放送設備は、火災のときに建物全体へ声を届けるための消防用設備等です。
ところが実際の建物では、地震のお知らせや外国語の案内など、火災以外にも使いたい場面が出てきます。
新しい機器をつないだり別の目的で鳴らしたりして、いざというときの働きが落ちないかが問題になります。
質疑応答が重ねて示したのは火災のときの働きを損なわなければ差し支えないという線引きです。
館内放送で外国語の案内も流したいのですが、機械を足してよいものでしょうか。
消防用設備等に手を入れることになりそうで、迷っています。
その照会には差し支えないと回答されています。
ただし満たすべき要件が並べて示されているので、そこを外さないことが前提です。
要件を満たせば、あとは自由に付けてよいということですか。
消防署へ何か出す必要はありませんか。
そこは別の問で届け出て検査を受けることを要すると回答されています。
放送設備に手を加える話を5つ並べて見ていきます。
- トリガー音等再生機器をマイクロホン端子につなぐ放送は示された要件を満たしていれば差し支えないとされました
- その工事を行った場合は消防法第17条の3の2に基づき届け出て検査を受けることを要すると回答されています
- 停電時に放送設備の非常電源を使って地震動予報等に係る放送を行うこともお見込みのとおりとされました
- 防災センター等との通話装置は起動装置若しくは起動装置の直近に設置すればよいとされています
- 火災が発生していない旨の通報でも示された運用の形であれば非常電話を使ってよいとされました
▼
目次
スマートフォンに情報を送る機器を放送設備につないでよいか

その機器を放送設備のマイクロホン端子へつないでよいか、という照会です。
(1) 放送設備を構成する機器に作動不良や故障といった影響を与えるものではないことが確認されていること。
(2) 再生装置から音声を放送している際に、マイクロホンを使用する放送に切り替える場合、再生装置からの音声を迅速に停止できるよう措置されていること。
(3) マイクロホン端子にトリガー音等再生機器を接続している状態であっても、当該放送設備を有効に10分間作動することができる容量以上の非常電源が確保されていること。
また、トリガー音が、放送設備を構成する機器に作動不良や故障といった影響を与えるものではないことを、当該放送設備の製造元に確認するよう指導されたい。
トリガー音とは、デジタル情報を埋め込んだ音声信号のことで、スマートフォンやタブレット端末に文字情報を伝えられます。
外国人来訪者や障害のある方に情報を届ける手段として使われており、その機器を放送設備につなぐ形が照会されました。
示された要件は、放送設備を構成する機器に作動不良や故障といった影響を与えないこと、マイクロホンに切り替えるときに再生装置の音声を迅速に止められること、つないだ状態でも10分間作動できる容量以上の非常電源が確保されていることです。
自分の建物でやることは1つです。すでにこうした機器をつないでいるなら、非常電源の容量が足りているかを点検の記録で確かめてください。
つないでよいかどうかは、機械の名前ではなく要件で見るのですね。
非常電源の話まで含まれているとは思いませんでした。
そこが要になっています。
機器を足せばそのぶん電気を使うので、まず非常電源の容量から見てください。
その機器を取り付けたら消防への届出と検査は要るか

工事をした関係者の側に何が求められるかを尋ねた照会です。
機器を足す作業は放送設備そのものの工事にあたるので、消防法第17条の3の2の届出と検査の対象になると回答されました。
さらに、届出書を受け取る消防機関の側では、前の問で示された要件を満たしていることを確認できる資料の提出を求めることが望ましいとされています。
要件を満たしているという説明を、書面で出せるようにしておく必要があるということです。
明日できることは1つです。放送設備に何かを増設する予定があるなら、その機器の資料を工事の前に用意しておいてください。
機器を足すだけでも工事の扱いになるのですね。
届出のときに資料まで求められるとは考えていませんでした。
後から集めると手戻りになります。
工事を頼む段階で、要件を示す資料も一緒に出してもらうよう伝えておいてください。
停電中の地震動予報の放送に非常電源を使ってよいか

