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多人数が住むオフィスや倉庫はなぜ消防と建築の両方から調べられるのか|脱法ハウス問題を受けた消防庁と国交省の連携体制を解説

多人数が住むオフィスや倉庫はなぜ消防と建築の両方から調べられるのかを解説する記事のアイキャッチ画像

オフィスや倉庫として届け出ていた建物の中に、実は多人数が寝泊まりする個室がぎっしり並んでいた。
そんな建物が全国の特定行政庁で相次いで見つかり、社会問題になったことがあります。
用途は事務所や倉庫のままなのに、実態は住居として使われている建物は、建築基準法にも消防法令にも引っかかる可能性があります。
こうした建物は消防と建築の両方から調べが入る仕組みができています。

うちのビルにもレンタルオフィスとして貸している部屋があるんですが、中でどう使われているかまでは把握していません。

そこがまさに問題になった点です。
オフィスや倉庫のはずが、多人数の住居として使われている建物が各地で見つかりました。

用途が事務所のままなら、消防のほうは関係ないんじゃないですか。

いいえ、実態が住居なら消防法令上の扱いも変わってきます。
建築部局と消防機関が情報を共有する仕組みを解説します。

この記事の結論
  • オフィスや倉庫の名目で多人数を住まわせている建物が各地で確認された
  • 国土交通省が情報受付窓口を設け、疑いのある物件の情報を特定行政庁へ提供する仕組みができた
  • 建築部局と消防機関は立入調査の結果を互いに通報し合う
  • 依頼があれば合同で立入検査を行い、違反は迅速に是正させる
  • 実態が寄宿舎に該当すると、間仕切り壁を準耐火構造にする義務が生じる

建築部局と消防機関が情報を共有し合同で立入検査を行う流れを示す図解

多人数の居住実態がある建物はなぜ社会問題になったのか

オフィスとして届け出た建物の中に多人数が寝泊まりする個室が並んでいる様子
事務所や倉庫として使われているはずの建物の中に、実は多くの人が寝泊まりしている個室が並んでいる。
そんな物件が複数の特定行政庁で見つかったことを受け、国土交通省と消防庁が連携に乗り出しました。
多人数の居住実態がありながら防火関係規定などの建築基準法違反の疑いのある建築物における建築部局との連携について(平成25年6月10日 消防予第230号消防庁予防課長) 今般、国土交通省から別添のとおり「多人数の居住実態がありながら防火関係規定等の建築基準法違反の疑いのある建築物に関する対策について」(平成25年6月10日付け国住指第657号)が発出されました。この通知における物件については、多人数の居住実態がありながらオフィス等の用途に供している建築物であると称して、建築基準法上の防火関係規定違反等の疑いのある状況で使用されていることが確認されており、国土交通省においては、情報受付窓口を設け、違反の疑いのある個別の具体的物件の情報収集や違反是正指導を実施しております。
看板は事務所や倉庫のままで、中身だけ住居に変わっている建物が問題になりました。
当時は、狭い個室を大量に作って多人数に貸し出す建物が全国で話題になり、国土交通省が実態調査に乗り出す事態になっています。
この通知は、その調査結果を受けて消防庁予防課長が発出したもので、宛先は都道府県の消防防災主管部長・東京消防庁・指定都市の消防長です。
消防組織法第37条の規定に基づく助言として発出されているため、罰則を伴う義務ではなく、実務の連携を促す位置づけになっています。
これらの物件は、火災が発生した際の人命危険性が高いものが含まれると考えられることから、特に注意が呼びかけられました。

看板が事務所のままなら見た目ではわからなさそうですね。

だからこそ、建築部局と消防機関が現場の情報を持ち寄る必要があったんです。
次はその仕組みを見ていきましょう。

どんな建物のどんな使われ方が対象になるのか

狭い個室が並ぶ間取り図と建物の確認申請書類を見比べる様子
対象になるのは、届け出ている用途と、実際の使われ方がずれている建物です。
特に人が大勢住み着いている状態かどうかが、判断の分かれ目になります。
(同通知) これらの物件については、特定行政庁からの情報を勘案すると、建築基準法上の「寄宿舎」に該当する可能性が高く、防火上主要な間仕切り壁を準耐火構造にすること等が必要と考えています。
用途は事務所でも、実態が寄宿舎なら建築基準法上の扱いも変わります。
狭い個室を並べて多人数が寝泊まりする形態は、建築基準法上の寄宿舎に近い実態と判断される可能性が高いとされています。
寄宿舎に該当するかどうかは個々の建物の使われ方次第で、単に「オフィスと表示している」だけでは判定を左右しません。
賃貸で個室を貸し出す事業者だけでなく、そうした建物を保有するオーナーや管理を任された管理会社も無関係ではいられません。

寄宿舎と認められると、なにが変わるんですか。

各居室を区切る間仕切り壁の構造まで問われるようになります。
詳しくは後の章で説明します。

建築部局と消防機関はどうやって情報を共有するのか

建築部局の職員と消防職員が並んで一つの建物を合同で立入検査している様子
見つかった物件をどちらか一方の部局だけで抱え込まないように、通知は双方向の連絡ルートを定めています。
必要があれば、合同で現地に入ることも想定されています。
(記) 1 建築部局との情報共有について (1) 建築部局が行う立入調査等により当該物件を認めた場合は、消防機関に対して情報提供が行われる予定である。 (2) 消防機関が実施する査察等において、当該建築物を認めた場合は、建築部局に対し情報提供を行うこと。 2 建築部局等と連携した立入検査について (1) 建築部局から依頼があった場合は、必要に応じて合同で立入検査等を実施すること。 (2) 当該物件に対する立入検査等により、消防法令違反等の防火安全上の不備が認められた場合は、迅速に是正措置を講ずること。
情報は建築部局から消防機関へ、消防機関から建築部局へ、双方向に流れます。
建築部局が立入調査で疑わしい物件を見つければ消防機関に伝わり、逆に消防の査察で見つかれば建築部局に伝わる仕組みです。
建築部局から依頼があれば、消防機関は必要に応じて合同で立入検査を実施することになっています。
立入検査で消防法令違反などの不備が見つかった場合は、迅速に是正措置を講じるよう求められています。
どちらか片方の部局だけが情報を握ったままにならない、という点がこの仕組みの狙いです。

