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蓄光式誘導標識は停電しても光り続けるのか|性能を保つために必要な照度と設置場所の細目を解説

蓄光式誘導標識はどれだけ光れば足りるのかを解説した記事のアイキャッチ

非常口をさす緑の表示は 停電すると見えなくなるものもあります。
そこで床の近くに置き 暗くなってから光りだすのが蓄光式誘導標識です。
この標識はふだんの照明から光をためておかないと働きません。
消防庁は必要な照度の目安と設置する場所の細目を通知で示しています

うちのビルの廊下の低いところに 緑の小さな板が貼ってあります。
あれがなんのためのものかわかっていません。

それは蓄光式誘導標識かもしれません。
停電して暗くなったあとに光って避難の方向を示します。

電池も配線も無さそうに見えました。
あれで本当に光るものなのでしょうか。

ふだんの照明の光をためて光ります。
だから照度が足りない場所では働きません。

この記事の結論
  • 平成22年の通知は前年に新たに置かれた蓄光式誘導標識の技術基準について運用の指針を示したものです
  • 光をためる光源はふだんの照明で 無人の建物まで点灯を求める趣旨ではありません
  • 停電から20分たった表示面の平均輝度がおおむね100ミリカンデラ毎平方メートル以上となる照度が目安です
  • 一般的な蛍光灯の下で高輝度のものなら200ルクス以上でその輝度とみなしてさしつかえないとされています
  • 蓄光式誘導標識があることをもって通路誘導灯を免除することはできません

蓄光式誘導標識がふだんの照明で光をためて暗所で光り照度が足りないときは誘導灯にするまでを並べた図

蓄光式誘導標識の運用通知はなぜ出されたのか

壁の高い位置の誘導灯と床際の蓄光式誘導標識を担当者が見比べている図
この通知は平成22年4月に消防庁予防課長から各都道府県の消防主管部長あてに出されました。
きっかけは事故ではなく 前年の規則と告示の改正です。
蓄光式誘導標識等に係る運用について(通知)(平成22年4月9日 消防予第177号)
「消防法施行規則等の一部を改正する省令」(平成21年総務省令第93号。以下「改正規則」という。)及び「誘導灯及び誘導標識の基準の一部を改正する告示」(平成21年消防庁告示第21号。以下「改正告示」という。)により、蓄光式誘導標識等に係る技術基準が新たに定められたところです。
今般、改正規則による改正後の「消防法施行規則」(昭和36年自治省令第6号。以下「規則」という。)及び改正告示による改正後の「誘導灯及び誘導標識の基準」(平成11年消防庁告示第2号。以下「告示」という。)に規定する蓄光式誘導標識等に関する技術基準について、その細目等に関する運用の指針を下記のとおりとりまとめました。(略)
なお、本通知は、消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条の規定に基づく助言として発出するものであることを申し添えます。
この通知は基準の使い方を示すものです
平成21年に規則と告示が改正され 蓄光式誘導標識の技術基準が新たに置かれました。
ただ基準そのものには どれくらいの明るさなら性能を保てるのかという目安まで書かれていません。
そこで翌年に細目等に関する運用の指針として この通知が出されました。
末尾にある消防組織法第37条の助言という言葉のとおり 条文そのものではなく運用の指針として示されたものです。
基準の条文と通知を並べて読むと 現場で何を測ればよいかが見えてきます。