それを地震のお知らせに回してよいか、という照会です。
放送設備を使って地震動予報等に係る放送を行うことは、規則第25条の2第2項第3号リに置かれています。
その放送を停電時に行う場面で、火災のために備えた非常電源を使ってよいかが問われ、お見込みのとおりと回答されました。
理由までは書かれていませんが、地震のあとに停電が続くのはよくある流れで、そこで放送が止まっては知らせる手段がなくなります。
自分の建物では、地震のお知らせを流す機能が放送設備側に入っているのか、別の機械なのかを先に確かめてください。
つまり、火災のためだけの電源ではないということですね。
停電したときこそ知らせたいので、これは助かります。
そのとおりです。
まずは地震のお知らせがどの機械から出ているかを、操作卓の前で確かめてください。
防災センターと通話する装置はどこに付ければよいか

その取付け位置を確かめた照会です。
通話装置とは、防災センター等と通話することができる装置として放送設備に付置するもののことです。
どこに置くかについて、省令第25条の2第2項第2号の2に規定される起動装置若しくは起動装置の直近でよいかと尋ね、お見込みのとおりと回答されました。
理由までは書かれていませんが、火災を見つけた人が起動装置を操作したその場で話せることに意味がある位置づけだと読めます。
自分の建物に通話装置があるなら、起動装置から離れた場所に付いていないかを歩いて確かめてください。
起動装置とセットで置くもの、という理解でよいのでしょうか。
うちのものは少し離れた壁に付いています。
回答は起動装置若しくは起動装置の直近としています。
離れているようなら、どのくらい離れているかを控えて所轄消防署にご相談ください。
火災でないときの連絡に非常電話を使ってよいか

それでも使えるようにする工夫が認められるかを尋ねた照会です。
(1) 非常電話側に起動用のスイッチを設けることができ、かつ、非火災報時はスイッチを起動停止にして使用する場合
(2) 非常電話の付近に発信機を設け、放送設備の操作部の非常電話からの起動を停止にして運用する場合
ここでいう22号通知は、放送設備の設置に係る技術上の基準の運用について(平成6年2月1日付け消防予第22号)を指します。
そこでは火災が発生していない旨の通報に非常電話を使用しないものとされていましたが、2つの場合が示され、いずれもお見込みのとおりと回答されました。
どちらも、電話を取っただけでは放送が起動しないようにしたうえで、火災のときはスイッチや発信機の側で起動させるという組み立てです。
なお(2)の場合は、放送設備を操作する者に十分操作要領の徹底を図るよう指導されたいとされています。人の側の手当てまでが一組だと読めます。
機械を分けるだけでなく、操作する人への徹底まで求められるのですね。
そこは訓練の中に入れておきます。
そこまでが一組になっています。
非常電話を日常でも使っているなら、起動をどう止めてあるかを先に確かめてください。
よくある質問
まとめ
火災以外の使い方も、頭から駄目というわけではないのですね。
足すときの手順がわかって気が楽になりました。
そのとおりです。
火災のときの働きを損なわないことと届出を出すことが両輪になります。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防用設備等に係る執務資料の送付について(通知)(令和2年3月27日 消防予第72号 予防課長から各都道府県消防防災主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長あて)
- 消防用設備等に係る執務資料の送付について〔抄〕(平成23年12月28日 事務連絡 予防課から各都道府県消防防災主管課・東京消防庁・各指定都市消防本部あて)
- 消防用設備等に係る執務資料の送付について〔抄〕(平成14年9月30日 消防予第281号 予防課長から各都道府県消防主管部長あて)
- 共同住宅の特例等に係る質疑応答について(通知)〔抄〕(平成6年3月28日 消防予第60号「2」 予防課長から各都道府県消防主管部長あて)
- 放送設備の設置に係る技術上の基準の運用について(平成6年2月1日 消防予第22号)
- 消防法施行規則第25条の2
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は各通知が発出された当時のもので、通知番号や機関の名称等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