消防の査察で気づいたことが、建築のほうにも伝わるんですね。

はい、逆に建築部局からの情報が消防に届くこともあります。
片方だけの対応では終わらない仕組みです。

見落としやすいのはどこか

準耐火構造の間仕切り壁と普通の間仕切り壁を比較している様子
見落としやすいのは、「用途を変えていないから大丈夫」という思い込みです。
実態が変われば、求められる構造も変わります。
(同通知) それでも正当な理由なく是正が行われない場合は建築基準法第9条による違反是正命令を行うことなどにより、着実な是正促進を図られるようお願いします。なお、消防部局其他部局が所管する法令について違反又はその疑いを発見した場合には、当該部局に速やかに連絡を行ってください
建築基準法施行令第114条第2項 寄宿舎の宿泊室及び住戸を区画する各壁は、(略)その主要構造部を準耐火構造とし、かつ、小屋裏又は天井裏に達するようにしなければならない。
用途表示を変えていなくても、実態が寄宿舎なら間仕切り壁の構造義務は発生します。
建築基準法施行令は、寄宿舎の各居室を区切る壁について、準耐火構造とし小屋裏まで届かせることを求めています。
薄いパーティションで区切っただけの個室は、この基準を満たしていない可能性があります。
正当な理由なく是正が行われない場合は、建築基準法第9条による違反是正命令の対象になることも通知で示されています。
消防部局が査察の過程で他の部局の所管法令の違反に気づいたときは、速やかにその部局へ連絡することも求められています。

薄い壁で区切っただけの個室がたくさんあるんですが、それだけでも問題になりますか。

寄宿舎と判断されれば準耐火構造の壁が必要になります。
まずは今の壁の仕様を確認しましょう。

明日から何を確認すればよいのか

建物のオーナーが用途と図面を見比べて確認している様子
自分の建物が該当するかどうかは、貸し出す前に確認しておくのが一番です。
入居後に指摘されると、是正の手間も費用も大きくなります。
(同通知) 各消防本部にお かれましては、貴管内の市町村又は消防機関に対してこの旨周知されるようお願いします。なお、本件は国土交通省と協議済みであること並びに本通知は消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条の規定に基づく技術的助言として発出することを申し添えます
まず、貸し出している部屋の実際の使われ方を確認してください。
契約上は事務所や倉庫でも、入居者が寝泊まりを常態化させていないか、管理会社を通じて把握します。
多人数が住んでいる実態があるなら、間仕切り壁の構造が準耐火構造になっているかを図面や施工記録で確かめます。
判断に迷う場合は、自己判断で放置せず、所轄の建築部局や消防署に相談するのが確実です。
新たに個室を増やす改修を計画しているなら、着手前に用途の扱いを確認しておくと、後から工事をやり直す事態を避けられます。

入居者がどう使っているかまでは、正直つかみきれていません。

まずは管理会社に現況の確認を依頼するところから始めてください。
迷ったら早めの相談が近道です。

よくある質問

Q用途を事務所のまま変えていなければ問題にならないのですか?
Aいいえ。通知は実態で判断する考え方を示しています。表示上の用途を変えていなくても、多人数の居住実態があれば建築基準法上の扱いが問われます。
Q消防の立入検査だけで建築基準法違反まで指摘されることはありますか?
A消防機関自身が建築基準法違反を認定するわけではありませんが、疑いを把握した場合は建築部局へ情報提供する運用になっています。そこから建築部局の調査につながることがあります。
Q合同の立入検査は必ず行われるのですか?
Aいいえ。通知では必要に応じて合同で実施するとされており、すべての案件で必ず合同検査になるわけではありません。
Q寄宿舎に該当すると自動火災報知設備の基準も変わりますか?
A用途区分が変われば、消防法令上の設置基準も見直しの対象になり得ます。今回の通知自体は建築部局との連携を定めたもので、個別の設備基準は別途、所轄消防署への確認が必要です。

まとめ

オフィスや倉庫の名目で多人数を住まわせている建物が各地で確認された。
国土交通省が情報受付窓口を設け、疑いのある物件を特定行政庁へつないでいる。
建築部局と消防機関は、立入調査で認めた物件を互いに情報提供し合う
依頼があれば合同で立入検査を行い、防火安全上の不備は迅速に是正させる。
実態が寄宿舎に該当すると、間仕切り壁を準耐火構造にする義務が生じる。
正当な理由なく是正されない場合は建築基準法第9条による違反是正命令の対象になり得る。
貸し出す前に実際の使われ方と壁の構造を確認しておくのが確実。

用途表示だけで安心せず、実際の使われ方を確認してみます。

それが早めの安心につながります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 多人数の居住実態がありながら防火関係規定などの建築基準法違反の疑いのある建築物における建築部局との連携について(平成25年6月10日 消防予第230号 消防庁予防課長)
  • 多人数の居住実態がありながら防火関係規定等の建築基準法違反の疑いのある建築物に関する対策について(平成25年6月10日付け国住指第657号 国土交通省住宅局建築指導課長)
  • 建築基準法第9条(違反是正命令)、建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第114条第2項(寄宿舎の宿泊室を区画する壁の準耐火構造)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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