事故があって出た通知ではないのですね。
基準が先にあって あとから使い方が示された形でしょうか。

そのとおりです。
平成21年の改正で置かれた基準の細目を埋める通知です。

どの建物のどの場所に蓄光式誘導標識を設けるのか

路面店と個室が並ぶ建物と階段を並べて蓄光式誘導標識の設置場所を示した図
通知は設置対象ごとの個別事項を三つに分けて書いています。
建物の規模も用途もそれぞれ違います。
蓄光式誘導標識等に係る運用について(通知)(平成22年4月9日 消防予第177号)記2
2 設置対象ごとの個別事項
(1) 小規模な路面店等(避難が容易な居室における誘導灯等の免除関係)
ア 規則第28条の2第1項第3号、第2項第2号及び第3項第3号に規定する誘導灯等の設置免除の適用単位は「居室」であり、地階及び無窓階に存する居室(略)も、当該規定の要件に適合すれば免除対象となるものであること。(略)
(2) 個室型遊興店舗(通路上の煙の滞留を想定した床面等への誘導表示関係)
ア 個室型遊興店舗(令別表第1(2)項ニ)においては、避難経路の見とおしが悪く、照明も暗い等の状況が想定されることから、規則第28条の3第4項第3号の2ただし書の規定により蓄光式誘導標識等を設けるに当たっては、蓄光式誘導標識等の種別や設置位置に留意することが特に重要であること。(略)
(3) 大規模・高層の防火対象物等(停電時の長時間避難に対応した誘導表示関係)
ア 停電時の長時間避難に対応した誘導表示の対象として、告示第4第3号により地下駅舎等が新たに追加されたところであるが、同号に規定する「消防長(略)又は消防署長が避難上必要があると認めて指定したもの」については、当面、危険性が高いもののみとし、「複数の路線が乗り入れている駅」又は「3層以上の構造を有する駅」を重点として指定することが望ましいこと。
対象は三つに分かれます
一つ目は小規模な路面店などで これは誘導灯を免除する側の話です。
規則第28条の2は避難が容易な居室について誘導灯を設けないでよいと定めており その要件の一つが蓄光式誘導標識を設けることです。
二つ目は個室型遊興店舗で 令別表第1(2)項ニに当たります。
通路の床面又はその直近に誘導表示を置く場面で 通知は種別と設置位置に特に留意せよと述べています。
三つ目は大規模で高層の建物や地下駅舎などで 停電してから長い時間をかけて避難する場面を想定しています。

うちは路面の小さな店舗を借りています。
誘導灯を付けない代わりに標識を置く形になりそうです。

その場合は居室ごとに要件を見ます。
免除の単位は建物でも階でもなく居室です。

性能を保つために必要な照度はどれくらいなのか

天井の照明と壁際の蓄光式誘導標識のあいだで担当者が照度計を持っている図
ここが通知のいちばん実務的な部分です。
数字の目安がはっきり書かれています。
蓄光式誘導標識等に係る運用について(通知)(平成22年4月9日 消防予第177号)記1
1 共通事項
(1) 蓄光式誘導標識の性能を保持するために必要な照度等
ア 告示第3第1号(3)及び第3の2第4号に規定する「性能を保持するために必要な照度」としては、暗所での視認性に係る実験結果等から、一般的には、停電等により通常の照明が消灯してから20分間経過した後の蓄光式誘導標識の表示面において、おおむね100ミリカンデラ毎平方メートル以上(略)の平均輝度となる照度を目安とすることが適当であること。
イ 上記アの照度は、蓄光式誘導標識の性能や、照明に用いられている光源の特性(特に、蓄光材料の励起に必要となる紫外線等の強度)に応じて異なるものであることから、別紙1の例により試験データを確認する等して、これらの組合せが適切なものとなるようにする必要があること。(略)
(ア) 一般的な蛍光灯による照明下において、高輝度蓄光式誘導標識が設けられており、当該箇所における照度が200ルクス以上である場合には、停電等により通常の照明が消灯してから20分間経過した後における蓄光式誘導標識の表示面が100ミリカンデラ毎平方メートル以上の平均輝度となるものとみなしてさしつかえないこと。
目安は停電から20分後の明るさです
表示面の平均輝度がおおむね100ミリカンデラ毎平方メートル以上になる照度を確保します。
標識を設ける避難口から居室内の最遠の箇所までの歩行距離がおおむね15メートル以上になるときは 20分後に300ミリカンデラ毎平方メートル以上が目安とされています。
規則第28条の3第4項第10号で通路誘導灯を補完するものとして設けるときは 60分後に75ミリカンデラ毎平方メートル以上です。
ただし現場で輝度そのものを測るのは大変なので 通知は照度で置き換える道を示しました。
一般的な蛍光灯の下で高輝度のものなら 200ルクス以上でその輝度になるとみなしてさしつかえないという書き方です。

照度なら照度計で測れます。
200ルクスという数字ならわかりやすいです。

ただし蛍光灯で高輝度のものという前提が付きます。
条件が違えば試験データで確かめてください。

実務で見落としやすいのはどこか

床際の蓄光式誘導標識と天井の空いた取付金具に禁止の印が付きバケツとモップが置かれている図
通知には落とし穴が三つ書かれています。
どれも設置したあとに効いてくる話です。
蓄光式誘導標識等に係る運用について(通知)(平成22年4月9日 消防予第177号)記1(1)イ(イ)・記2(2)ウ・エ
(イ) 最近開発・普及が進んでいる新たな光源は、従来の蛍光灯と特性が大きく異なる場合がある(例えば、現在流通しているLED照明器具は、可視光領域での照度が同レベルであっても紫外線強度は蛍光灯より小さいものが一般的である等)ことから、特に留意する必要があること。
ウ 誘導標識の材料は、「堅ろうで耐久性のあるもの」(告示第5第3号(1))とされているが、蓄光材料には水等の影響により著しく性能が低下するものもあることから、床面、巾木等に設ける蓄光式誘導標識で、通行、清掃、雨風等による摩耗、浸水等の影響が懸念されるものにあっては、耐摩耗性や耐水性を有するものを設置することが適当であること。
エ なお、規則第28条の3第4項第3号の2及び第10号の規定においては、通路誘導灯を補完するものとして蓄光式誘導標識を設けることが定められているものであり、蓄光式誘導標識が設けられていることをもって、当該箇所における通路誘導灯を免除することはできないこと。
いちばん危ないのは照明の取り替えです
LED照明は可視光領域の照度が同じでも紫外線の強さが蛍光灯より小さいものが一般的だと通知は述べています。
照度計の数字が変わらないまま 標識の光り方だけが落ちることが起こりえます。
二つ目は床面や巾木に設けた標識で 通行や清掃 雨風による摩耗と浸水に耐えるものを選びます。
三つ目が通路誘導灯で 蓄光式誘導標識があることをもって免除することはできません。
標識はあくまで通路誘導灯を補完するものだと通知が念を押しています。

