防災管理者や自衛消防組織が必要かどうかは、目の前の建物1棟だけを見て決まるとは限りません。
同じ敷地に複数の建物が建っている場合、消防法施行令はそれらを合算して規模を判定する仕組みを定めています。
さらに複合ビルでは、誰が自衛消防組織を設置するのかという責任の所在も条文で決まっています。
自分の建物だけを見て「うちは基準未満だから関係ない」と判断すると見落としが生まれます。
うちのビルは単独では基準未満のはずなんですが、隣の別館もうちの会社が持っています。それでも防災管理者は不要ですよね。
そこが盲点です。
同じ敷地・同じ管理権原の建物は合算して判定します。
合算されると、うちの建物は対象になるということですか。
可能性があります。
条文の仕組みを順に見ていきましょう。
- 防災管理者が必要な建物は消防法施行令第46条が定める建物で、これは自衛消防組織の設置基準と同じ第4条の2の4の建物です
- 同一敷地内・同一の管理権原者の建物は消防法施行令第2条により合算して1つの防火対象物とみなされます
- 複合ビルでは対象用途に供される部分の管理権原者が自衛消防組織を設置します(施行令第4条の2の5第1項)
- 管理権原者が複数いるときは共同して自衛消防組織を設置しなければなりません(同条第2項)
- 自衛消防組織を置いたときは遅滞なく所轄消防長又は消防署長に届け出る義務があります
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目次
防災管理が必要な建物は1棟ごとに決まるのか

条文をたどると、判定の出発点は建物単体を指す言葉ではないことが分かります。
この第4条の2の4は、自衛消防組織の設置基準を定めた条文と同じものです。防災管理と自衛消防組織は、規模の判定基準を共有しています。
第4条の2の4は延べ面積や階数の数値基準を建物に当てはめる条文ですが、その対象になる母集団は単純な1棟という意味ではありません。
母集団になっているのは「法第8条第1項の防火対象物」という別の条文の言葉です。次の章でこの言葉の数え方を確認します。
まずは自分の建物が周囲の建物とどんな関係にあるか(同じ敷地か、同じ会社が持っているか)を頭に置いておいてください。
うちの建物は単独なら基準未満のはずなんですが。
母集団の数え方を先に確認しましょう。
次の章で見ていきます。
同じ敷地に複数の建物があるとなぜ合算されるのか

この防火対象物をどう数えるかを定めているのが、施行令の別の条文です。
同じ敷地に本館と別館のように複数の棟が建っていて、管理権原者が同じであれば、施行令第2条によりそれらは合算した1つの建物として扱われます。
この合算は法第8条第1項の適用について定められたものですが、第4条の2の4が母集団にしているのも同じ「法第8条第1項の防火対象物」です。したがって合算後の規模で第4条の2の4に当てはまるかどうかを判定することになります。
本館だけなら延べ面積が基準に届かなくても、別館と合算すると基準を超えるケースがあります。単独の建物の数字だけを見て対象外と判断するのは早計です。
まず自分の敷地に複数の棟があるか、それらの管理権原者が同じかどうかを、登記簿や敷地図で確認してください。
隣の別館とうちの本館、同じ会社が持っています。
それなら合算して判定する対象です。
次は複合ビルのケースを見ましょう。
複合ビルでは自衛消防組織を誰が設置するのか

誰が自衛消防組織を設置する義務を負うのかも、条文で決まっています。
物販店や飲食店・ホテル・オフィスなどが混在する複合用途ビル(別表第一(16)項)の場合、ビル全体の代表者ではなく、自衛消防組織設置防火対象物の用途に供される部分を管理する権原者が設置の主体になります。
複合ビルの中でも、対象になる用途(物販店・オフィス等)の階を管理している区分所有者やテナントのオーナーが、自衛消防組織を置く責任を負う立場です。
ビルの管理会社だけが対応すればよいと思われがちですが、条文上の義務者は用途部分の管理権原者であり、管理会社と管理権原者が別の建物ではここで食い違いが生まれます。
自分のテナント区画がどの用途に分類され、その部分の管理権原者が誰になっているかを、まず契約書や登記で確認してください。
うちはテナントとして入っているだけですが、それでも義務を負うことがあるんですか。
用途部分の管理権原者であれば対象です。
次は権原者が複数いる場合を見ましょう。
管理権原者が複数いる建物はどうなるか

権原者が複数いる場合の扱いも、同じ条文の中に定められています。
区分所有のビルやフロアごとにオーナーが異なる建物では、それぞれの管理権原者が別々に自衛消防組織を作るのではなく、関係する権原者全員が共同で1つの組織を編成します。
実務上の落とし穴になりやすいのが、各テナントが自分の区画の延べ面積や収容人員だけを見て「うちは基準未満だから関係ない」と判断してしまうことです。合算後の建物全体で基準に該当すれば、共同設置の義務は関係する権原者全員に及びます。
統括防災管理者を選任している建物であれば、自衛消防組織の編成もその建物全体の消防計画に合わせて整理しておくと矛盾が生まれません。
自分のテナント区画だけでなく、同じ建物・同じ敷地の他の区画の管理権原者が誰かを一覧にして、共同設置の相手を洗い出してください。
自分の区画だけで判断してはいけないんですね。
建物全体・敷地全体で考える必要があります。
最後に届出までの手順を確認しましょう。
同じ敷地の建物はどこから手を付ければよいか

設置したあとに必要な手続きも条文に定められています。
まず①敷地図と建物登記で、同じ敷地に複数の棟がないか、管理権原者が同じかどうかを確認します。②該当する棟があれば延べ面積・階数を合算し、第4条の2の4の基準に当てはまるかを計算します。③基準に該当し、かつ管理権原者が複数いる場合は、関係者間で協議して共同で自衛消防組織を編成し、統括管理者を選任します。
組織を編成したら、要員の現況などを記載した書類を作成し、④遅滞なく所轄消防署に届け出ます。組織の内容を変更したときも同様に届出が必要です。
一度届け出て終わりではありません。テナントの入退去や増床で建物の状況が変わるたびに、合算後の規模と届出内容が現状に合っているかを見直してください。
まずは自分の敷地の登記簿と配置図を確認するところから始めてください。
まずは敷地の登記簿を確認してみます。
合算の有無から順番に確認すれば迷いません。
よくある質問
まとめ
合算と共同設置の仕組みがわかりました。
まずは敷地の登記簿を確認します。
敷地図と管理権原の整理から始めれば大丈夫です。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第8条の2の5
- 消防法第36条第1項
- 消防法施行令第2条
- 消防法施行令第4条の2の4
- 消防法施行令第4条の2の5
- 消防法施行令第4条の2の8
- 消防法施行令第46条
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





