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通信機器室に誘導灯は必要か|令第32条の特例が認められる5つの要件を解説

ラックが並ぶ通信機器室の廊下と鍵付きの防火戸のあるサーバールームの内観

サーバー室や電話交換機の部屋など、限られた人しか出入りしない通信機器室を持つ建物は少なくありません。
こうした部屋にも誘導灯を付けなければならないのか、疑問に思う管理担当者は多いはずです。
実は消防庁の行政実例では、一定の条件を満たす通信機器室について誘導灯の設置を省略できるとした事例があります。
ただし省略が認められるのは、5つの要件をすべて満たし、消防長又は消防署長が個別に認めた場合に限られます。

うちのビルにも通信機器室があるんですが、誘導灯って絶対に付けないといけないんでしょうか。

実は5つの要件を満たせば、省略が認められた実例があるんです。

そうなんですね。
てっきり全部の部屋に必要だと思っていました。

この記事で、要件の中身と実務で気をつけたいポイントを一緒に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 通信機器室のような特殊な部屋も、原則として誘導灯の設置対象に含まれます。
  • 消防法施行令第32条により、消防長又は消防署長が個別に基準の適用を除外できます。
  • 電話局等の通信機器室では、5つの要件を満たせば誘導灯の省略が認められた実例があります。
  • 要件には不特定多数の出入りがないことや耐火構造の区画などが含まれます。
  • 自己判断での省略はできません。判断に迷ったら所轄消防に確認しましょう。

通信機器室の誘導灯が令第32条の個別判断で省略される流れを示す図解

通信機器室にも誘導灯は原則必要なのか

ラック機器が並ぶ通信機器室の出入口に誘導灯を示す表示板が付いているイメージ

サーバー室や電話交換機室のような、人がほとんど出入りしない部屋を持つ建物もあります。
こうした特殊な部屋は、誘導灯の対象から自動的に外れるのでしょうか。

消防法施行令第26条第1項 誘導灯及び誘導標識は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める防火対象物又はその部分に設置するものとする。ただし、避難が容易であると認められるもので総務省令で定めるものについては、この限りでない。

誘導灯の設置は防火対象物の用途区分ごとに決まり、部屋の使い方だけを理由に自動的に対象外にはなりません。
通信機器室も、それを含む建物の用途区分が対象に入っていれば、原則として避難口誘導灯・通路誘導灯の設置対象です。
条文の「総務省令で定めるもの」は歩行距離や見通しの良さで判断する一般的な除外基準であり、部屋の性質そのものを理由にした除外ではありません。
通信機器室ならではの除外を考えるには、次に見る別の規定が関わってきます。

サーバー室にはほとんど人が入らないんですが、それでも誘導灯は要るんですか。

原則は必要です。
ただし別の規定で個別に除外を認めてもらえる余地があります。

消防法施行令第32条とはどんな規定なのか

建物のそばで担当者が図面を確認しながら個別に状況を判断しているイメージ

誘導灯に限らず、消防用設備等の基準には一律の数字では測れない事情があります。
そうした事情をくみ取るための規定が、消防法施行令にあります。

消防法施行令(昭和36年政令第37号)第32条 この節の規定は、消防用設備等について、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の規定による消防用設備等の基準によらなくとも、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときにおいては、適用しない。

令第32条は、消防長又は消防署長が個々の事情を見て基準の適用そのものを除外できる規定です。
通信機器室のように、日常的に不特定多数が出入りしない部屋は、この個別判断の対象になりやすい部類です。
とはいえ自動的に適用される規定ではなく、消防機関がその部屋の構造や管理状況を具体的に確認したうえで認めるものです。
実際にどんな条件が示されたのか、次の行政実例で確認していきましょう。

令32条って、誰にでも自動で使える規定なんでしょうか。

いいえ、消防長又は消防署長が個別に状況を見て判断するものです。

通信機器室が省略を認められる5つの要件とは何か

厚い防火区画に囲まれた通信機器室の防火戸と非常灯を確認するイメージ

実際に消防庁へ照会があり、示された考え方があります。
電話局の通信機器室を例にした行政実例を見てみましょう。

問 令第26条に規定する誘導灯は、電話局等の通信機器室においても設置することとされているが、通信機器室の構造・管理等は次のとおりであるので、令第32条の規定を適用し、誘導灯は設置しないこととしたいがよろしいか。(1)通信機器室は特定の小人数で保守・運営され、不特定多数の人の出入りがない。(2)主要構造部は耐火構造とし、かつ、壁及び天井の室内に面する部分の仕上げは不燃材料とする。(3)通信機器室と通信機器室以外の部分とを耐火構造の壁及び床で区画し、かつ、当該壁及び床の開口部等(火炎の伝送を防ぐ構造又は設備をした部分で束配線が壁又は床を貫通するものを除く。)には甲種防火戸を設ける。(4)室内に設置又は収容する通信機器の配線の絶縁材料は、自燃性を有しないものを使用する。(5)室内には通信用蓄電池を電源とする白熱灯を設置し、商用電源が停電したときは自動的に点灯し、室内の歩行に充分な照度を確保する。
答 さしつかえない。(昭和45年11月18日消防予第225号)

