特定建築物定期調査では、消防隊が建物へ進入するための非常用進入口や、消火・救助活動の拠点となる非常用エレベーターの乗降ロビーも調査の対象です。
窓に貼られた赤色灯や三角マークの表示、ロビーの内装・排煙設備には、それぞれ細かな構造基準が定められています。
日頃の維持管理次第で機能が損なわれやすく、物品の放置や表示の剥がれが要是正の原因になることも少なくありません。
本記事では、非常用進入口の設置基準から乗降ロビーの排煙設備・物品放置まで、消防隊の活動を支える5つの調査項目を解説します。
非常用進入口ってうちのビルにもあるはずですが、正直どこにあるのか分かっていません。
窓に赤い印がついているとも聞いたことがなくて心配です。
窓や壁に付いている赤色灯や赤い三角のマークが目印です。
まずは非常用進入口がどんな基準で設けられているか確認していきましょう。
非常用エレベーターの乗降ロビーというのもよく聞きますが、普段は物を置いてしまいがちな場所な気がします。
これも調査の対象になるんですね。
乗降ロビーは火災時に消防隊が活動する大切な拠点です。
排煙設備や物品の放置についても、順番に見ていきましょう。
- 非常用進入口は、高さ31メートル以下の3階以上の階に、間隔40メートル以下で設けることが求められます。
- 進入口や代用進入口は、格子の取付けや物品の放置によって塞がれていないかを確認します。
- 非常用エレベーターの乗降ロビーは、出入口を特定防火設備とし、内装を不燃材料とすることが必要です。
- 乗降ロビー等には排煙設備又は外気に開放できる窓を設け、開閉できる状態を保つ必要があります。
- 乗降ロビーへの物品の放置は、消防隊の活動を妨げるため要是正の対象になります。
▼

目次
非常用進入口はどの階に設けなければならないか

まずはどの階に、どのような間隔で設置されているかを確認します。
建築物の高さ31メートル以下の部分にある3階以上の階には、原則として非常用進入口を設けなければなりません。
進入口は道や幅員4メートル以上の通路に面する外壁に、間隔40メートル以下ごとに設ける必要があります。
非常用エレベーターを設置している場合や、直径1メートル以上の開口部を10メートル以内ごとに設けた場合などは、この設置義務が緩和されます。
調査では、設計図書に記載された進入口の位置と現況の外壁を照らし合わせ、増改築で数が減っていないかを確認します。
40メートルおきに進入口が必要と言われても、実際にどこにあるのか分かりません。
図面で確認する方法はありますか?
設計図書の配置図に非常用進入口の位置が記載されています。
現地の赤色灯や三角マークと照らし合わせて確認しましょう。
非常用進入口の維持保全はなぜ大切か

実際に消防隊が使えるかどうかは、日頃の維持管理にかかっています。
進入口の内側に家具や荷物が置かれていると、開口部があっても消防隊は進入できません。
窓に赤色灯や三角マークの表示が無いと、外から見ても進入口と気づけません。
フィルムの貼付や格子の後付けも、開放や破壊による進入を妨げる要是正の対象です。
レイアウト変更のたびに、窓の前に什器を置いていないかを見直す習慣が有効です。
倉庫として使っている部屋があって、窓の前に棚を置いてしまっているかもしれません。
これも非常用進入口だったらまずいですね。
窓の外に赤色灯や三角マークが付いていないか確認してみてください。
該当する場合は、進入の妨げにならない配置に見直しましょう。
非常用エレベーターの乗降ロビーはどんな構造が必要か

その乗り口となる乗降ロビーにも、独立した防火区画としての構造が求められます。
出入口には特定防火設備を設け、窓や排煙設備・出入口を除いて耐火構造の床及び壁で囲むことが必要です。
天井や壁の室内に面する部分は仕上げも下地も不燃材料とし、床面積はエレベーター1基につき10平方メートル以上を確保します。
間仕切りを設けて物置代わりに使ったり、内装を可燃材料に張り替えたりすると、この基準を満たさなくなります。
調査では設計図書の面積・仕上げと現況を照らし合わせ、改修の履歴がないかを確認します。
乗降ロビーって、普段はただの広いエレベーターホールに見えます。
そんなに厳しい基準があるとは知りませんでした。
見た目は普通のロビーでも、壁や内装、扉の仕様まで細かく決まっています。
改修の際は乗降ロビーだと意識して図面を確認してください。
乗降ロビー等の排煙設備と窓はどう機能するか

排煙設備そのものの設置と、実際に開閉できるかの両方を確認します。
自然排煙式では外気に向かって開くことができる窓を、機械排煙式では給気口・排煙ダクトを設けます。
自然排煙窓は普段閉じたままのことが多く、サッシの錆付きや固着で開かなくなっていないかを実際に作動させて確認します。
機械排煙式では、持ち込まれた家具などで給気口が塞がれていないかも見落としやすい点です。
排煙設備そのものの性能は建築設備定期検査で別途確認されるため、この調査では乗降ロビーとしての建築的な状態を主に見ます。
うちのロビーには天井近くに窓があるんですが、開けたことがありません。
錆びついていないか少し心配になってきました。
普段閉めたままの窓ほど、いざという時に開かないリスクがあります。
調査のときに実際に開閉して確認してもらいましょう。
乗降ロビーへの物品放置はなぜ問題か

平常時にどう使われているかが、そのまま調査結果に直結します。
床面積10平方メートル以上を確保していても、什器や在庫品が置かれていれば消防隊は活動できません。
掃除用具やごみ集積場所として使われてしまうケースも、日常点検で見落としやすい実態です。
非常用進入口と同じく、レイアウト変更のたびに乗降ロビーへ物を置いていないか確認することが大切です。
明日からは、清掃業者や各テナントにもロビーを物置代わりにしないよう周知しておきましょう。
エレベーターホールが広いので、つい清掃道具を置いてしまっていました。
今すぐ片付けます。
広く見えても、そこは消防隊の活動スペースです。
日頃から物を置かない場所として意識しておきましょう。
よくある質問
まとめ
非常用進入口も乗降ロビーも、思っていた以上に細かい基準があるんですね!
物置代わりに使っていた場所がないか、社内で見直します!
消防隊の活動を確実にするための基準です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法施行令第126条の6・第126条の7・第129条の13の3(e-Gov法令検索)
- 建築基準法第12条・建築基準法施行規則第5条(e-Gov法令検索)
- 建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件(平成20年国土交通省告示第282号)
- 非常用エレベーターの昇降路又は乗降ロビーの構造方法を定める件(平成28年国土交通省告示第697号)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。調査の方法や判定の適用は建物や特定行政庁の運用ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門業者にご確認ください。





