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既存の防火対象物に新しい消防用設備等の基準はどこまで及ぶか|遡及適用の実例5選

既存の建物に新しい基準はどこまで及ぶか

消防用設備等の基準は、建物を建てたときのものがそのまま続くとは限りません。
用途が変わったとき、増築したとき、基準そのものが改正されたとき。
既存の建物にどこまで新しい基準が及ぶのかは、そのつど判断が必要です。
質疑応答が示したのは建物の実態が変わった部分にだけ新基準が及ぶという考え方です。

うちの結婚式場、披露宴以外にも一般宴会に使っています。区分は変わりますか。

使い方が似ていても、
区分は簡単には変わりません

増築でとなりの建物と一棟になったら、設備の基準はどうなるんですか。

それも含めて5つの事例を順に見ていきます。

この記事の結論
  • 結婚会館は宴会場との併用があっても令別表第1(1)項のままです
  • ホテルは「旅館」に含まれる特定防火対象物として扱われます
  • 既存の熱感知器は期限までに煙感知器等への適合が必要です
  • 増築で複数の建物が一棟になった場合は延べ面積の大きい建物を主体に増築規模を判断します
  • 主たる用途に機能的に従属する改装は用途変更にはあたりません

結婚会館は宴会場としての実態から区分を変えられるか

結婚会館は一般宴会場としての利用があっても消防法施行令別表第1(1)項に該当することを示したイメージ
結婚会館は(1)項として収容人員を算定すると、固定椅子でない客席が多く、設備の指導が難しいという事情があります。
実態は一般宴会場に近いから、別の項にできないかという相談です。
問 結婚会館は(1)項として収容人員を算定したとき客席の部分が固定椅子でない場合は0.5平方メートルで除して得た数が収容人員となるため、実際の利用者数を大きく上まわることになり、消防用設備の設置指導が容易でない。式場は折たたみ椅子で使用し、更衣室、写真場及び披露宴会場は和室又は洋室で、結婚披露宴の他一般宴会場にも利用し、使用頻度、利用者数はほぼ同じである。この場合(13)項ロとして扱えないか
答 消防法施行令別表第1(1)項に該当する。
使い方が似ていても区分は変わりません
一般宴会場としての利用が多く、使用頻度や利用者数が近いという事情があっても、(13)項ロへの変更は認められませんでした。区分は建物の主たる性格で決まり、稼働実態の近さだけでは動きません。
収容人員の算定が実態と合わないと感じても、それ自体は区分変更の理由にはならないということです。
結婚式場・宴会施設を運営しているなら、区分そのものを動かそうとするのではなく、(1)項を前提に設備計画を立ててください。

実際の使われ方が近くても、区分そのものは動かないんですね。

その通りです。
(1)項を前提に設備計画を立ててください

ホテルは「旅館」に含まれる特定防火対象物か

ホテルは消防法施行令第34条の4第2項の規定により特定防火対象物とされることを示したイメージ
法令の条文には「旅館」という言葉が出てきますが、ホテルという呼び方はそこに含まれるのか。
名称の違いが扱いにどう影響するのかという問いです。
問 消防法第17条の2第2項第4号に定める特定防火対象物のうち、特定された「旅館」にホテルが入るか
答 ホテルは、消防法施行令第34条の4第2項の規定により、特定防火対象物とされる。なお、ホテルは形式的には旅館に該当しないが、消防法第17条の2第2項第4号に規定する「旅館」は、旅館、ホテル等の用に供される防火対象物の例示として掲げたものであり、同令第34条の4の規定によりホテルが特定防火対象物に該当する旨が規定されている。
名称の形式より条文の実質で判定されます
「旅館」という言葉自体には、形式的にはホテルは含まれません。しかし消防法施行令第34条の4という別の条文が、ホテルを特定防火対象物として直接指定しています。
つまり、条文中の言葉づかいだけを見て「うちは旅館じゃないから対象外」と判断するのは危険だということです。
宿泊施設の名称にかかわらず、自分の施設が令第34条の4に列挙されている用途に当たらないか、名称ではなく条文本体で確認してください。

