オフィスや倉庫として届け出ていた建物の中に、実は多人数が寝泊まりする個室がぎっしり並んでいた。
そんな建物が全国の特定行政庁で相次いで見つかり、社会問題になったことがあります。
用途は事務所や倉庫のままなのに、実態は住居として使われている建物は、建築基準法にも消防法令にも引っかかる可能性があります。
こうした建物は消防と建築の両方から調べが入る仕組みができています。
うちのビルにもレンタルオフィスとして貸している部屋があるんですが、中でどう使われているかまでは把握していません。
そこがまさに問題になった点です。
オフィスや倉庫のはずが、多人数の住居として使われている建物が各地で見つかりました。
用途が事務所のままなら、消防のほうは関係ないんじゃないですか。
いいえ、実態が住居なら消防法令上の扱いも変わってきます。
建築部局と消防機関が情報を共有する仕組みを解説します。
- オフィスや倉庫の名目で多人数を住まわせている建物が各地で確認された
- 国土交通省が情報受付窓口を設け、疑いのある物件の情報を特定行政庁へ提供する仕組みができた
- 建築部局と消防機関は立入調査の結果を互いに通報し合う
- 依頼があれば合同で立入検査を行い、違反は迅速に是正させる
- 実態が寄宿舎に該当すると、間仕切り壁を準耐火構造にする義務が生じる
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目次
多人数の居住実態がある建物はなぜ社会問題になったのか

そんな物件が複数の特定行政庁で見つかったことを受け、国土交通省と消防庁が連携に乗り出しました。
当時は、狭い個室を大量に作って多人数に貸し出す建物が全国で話題になり、国土交通省が実態調査に乗り出す事態になっています。
この通知は、その調査結果を受けて消防庁予防課長が発出したもので、宛先は都道府県の消防防災主管部長・東京消防庁・指定都市の消防長です。
消防組織法第37条の規定に基づく助言として発出されているため、罰則を伴う義務ではなく、実務の連携を促す位置づけになっています。
これらの物件は、火災が発生した際の人命危険性が高いものが含まれると考えられることから、特に注意が呼びかけられました。
看板が事務所のままなら見た目ではわからなさそうですね。
だからこそ、建築部局と消防機関が現場の情報を持ち寄る必要があったんです。
次はその仕組みを見ていきましょう。
どんな建物のどんな使われ方が対象になるのか

特に人が大勢住み着いている状態かどうかが、判断の分かれ目になります。
狭い個室を並べて多人数が寝泊まりする形態は、建築基準法上の寄宿舎に近い実態と判断される可能性が高いとされています。
寄宿舎に該当するかどうかは個々の建物の使われ方次第で、単に「オフィスと表示している」だけでは判定を左右しません。
賃貸で個室を貸し出す事業者だけでなく、そうした建物を保有するオーナーや管理を任された管理会社も無関係ではいられません。
寄宿舎と認められると、なにが変わるんですか。
各居室を区切る間仕切り壁の構造まで問われるようになります。
詳しくは後の章で説明します。
建築部局と消防機関はどうやって情報を共有するのか

必要があれば、合同で現地に入ることも想定されています。
建築部局が立入調査で疑わしい物件を見つければ消防機関に伝わり、逆に消防の査察で見つかれば建築部局に伝わる仕組みです。
建築部局から依頼があれば、消防機関は必要に応じて合同で立入検査を実施することになっています。
立入検査で消防法令違反などの不備が見つかった場合は、迅速に是正措置を講じるよう求められています。
どちらか片方の部局だけが情報を握ったままにならない、という点がこの仕組みの狙いです。
消防の査察で気づいたことが、建築のほうにも伝わるんですね。
はい、逆に建築部局からの情報が消防に届くこともあります。
片方だけの対応では終わらない仕組みです。
見落としやすいのはどこか

実態が変われば、求められる構造も変わります。
建築基準法施行令は、寄宿舎の各居室を区切る壁について、準耐火構造とし小屋裏まで届かせることを求めています。
薄いパーティションで区切っただけの個室は、この基準を満たしていない可能性があります。
正当な理由なく是正が行われない場合は、建築基準法第9条による違反是正命令の対象になることも通知で示されています。
消防部局が査察の過程で他の部局の所管法令の違反に気づいたときは、速やかにその部局へ連絡することも求められています。
薄い壁で区切っただけの個室がたくさんあるんですが、それだけでも問題になりますか。
寄宿舎と判断されれば準耐火構造の壁が必要になります。
まずは今の壁の仕様を確認しましょう。
明日から何を確認すればよいのか

入居後に指摘されると、是正の手間も費用も大きくなります。
契約上は事務所や倉庫でも、入居者が寝泊まりを常態化させていないか、管理会社を通じて把握します。
多人数が住んでいる実態があるなら、間仕切り壁の構造が準耐火構造になっているかを図面や施工記録で確かめます。
判断に迷う場合は、自己判断で放置せず、所轄の建築部局や消防署に相談するのが確実です。
新たに個室を増やす改修を計画しているなら、着手前に用途の扱いを確認しておくと、後から工事をやり直す事態を避けられます。
入居者がどう使っているかまでは、正直つかみきれていません。
まずは管理会社に現況の確認を依頼するところから始めてください。
迷ったら早めの相談が近道です。
よくある質問
まとめ
用途表示だけで安心せず、実際の使われ方を確認してみます。
それが早めの安心につながります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 多人数の居住実態がありながら防火関係規定などの建築基準法違反の疑いのある建築物における建築部局との連携について(平成25年6月10日 消防予第230号 消防庁予防課長)
- 多人数の居住実態がありながら防火関係規定等の建築基準法違反の疑いのある建築物に関する対策について(平成25年6月10日付け国住指第657号 国土交通省住宅局建築指導課長)
- 建築基準法第9条(違反是正命令)、建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第114条第2項(寄宿舎の宿泊室を区画する壁の準耐火構造)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