省略が認められたのは、5つの条件をまとめて満たしていたからです。
ポイントを整理すると、出入りする人を限定していること、部屋を耐火構造でしっかり区画し防火戸で仕切っていること、配線に燃えにくい材料を使っていること、そして停電時に自動で点く非常照明を備えていることの4系統です。
どれか一つだけを満たしても足りず、5つすべてがそろって初めて省略の判断材料になります。
自分の建物の通信機器室がこの水準にあるかどうか、次の章で見落としやすい点を確認しましょう。

思っていたより、細かい条件がそろわないとあかんのですね。

そうなんです。
5つ全部そろって、はじめて判断材料になります。

実務で見落としやすいのはどこか

通信機器室の防火戸が台車で開けっぱなしにされているイメージ

要件をそろえて省略が認められても、そこで安心してしまうと落とし穴があります。
現場でよくあるのは、日々の運用の中で条件が崩れてしまうケースです。

省略が成り立つのは、5つの要件を今も満たしている間だけです。
搬入作業などで防火戸を開けっぱなしにする時間が長くなれば、「不特定多数の出入りがない」という前提が崩れます。
非常照明の蓄電池が劣化したまま放置されていると、停電時に十分な照度を確保できているとは言い切れません。
そして最も大事なのは、この省略が消防長又は消防署長の個別認定である以上、担当者の自己判断で「うちも同じはず」と広げてよいものではないという点です。

うちの通信機器室、搬入のたびにドアを開けっぱなしにしてる気がします。

それだと前提が崩れかねないので、開閉の運用ルールを見直しておきましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックシートを確認しながら電話で問い合わせをする担当者のイメージ

ここまでの内容を、実際の建物でどう確認すればよいか整理します。
まずは自分の通信機器室が今どんな状態かを点検するところから始めましょう。

まずは5つの要件を一つずつ、点検記録として書き出してみましょう。
出入りする人の範囲、耐火区画と防火戸の状態、配線材料、非常照明の作動確認まで一通りチェックします。
過去に所轄消防から令32条の適用を認められた記録があるかどうかも、あわせて確認しておくと安心です。
記録が見当たらない、あるいは要件を満たしているか判断がつかない場合は、そのまま自己判断せず所轄消防に相談しましょう。

明日、まず何から手を付けたらいいでしょうか。

まずは5つの要件を点検記録にして、所轄消防に相談してみましょう。

よくある質問

Q通信機器室ならどこでも誘導灯を省略できるのか?
Aいいえ。5つの要件をすべて満たしたうえで、消防長又は消防署長の個別の判断が必要です。自己判断で省略することはできません。
Q5つの要件のうち一つでも欠けたらどうなるのか?
A除外の前提が崩れるため、原則どおり誘導灯の設置が必要になります。
Q電話局以外のサーバー室にも同じ考え方は使えるのか?
Aこの行政実例は電話局の例ですが、同様の構造・管理状況を満たす通信機器室であれば、所轄消防への相談により同じ考え方が適用される余地があります。
Q令第32条の適用を受けた記録が残っていない場合はどうすればよいのか?
A現状の設備と管理状況を確認したうえで所轄消防に改めて相談し、要件を満たさないなら誘導灯を設置してください。

まとめ

通信機器室も原則として誘導灯の設置対象に含まれます。
消防法施行令第32条は、消防長又は消防署長が個別に基準の適用を除外できる規定です。
電話局等の通信機器室では、5つの要件を満たして省略が認められた実例があります。
要件には不特定多数の出入りがないことや耐火構造の区画・防火戸などが含まれます。
防火戸を開けっぱなしにすると、省略の前提が崩れます。
省略は消防長又は消防署長の個別認定であり、自己判断での適用はできません。
判断に迷ったら点検記録を持って所轄消防に確認しましょう。

通信機器室の誘導灯、これで自信を持って確認できます!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第26条(誘導灯及び誘導標識に関する基準)
  • 消防法施行令第32条(消防用設備等の基準の特例)
  • 消防庁 行政実例(昭和45年11月18日消防予第225号)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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