「旅館」という言葉だけで判断してはいけないんですね。

そこが要点です。
名称ではなく条文本体で確認してください

既存の熱感知器はいつまでに交換が必要か

特定防火対象物の熱感知器は昭和50年11月30日までに基準に適合させる必要があるが高感度の熱感知器であれば令第32条を適用して当分の間そのままでよいことを示したイメージ
自動火災報知設備の基準改正で、地階・無窓階・11階以上の感知器の扱いが変わりました。
既存の設備をいつまでにどう合わせればよいのかという実務上の問いです。
問 (1)特定防火対象物の地階、無窓階及び11階以上の部分に設置する煙感知器は、増改築等を行う場合に基準に適応させればよいか。(2)既設の自動火災報知設備について、地階、無窓階及び11階以上の部分については、熱感知器を、すべて煙感知器にとりかえなければならないか。あるいは、原則として煙感知器(階段及び傾斜路等)を必要とするところのみとし、その他の部分については今後、増改築等を行う場合にとりかえさせることで良いか
答 (1)昭和50年11月30日までに自動火災報知設備に関する基準に適合させなければならない。(2)特定防火対象物にあつては、煙感知器又は熱感知器のいずれかを設置しなければならない場所であるかどうかを問わず自動火災報知設備に関する基準に適合するよう(1)の期日までに是正させなければならない。なお、既存の防火対象物で煙感知器を設置しなければならない場所に、消防法施行規則第23条第6項第1号に定める高感度の熱感知器を技術上の基準に従つて設置しているものであれば、当分の間消防法施行令第32条の規定を適用し、熱感知器のままでさしつかえない。
増改築を待たずに期日までの是正が必要です
問いにあった「増改築のときにまとめて直せばよい」という考え方は採用されませんでした。昭和50年11月30日という期日までに、特定防火対象物は基準に適合させる必要があります。
ただし救済もあります。高感度の熱感知器を技術上の基準に従つて設置しているなら、令第32条を適用して当分の間そのままでよいとされました。
既存の熱感知器を残したい場合は、それが規則第23条第6項第1号に定める高感度型かどうかを、点検業者に確認してください。

高感度型なら交換しなくてもよい場合があるんですね。

そこは点検業者に確認してください。
高感度型かどうかで扱いが変わります

増築で複数の建物が一棟になった場合はどう数えるか

既存の複数の防火対象物が増築により一棟となつた場合は延べ面積の大なるものを主体として増築の規模を判断することを示したイメージ
隣り合っていた既存の建物同士が、増築によってつながって一棟になることがあります。
その増築規模をどう数えるかで、設備の要否が変わってきます。
問 消防法施行令の施行の際、既存であつたA(3,000平方メートル)及びB(700平方メートル)の防火対象物(15)項が、当該施行令の施行後C(400平方メートル)を増築したことにより、A、B及びCが一棟となつた場合の消防用設備等(屋内消火栓設備)について、次のいずれによるべきか。(ア)Aにとつての増築はB+C(1,100平方メートル)であり、消防法第17条の2第2項の増築に該当するので、屋内消火栓設備の設置が必要となる。(イ)Cの増築は、同法第17条の2第2項の増築には該当せず、屋内消火栓設備の設置は不要である
答 (ア)お見込みのとおり。なお、A又はBの防火対象物のうちいずれか延べ面積の大なるものを主体にして考えられたい。
増築部分だけを切り離して数えません
Cという400平方メートルの増築だけを見れば小さく見えます。しかし答えが選んだのはB+Cを合わせて増築とみなす考え方でした。単独では届かない規模でも、合算すれば基準に達することがあります。
その合算の起点は、延べ面積の大きいほうの建物を主体にするとされています。今回ならAが主体で、B+Cが増築分という扱いです。
隣接する既存の建物をつなげる増築を計画しているなら、増築部分の面積だけでなく、隣の建物の延べ面積を合わせた規模で設備の要否を確認してください。

