タンクローリーで運ぶ危険物は1種類に限られるのか、という疑問は古くからありました。
ガソリンを運んだあとに灯油や重油を運ぶことは実際にありうるからです。
許可のときに品名をいくつまで挙げられるのか、入れ替えるときに何をすべきかは実務に直結します。
この記事では許可と完成検査をめぐる判断を消防庁の質疑応答に沿って整理します。
ローリー1台で運べるんは1種類だけか。ガソリンの次に灯油は積めんのか。
1種類ではありません。
回答では移動タンク貯蔵所の許可に係る危険物は1品名に限定されるものではないとされています。
ほなそのまま入れ替えてええんか。抜いたら次を積むだけやろ。
そこに注意書きがあります。
ガソリンと灯油の混合は危険性が高まるため十分な洗滌を行なつた後に貯蔵替えをするよう指導されたいとされています。この記事でまとめて解説します!
- 移動タンク貯蔵所の許可に係る危険物は1品名に限定されるものではない
- 2品名以上と認められる場合は各品名の貯蔵容量の総計が当該貯蔵タンクの貯蔵最大容量以内であるときに限られる
- ガソリンと灯油を入れ替える場合は当該貯蔵タンクの十分な洗滌を行なつた後に貯蔵替えをするよう指導されたい
- ボイラー室を地下室に設けてよく保安距離及び保有空地に関する規定の適用除外も認められる
▼
目次
タンクローリーの許可品名は1品名に限定されない

昭和40年4月6日付け自消丙予発第56号は、福岡県民生部長からの照会に答えたものです。
問われたのは移動タンク貯蔵所設置許可申請の際、危険物の規制に関する政令第6条第1項第4号に規定する品名に関しては、例えば、第一石油類であるガソリンの運搬に使用した後、第二石油類の灯油又は第三石油類の重油を運搬するなどのことが事実上考えられるので、火災予防上支障がなければ、2品名を対象として同時に許可することも考えられるという点でした。
照会は四つに分かれており、現行法令では、許可品名は1品名に限定されるのかから始まっています。
複数の品名で許可を取れます。
ガソリンを運んだあとに灯油や重油を運ぶという運用は、許可の段階で織り込んでおけるということです。
そのつど許可を取り直す必要はありません。
各品名の容量の総計がタンクの最大容量以内であること

ただし条件が付いています。
複数の品名を挙げるときの数量の考え方です。
品名ごとにタンクの最大容量まで積める、という意味ではありません。
すべての品名を合計した量がタンクの容量に収まるように許可されるということです。
複数の室に仕切られたタンクであれば、それぞれの室にどの品名をどれだけ積むかを整理して申請することになります。
ガソリンと灯油の入れ替えには十分な洗浄が求められる

この回答でもっとも実務に効くのが、注として添えられた指導です。
品名を入れ替えるときの手順に関するものです。
危険性の理由が二つ挙げられている点が重要です。
一つは燃焼範囲の拡大、もう一つは静電気の発生機会の増大です。
ガソリンが残った状態で灯油を積むと、灯油だけの場合よりも燃えやすい混合気ができやすくなります。
また流動によって静電気が生じる機会が増えることも指摘されています。
許可が下りていても、切り替えのたびに洗浄という手順が必要になるということです。
高層建築物のボイラー室は地階に設けることができる

同じ照会の三つめは、ビルの設備に関するものでした。
最近建築される事務所、病院等は高層建築物が多く、これに伴つてボイラー室を地階に設けることが殆んどであるという実情が述べられています。
問われたのは、昭和36年自消甲予発第25号により示されたボイラー室については危険物の規制に関する政令第9条第4号の規定は適用しないことができるという解釈についてです。
回答は3 (1)及び(2) お見込みのとおりでした。
地階に設けてよく、あわせて保安距離と保有空地の規定も適用除外になるという整理です。
地階でも設置できます。
建物の中に埋め込まれた形になる以上、周囲との距離や空地を求めても意味がないという判断といえます。
他の法令の耐圧証明では消防法の水圧検査に代えられない

昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号は、圧力タンクの水圧試験についての照会です。
同じく福岡県民生部長から出されました。
照会は屋内タンク貯蔵所及び屋外タンク貯蔵所の圧力タンクについては、労働基準局で、ボイラー及び圧力容器安全規則の規定により、最高使用圧力の2倍の水圧試験を行なつているが、この耐圧証明をもつて、危険物の規制に関する政令第8条の水圧検査に合格したものとみなすことができるかというものでした。
より厳しい条件の試験であっても、別の法令の検査に代えることはできないという整理になります。
ただし回答はそこで終わりません。
ただし、同時に検査を行なうよう運用することが望ましいと付け加えられています。
形式としては別々の検査であっても、実施の場面では合わせて行えばよいという現実的な提案です。
同時に受けるのが得策です。
よくある質問
まとめ
- 移動タンク貯蔵所の許可に係る危険物は1品名に限定されるものではない
- 2品名以上の場合は各品名の貯蔵容量の総計が当該貯蔵タンクの貯蔵最大容量以内であるときに限られる
- ガソリンと灯油の入れ替えでは燃焼範囲の拡大や静電気の発生機会の増大等の危険性が考慮される
- そのため当該貯蔵タンクの十分な洗滌を行なつた後に貯蔵替えをするよう指導される
- 高層建築物のボイラー室は地下室に設けてよいと解される
- あわせて政令第9条第1号の保安距離及び第2号の保有空地に関する規定は適用除外となる
- 労働基準局の耐圧証明をもって政令第8条の水圧検査に合格したものとみなすことはできない
- ただし同時に検査を行なうよう運用することが望ましいとされている
許可は取れても、洗うてからやないとあかんのやな。覚えとくわ。
そのとおりです。
許可の品名や施設の計画についても、所轄消防署との協議からお手伝いします。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第11条・第11条の2 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第6条・第8条・第9条・第20条・第23条 e-Gov法令検索
- ボイラー及び圧力容器安全規則(昭和34年労働省令第3号) e-Gov法令検索
- 圧力タンクの水圧試験について(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から福岡県民生部長あて回答)
- 移動タンク貯蔵所設置許可の際の危険物の品名の数について(昭和40年4月6日付け自消丙予発第56号 予防課長から福岡県民生部長あて回答)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の製造所等の許可及び完成検査に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。




