防火対象物点検報告制度は、ひとつの建物だけを想定した仕組みではありません。
同じ敷地に複数の防火対象物があるときや、居住者専用の集会所があるときは、対象になるかどうかで判断が割れます。
点検の結果が基準不適合だったときや、防火管理維持台帳を保存していなかったときの扱いも、実務でよく聞かれるところです。
この記事では、消防庁が示した5件の質疑応答から、対象になる範囲とならない範囲の分かれ目を確認します。
うちは同じ敷地に集会所もあるんですが、防火対象物点検は建物ごとに別々に考えればいいんでしょうか。
実は敷地全体の収容人員と、誰が使う施設かで答えが変わるんです。
順番に見ていきましょう。
点検で基準不適合が出たときや、台帳を切らしてしまったときはどうなるのかも気になります。
そこも消防庁の質疑応答に答えが出ています。
5件まとめて確認しますね。
- 同一敷地内に防火対象物が複数あり、収容人員の合計が300人以上になる場合はすべてが点検・報告の対象になります
- 収容人員の算定に入らない部分でも、その管理権原者には点検・報告の義務が及びます
- 集会所が共同住宅の居住者のみが使う施設なら点検・報告の対象になりません
- 点検が基準不適合でも、改善を確認できれば点検済証を表示できます
- 防火管理維持台帳を保存していないことだけで、点検結果が直ちに否になるわけではありません
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目次
同一敷地に複数の防火対象物があるとき点検の対象はどう決まるか

消防庁の質疑応答は、この点に明確な答えを示しています。
政令第2条は、同一敷地内に同一の管理権原者の防火対象物が複数あるとき、それらを一の防火対象物とみなすと定めています。
だから収容人員も個別にではなく合計で数え、合計が300人以上になれば、そこにある建物すべてが法第8条の2の2第1項の対象です。
自分の建物だけが300人未満だから対象外、とはいえません。
同じ敷地に複数の建物や施設がある場合は、まず敷地全体の収容人員を合計してみることが最初の一歩です。
うちは同じ敷地に別の建物もあるので、それぞれ300人未満だから対象外だと思っていました。
そこが誤解されやすいところです。
合計で300人を超えれば敷地内すべてが対象になります。
収容人員に数えない部分の管理権原者にも点検の義務はあるか

共用の階段部分だけを管理する人がいる場合で確認します。
法第8条の2の2は、防火対象物の管理について権原を有する者に点検・報告の義務を課しています。
収容人員の算定に入らない階段部分であっても、そこを管理する権原者が別にいるなら、その人にも点検・報告の義務が及びます。
「収容人員に数えていない場所だから関係ない」という理屈は成り立ちません。
共用部分の管理を分担している建物では、誰がどの部分の管理権原者かを点検の前に洗い出しておく必要があります。
収容人員に数えていない場所だから関係ないと思っていました。
そこは別問題です。
共用部分を管理している人が誰かを、一度確認してみてください。
共同住宅の集会所は点検の対象になるか

共同住宅の集会所を例に確認します。
同じ敷地にある建物は合算で判断するのが原則ですが、それには例外があります。
集会所が共同住宅の居住者のみが使う施設であれば、法第8条の2の2第1項の適用を受けません。
利用者が住民に限られているかどうかが、判断の分かれ目です。
外部の人も利用できる集会所や貸室になっていないか、利用規約や運用の実態を確認しておくとよいでしょう。
うちの集会所も居住者しか使っていませんが、貸室として外部に貸すこともあります。
それなら居住者専用とは言えなくなる可能性があります。
運用の実態を管理組合と一度確認してください。
点検が基準不適合でも改善後に点検済証を表示できるか

改善後の扱いを確認します。
点検済証は、点検資格者が点検対象事項が基準に適合していると認めた防火対象物に付けるものです。
基準不適合のまま消防長に報告した時点では、表示を付けることはできません。
ただし、不適合事項を改善し、点検資格者が再度点検を行って基準への適合を確認できれば、その時点で表示を付けても差し支えありません。
再点検の結果も、最初の点検と同じように消防長への報告と防火管理維持台帳への記録・保存が必要です。
不適合が出たら、もう点検済証は諦めるしかないと思っていました。
改善して再度点検を受ければ大丈夫です。
そのつど消防長への報告も忘れずに行ってください。
防火管理維持台帳を保存していないと点検結果はどうなるか

最後にこの点を確認します。
点検資格者は本来、防火管理維持台帳で過去の点検内容や届出の記録を確認します。
ただ、台帳が保存されていないという事実だけをもって、点検結果を否と判定することはできません。
消防機関に届け出た書類など、他の方法で確認できる事項があれば、それをもとに点検結果を判断します。
そのうえで、消防機関からは防火管理維持台帳を適切に管理するよう指導を受けることになります。
台帳を切らしたら一発で否になると思っていたので、少し安心しました。
安心はしても台帳の再整備は必要です。
次の点検までに整えておきましょう。
よくある質問
まとめ
合計の収容人員で見るのか、居住者専用かどうかで見るのか。
整理して考えられそうです。
はい。まず敷地全体の収容人員と利用者の範囲を確認してみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 防火管理及び防火対象物定期点検報告制度に係る質疑応答について(平成16年11月1日 消防安第207号 消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長あて)別添2「防火対象物定期点検制度に関する執務資料」
- 消防法第8条の2の2
- 消防法施行令第2条
- 消防法施行令第4条の2の2
- 消防法施行規則第4条の2の4
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は平成16年当時のもので、条文番号や機関の名称等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





