消防用設備等の整備や点検は、なんでも消防設備士に頼まなければならないわけではありません。
消防法施行規則が定める軽微な整備なら自分たちで対応できますが、線引きを誤ると法令違反になりかねません。
消火器の薬剤の詰替え、非特定防火対象物の点検、独占業務の範囲は、現場でよく迷うポイントです。
昭和50年の通達に基づく5つの実例から、消防設備士でなければできない作業の境界線を整理します
消火器の表示灯のねじがゆるんでいたので、うちのスタッフが締め直しました。
これって本当は消防設備士に頼まなきゃいけなかったんでしょうか。
表示灯のねじの締めつけくらいなら、消防設備士でなくても対応できます。
今日は消防設備士でなければできない作業の境界線を確認していきましょう。
うちは非特定防火対象物だから、点検はゆるいと聞いたことがあります。
指定を受けていれば、非特定防火対象物でも有資格者の点検が必要になります。
順番に見ていきましょう。
- 消防法施行規則第33条の2に定める軽微な整備は、屋内消火栓設備・屋外消火栓設備に限られず機能に影響を与えない範囲なら他の設備でも対応できます
- 消火器の薬剤の詰替えは、資格を持たない者が単独で行うことは認められません
- 非特定防火対象物でも、消防長等が指定すれば有資格者による点検が必要です
- 消防設備士の独占業務は、義務設置外の一般住宅等の消火器詰替えには及びません
- 点検に使う資格は甲種設備士・乙種設備士のどちらでもよいとされています
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目次
消防設備士でなくても行える整備はどこまでか

屋内消火栓設備や屋外消火栓設備に限られるのか、範囲が問われました。
消防法施行規則第33条の2に規定する軽微な整備は、屋内消火栓設備や屋外消火栓設備だけを想定した規定ではありません。
回答は、消防用設備等の機能に影響を与えない程度の整備であれば、他の設備であっても消防設備士でなくてよいとしました。
具体的には表示板や表示灯の交換、ねじの締めつけ等が例として挙げられています。
逆にいえば機能に影響する調整や部品交換は対象外なので、迷ったら消防設備士に確認したほうが安全です。
自分たちで対応してよい作業かどうかは、点検のたびに委託先の消防設備士と線引きをすり合わせておくと安心です。
表示灯の交換くらいなら、うちのスタッフでもやってしまっていいんですね。
機能に影響しない範囲ならさしつかえありません。
迷ったときは委託先の消防設備士に確認してみてください。
消火器の薬剤の詰替えは誰ができるか

資格を持たない消防署員が指導したり詰替えを手伝ったりすることまで認められるかが問われました。
消火器の薬剤の詰替えは、消防設備士でなければできない作業と位置付けられています。
回答は、資格を持たない消防署員が単独で指導したり詰替えをしたりすることは認められないとしました。
一方で、消防設備士の実質的な監督の下、単なる補助として行う範囲であればさしつかえないとされています。
「監督の下」といえるかは、その場に同席して指示を出しているかどうかで判断されるため、書類上だけの名義貸しでは足りません。
消火器の薬剤詰替えを依頼するときは、実際に誰が作業し誰が監督しているのかを契約の段階で確認しておくと安心です。
消防署の人に相談したら、その場で薬剤を詰め替えてくれると思っていました。
消防署員に資格がなければ、単独での詰替えはできません。
消防設備士への依頼が必要です。
非特定防火対象物でも有資格者の点検は必要か

非特定防火対象物の消火器についても、同じ扱いになるのかが問われました。
非特定防火対象物は、特定防火対象物ほど厳しい点検義務が課されないという印象を持たれがちです。
回答は、消防法施行令第36条第2項第2号の規定により消防長等が指定した非特定防火対象物であれば、話が変わるとしました。
指定を受けた建物では、消防設備士免状を持つ者か消防設備点検資格者に点検させなければなりません。
自分の建物が指定を受けているかどうかは、所轄消防署に確認しないと外からはわかりません。
非特定防火対象物だからと油断せず、指定の有無を一度確認しておくと点検体制の見直しがしやすくなります。
うちは事務所ビルなので、非特定防火対象物だから点検は緩いと思っていました。
消防長等の指定を受けていれば、非特定防火対象物でも有資格者の点検が必要です。
所轄消防署に確認してみてください。
消防設備士の独占業務はどこまで広がるか

義務設置ではない一般住宅等に設ける消火器の薬剤詰替えにも及ぶのかが問われました。
消防法第17条の5の改正で消防設備士の業務独占の範囲は広がりましたが、際限なく及ぶわけではありません。
回答は、義務設置でない一般住宅等の消防用設備等には、この規定は適用されないとしました。
ただし機器の機能低下や故障のおそれがあることから、消防設備士が行うことが望ましいという扱いにとどめています。
「望ましい」は義務ではないため、一般住宅の消火器を家庭で詰め替えても直ちに違法にはなりませんが、安全のためには専門業者への依頼が無難です。
自分の管理する建物のどの設備が義務設置にあたるかを一覧にしておくと、独占業務の範囲を判断しやすくなります。
社宅として貸している住宅の消火器も、義務設置じゃないから自由に詰め替えていいんですね。
法律上の義務はありませんが、故障のおそれもあるので消防設備士への依頼をおすすめします。
点検に使う資格は甲種でも乙種でもよいか

点検に使える資格が甲種設備士と乙種設備士のどちらでもよいのかが問われました。
消防法第17条の3の3に基づく点検を担う資格として、甲種設備士と乙種設備士のどちらが必要かは現場でよく迷う点です。
回答は、甲種設備士、乙種設備士のどちらでもよいとしました。
ただしどちらの資格でも、点検できる消防用設備等の種類は昭和50年消防庁告示第2号で定める範囲に限られます。
資格の種類そのものより、免状に記載された点検可能な設備の種類を確認することのほうが実務では重要です。
点検を依頼するときは、免状の種類(甲種・乙種と類別)が対象設備をカバーしているかを契約前に確認しておくと安心です。
甲種の資格を持っている人にお願いすれば、間違いないですね。
甲種でも乙種でも構いませんが、免状に記載された設備の種類が対象に合っているかを確認してください。
よくある質問
まとめ
自分たちでやってよい範囲と、専門家に頼むべき範囲がはっきりしました。
点検の委託先ともう一度確認してみます。
軽微な整備の範囲、薬剤の詰替え、非特定防火対象物の指定、独占業務の広がり、点検資格の種類。
この5点を押さえれば判断に迷いません。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防設備士の資格に関する疑義について、消防設備士でなくても行える整備の範囲について、非特定防火対象物であつても有資格者の検査が必要か、消防設備士の独占業務の範囲は、消火器の薬剤の詰替えについて(いずれも昭和50年6月16日 消防安第65号 安全教急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
- 消防法第17条の3の3、第17条の5
- 消防法施行規則第33条の2
- 消防法施行令第36条第2項第2号
- 昭和50年消防庁告示第2号
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は昭和50年当時のもので、条文番号や機関の名称等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





