取扱所に限られるため、洗浄剤や添加剤として引火点の低い危険物を少しでも混在させると条件を満たさなくなります。
指定数量の倍数に上限が無いからといって取扱量を無制限に増やせるわけではなく、増設のたびに温度管理の設計を確認し直す必要があります。
距離の表も相手方の建物の種類によって4段階に分かれているため、周囲のどれか1つを見落とすと基準違反になりかねません。

工程の都合で一時的に温度が上がってしまうことがあるのですが、そのつど条件から外れるんでしょうか。

条文上は温度の条件が常に効くため、超える運用が見込まれるなら見直しが必要です。
最後に確認事項をまとめます。

明日から何を確認すればよいのか

担当者が書類を手に建物までの距離を確認しているイメージ
ここまでの基準を、実際の確認作業に落とし込みます。
順番に見ていきましょう。 まず、自社が扱う危険物の引火点と、実際の取扱温度の両方を確認してください
引火点100度以上・取扱温度100度未満のどちらか一方でも満たさなければ、この特例は使えません。
次に、敷地の周囲にある建物を住居・学校や病院・重要文化財・高圧ガス施設の4つの区分で洗い出し、それぞれの距離が基準を満たしているかを図面と現地の両方で確認します。
加熱工程の追加や取扱量の増設を計画する際は、着工前に温度条件と距離の両方を再計算する運用を社内に定めておくと安心です。
判断に迷う場合は、着工前に所轄消防署へ事前相談することをおすすめします。

つまり温度と周囲との距離を、定期的に確認すればいいんですね。

温度条件と距離区分の再確認から始めてみてください。
次によくある質問をまとめます。

よくある質問

Q塗装や詰替えなど、他の特例とこの特例を同時に使うことはできますか?
A条文上は用途を問わないため、高引火点危険物のみを100度未満で扱うという条件を満たせば、他の特例と対象が重なる場合もあります。どちらの基準を適用するかは所轄消防署に確認してください。
Q保有空地はまったく確保しなくてよいのですか?
Aいいえ。条文は3メートル以上の空地を基本としており、防火上有効な措置を講じた場合に限って幅を減じたり保有しないことができるとしています。
Q指定数量の倍数が大きい設備でも、この特例は使えますか?
A条文上、指定数量の倍数の上限は定められていません。ただし距離や空地の基準は倍数にかかわらず一律なので、取扱量が多い施設ほど周囲との距離の確保が重要になります。
Q窓を設けても大丈夫ですか?
Aはい。塗装専用の特例と違い窓の設置自体は禁止されていませんが、延焼のおそれのある部分に設ける窓は網入りガラスにする必要があります。

まとめ

高引火点危険物の一般取扱所の特例は、政令第19条第3項の規定により用途を問わず定められています
対象は引火点100度以上の第四類の危険物100度未満の温度で扱う一般取扱所です
塗装や詰替えの特例と違い、指定数量の倍数の上限は条文に定められていません
保安距離は10メートル〜50メートルの短縮表に、保有空地は3メートル以上に置き換わります
距離がゼロになるのではなく、相手方の建物の種類ごとに定めた短い距離が残ります
取扱温度が100度以上になったり対象外の危険物を混ぜたりすると、特例の対象から外れます
加熱工程の追加や増設のたびに、温度条件と距離の両方を確認し直すことが実務での見落とし防止につながります

分かりました、温度条件と周囲との距離を次の点検で確認します!

距離の再計算や図面の確認は複雑なので、迷ったら早めにご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第十九条第三項
  • 危険物の規制に関する政令第九条第二項
  • 危険物の規制に関する規則第二十八条の六十一
  • 危険物の規制に関する規則第十三条の六第三項
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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