非常ベルや放送設備は、火災を建物の中の人に知らせるための設備です。
ただ、全部の階をいっせいに鳴らすことだけが正解ではありません。
どこまで鳴らすのか、どこで操作するのか、表示灯はどこに付けるのか。
質疑応答が示したのは人を安全に動かすために鳴らす範囲を分けるという考え方です。
うちのビルは放送設備が入っています。
それなら非常ベルは付けなくてよいのでしょうか。
原則は要ります。
ただし放送の直前にベル等の音響を付加できるものは要らないという回答が出ています。
火事のときに全部の階が鳴らないのは不安です。
そこには理由があります。
パニックを防ぐためだと書かれています。
5つの質疑を順に見ていきます。
- 放送設備のほかに非常ベル等は原則として必要ですが放送の直前に10秒間以上ベル等の音響を付加できるものは要りません
- 全区域に報知できるほか出火階とその直上階に限って警報を発することもできる装置を設ければ足ります
- 出火階と直上階に限って鳴らせる理由はパニックの発生を防止するためです
- 操作部とは作動させるスイッチや切り倒れ型スイッチ等の操作部分をいいます
- 表示灯は起動装置の上方が規定ですが現に設置されているものは令第32条を適用して差し支えないとされました
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目次
放送設備があれば非常ベルは要らないか

そう考えたくなりますが、質疑の答えは条件付きです。
ただし、音響による放送をする直前に、10秒間以上ベル等の音響を付加して放送できるものにあつては、非常ベル等の設置は必要としないものである(令24Ⅴ、規則25の2Ⅰ)。
なお、放送設備の設置に関する通達を参照されたい。
前段はお見込みのとおりです。放送設備があっても、それだけで非常ベル等が不要になるわけではありません。
救いは後段にあります。音響による放送をする直前に10秒間以上ベル等の音響を付加して放送できるものであれば、非常ベル等の設置は必要としないとされました。
つまり免除の条件は機器の名前ではなく、鳴り方です。声が流れる前に、まずベルの音で人の注意を引けるかどうかが分かれ目になっています。
自分の建物でやることは1つです。放送設備を実際に起動して、声の前にベルやチャイムの音が出るかを聞いてみてください。出ないなら別に非常ベル等が要る建物かもしれません。
声の前に音が鳴るかどうかなんて、気にしたことがありませんでした。
そこが分かれ目です。
点検のときに放送を鳴らして前置きの音を確かめてください。
出火階用と全階用を別々に設けるのか

2系統を別々に用意しなければならないのか、という問いです。
求められているのは2台の設備ではなく、スイッチ等を操作することで鳴らす範囲を切り替えられる装置です。
条件は2つ並んでいます。全区域に有効かつすみやかに報知できること。そのうえで出火階とその直上階に限って警報を発することもできること。
対象として名前が挙がっているのは、放送設備と、地階を除く階数が5以上で延べ面積が3,000平方メートルをこえる建物に設ける非常ベル又は自動式サイレンです。小さな建物の話ではありません。
自分の建物では、受信機や操作部の前に立って、階を選ぶスイッチが付いているかを見てください。付いていれば、この装置に当たります。
2台入れるのではなく切り替えができればよいということですね。
そのとおりです。
操作部に階を選ぶスイッチがあるか見てください。
出火階と直上階に限って鳴らせるのはなぜか

この違和感に、質疑がまっすぐ答えています。
知らせる量を減らすための決まりではありません。全員が同じ階段にいっせいに殺到することを避けるための決まりです。
だから危険の近い階から先に動かします。出火階と、煙や熱が上がってくる直上階が最初になります。
ここで見落としてはいけないのが、前の質疑にあった前提です。全区域に鳴らせることが土台にあったうえでの区分鳴動であって、絞ったまま鳴らしっぱなしにしてよいという話ではありません。
自分の建物では、区分鳴動のあとに全館へ切り替える手順が消防計画に書いてあるかを確かめてください。装置にできても、人が操作を知らなければ止まります。
階段に人が集中しないようにするための順番だったんですね。
そう書かれています。
全館へ切り替える手順を消防計画に入れておいてください。
非常警報設備の操作部とはどこを指すのか

盤そのものなのか、その中のスイッチなのかが分かれ目です。
挙げられているのは作動させることができるスイッチと、各階ごとに区分して報知させる切り倒れ型スイッチ等です。
前の質疑で出てきた区分鳴動を、実際に手で行う場所がここになります。装置の能力と人の操作をつなぐのが操作部だと考えると分かりやすくなります。
盤の外観ではなく操作部分を指しているので、点検でも扉を開けて中を見る必要があります。表から見て異常がなくても判断はできません。
自分の建物では、防災センターや管理室にある盤を開けて、階ごとのスイッチがどう並んでいるかを一度見ておいてください。夜間に初めて開けるのでは遅くなります。
盤の扉を開けたことがありません。
中を見ておいたほうがよいのでしょうか。
ぜひ見てください。
階ごとのスイッチの並びを明るいうちに確かめておくと動けます。
点検業者の立会いのときが良い機会です。
表示灯は起動装置の横に付けてよいか

しかし現場には、横に付いているものがあります。
答えが認めているのは現に設置されているものについてです。これから設ける表示灯まで横でよいと述べてはいません。
根拠として挙げられたのは令第32条です。ここでも、位置そのものではなく離れた場所から点灯が容易に識別できるかという目的で見ています。
問いのほうには、取付け面と15度以上の角度となる方向に沿って10メートル離れた所から識別できる、という前提が書き込まれています。前提が満たされないなら同じ結論にはなりません。
自分の建物では、廊下の端に立って表示灯が見えるかを確かめてください。物陰や掲示物で隠れていれば、位置の議論より先にそこを片づけることになります。
掲示物で表示灯が隠れているところがあった気がします。
そこが先です。
廊下の端から見えるかを歩いて確かめてください。
よくある質問
まとめ
鳴らす範囲にも操作の場所にも理由があったんですね。
盤を開けてみます。
鳴らす範囲と、切り替える手順と、表示灯の見え方。
この3つを押さえておけば現場で迷いません。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 非常警報設備について(昭和44年11月20日 消防予第265号 予防課長から都道府県消防主管部長あて回答)
- 消防法施行令第24条
- 消防法施行令第32条
- 消防法施行規則第25条の2
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は昭和44年当時のもので、通知番号や機関の名称等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