増築部分だけでなく隣の建物の面積まで合わせて見るんですね。

その通りです。
隣の建物の延べ面積を合わせた規模で確認してください

地階を駐車場に改装するのは用途変更にあたるか

事務所ビルの地階を専用駐車場に改装しても主たる用途に機能的に従属するものであれば消防法第17条の3第1項の用途変更にはあたらないことを示したイメージ
事務所ビルの地階を改装して、専用駐車場にする計画があるとします。
建物の一部だけの改装でも、それは「用途変更」にあたるのかという問いです。
問 事務所ビル(15)項の地階部分を改装して専用駐車場(床面積200平方メートル)を設けた場合、消防法施行令第13条の規定により特殊消火設備の設置が義務づけられるか(消防法第17条の3第1項の「用途変更」には部分の用途変更が含まれるか)、次のいずれに解すべきか。(ア)当該防火対象物の駐車場は主たる用途(事務所)に機能的に従属するものであり、当該防火対象物の用途自体は変更しないから、同条の規定は適用されず、同法第17条第1項の規定により特殊消火設備の設置を要するものである。(イ)同法第17条の3第1項の用途変更には、部分の用途変更を含むものと解すべきであり、特殊消火設備の設置は要しない
答 (ア)お見込みのとおり。
建物全体の用途は変わらない扱いです
駐車場は主たる用途である事務所に機能的に従属するものとされ、建物全体としての用途変更にはあたりません。ただし、それで話が終わるわけではありません。
新しく設けた駐車場という空間自体には、新築時と同じ基準(法第17条第1項)が適用され、特殊消火設備の設置を要するとされています。建物全体の話と、新しくできた部分の話は別ということです。
建物の一部を改装する計画があるなら、「用途変更にはあたらない」で安心せず、改装した部分そのものに新しい基準の設備が要るかどうかを別途確認してください。

建物全体の話と、改装した部分の話は別なんですね。

その通りです。
改装した部分に新基準の設備が要るか別途確認してください
㈱防災屋でもご相談を承っています。

よくある質問

Q結婚会館は一般宴会場と同じ扱いになりませんか?
A回答は、結婚会館は令別表第1(1)項に該当するとしています。利用実態が近くても区分は変わりません。
Q「旅館」と名乗っていない宿泊施設は対象外になりますか?
A回答は、ホテルは消防法施行令第34条の4第2項の規定により特定防火対象物とされるとしています。名称ではなく条文本体で判定されます。
Q熱感知器は無条件で使い続けられますか?
A回答は、高感度の熱感知器を技術上の基準に従つて設置している場合に限り、令第32条を適用して当分の間そのままでよいとしています。
Q地階を駐車場に改装すれば新しい基準が全部かかりますか?
A回答は、建物全体としての用途変更にはあたらないとしつつ、改装した駐車場部分には新築時の基準が適用されるとしています。

まとめ

結婚会館は一般宴会場との併用があっても(1)項のままです
ホテルは令第34条の4により特定防火対象物とされます
既存の熱感知器は期日までの是正が原則で高感度型は当分の間可です
増築の規模は延べ面積の大きい既存建物を主体に合算して数えます
主たる用途に従属する改装は建物全体の用途変更にはあたりません
ただし改装した部分そのものには新基準がかかることがあります
増改築を計画するときはその都度所轄消防署に確認してください

増築や改装のたびに確認することが増えそうですが、
筋道は分かりました。

建物全体の話と、変わった部分の話を分けて考える。
これだけ押さえれば大きくは外しません
㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • 結婚会館は消防法施行令別表第1の何項に該当するか(昭和50年6月16日 消防安第65号 安全救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
  • 特定防火対象物における消防用設備等の遡及適用について(同日 同号)
  • 消防法施行令第34条の4
  • 消防法施行規則第23条第6項第1号
  • 消防法施行令別表第1
  • 消防実務六法 質疑応答編

※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は昭和50年当時のもので、通知番号や機関の名称等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。

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既存の建物に新しい基準はどこまで及ぶか
消防用設備等の基準は、建物を建てたときのものがそのまま続くとは限りません。 用途が変わったとき、増築したとき、基準そのものが改正されたとき。 既存の建物にどこまで新しい基準が及ぶのかは、そのつど判断が必要です。 質疑応答...