照明をLEDに替えたばかりです。
標識のことまで考えていませんでした。

替えたあとに試験データを見直してください。
光源と標識の組合せが変わっていないかを確かめる場面です。

明日からなにを確認すればよいのか

担当者が点検票を手に壁際の蓄光式誘導標識と書類を収めたキャビネットを確かめている図
最後にやることの順番をそろえます。
確かめる材料は設置のときの試験データです。
蓄光式誘導標識等に係る運用について(通知)(平成22年4月9日 消防予第177号)別紙1
※3 当該試験データを設置届に添付する等して、試験結果報告書に記載の「設置場所の照度」と突合して、蓄光式誘導標識の性能を保持するために必要な照度が確保されていることを確認
※5 経年等に伴い、「照度」、「輝度」等が所期の条件に適しないことが、点検等の際に明らかとなった場合には、個別の状況に応じ、照明器具の交換・変更、蓄光式誘導標識の交換・変更等を適宜実施
今日できるのは三つです
はじめに建物のどこに蓄光式誘導標識があるかを 階ごとに書き出します。
つぎに設置届に添えた試験データを開き 試験結果報告書の設置場所の照度と突き合わせます。
最後に照明器具を替えた場所がないかを確かめ 替えていれば照度をもう一度測ります。
経年で照度や輝度が所期の条件に適しないとわかったときは 照明器具か標識のどちらかを交換します。
照度をどうしても確保できない場所は 標識ではなく誘導灯で誘導表示を行うことが必要だと通知は述べています。

設置届の書類を探すところから始めます。
試験データが付いているか自信がありません。

見つからなければ設置した業者に問い合わせてください。
照度を測り直すだけでも今の状態はつかめます。

よくある質問

Q誰もいない時間帯でも照明を点けておく必要がありますか?
A通知は無人の防火対象物又はその部分についてまで照明器具の点灯を求める趣旨のものではないと述べています。人がいない時間帯まで照明を点け続ける必要はありません。
Q階段には蓄光式誘導標識をどこに設ければよいのですか?
A通知は階段や傾斜路 段差のある場所では転倒や転落を防ぐため その始点及び終点となる箇所に設けることが適当だとしています。避難の方向を示すシンボルの向きを避難時の上りと下りの方向に合わせることも考えられるとされています。
Q床面又はその直近とはどのくらいの高さを指しますか?
A通知は告示第3の2第2号に規定する「床面又はその直近の箇所」を 床面又は床面からの高さがおおむね1メートル以下の避難上有効な箇所をいうものとしています。
Q必要な照度がどうしても確保できないときはどうすればよいのですか?
A通知は蓄光式誘導標識の性能を保持するために必要な照度を確保することができない場合には 誘導灯又は光を発する帯状の標示等により誘導表示を行うことが必要だとしています。標識だけでは済ませられない場所があることになります。

まとめ

平成22年の通知は前年の規則と告示の改正で新たに置かれた技術基準の細目等に関する運用の指針です
設置対象は小規模な路面店等と個室型遊興店舗と大規模・高層の防火対象物等の三つに分かれます
停電から20分たった表示面の平均輝度がおおむね100ミリカンデラ毎平方メートル以上となる照度が目安です
一般的な蛍光灯の下で高輝度のものなら200ルクス以上でその輝度とみなしてさしつかえないとされています
LED照明は照度が同じでも紫外線の強さが蛍光灯より小さいものが一般的なので特に留意します
床面や巾木に設けるものは耐摩耗性や耐水性を有するものが適当とされています
蓄光式誘導標識があることをもって通路誘導灯を免除することはできません

まずは自分のビルの標識を数えて試験データを探してみます。
照明を替えた場所も一緒に洗い出します!

その二つがそろえば今の状態が見えてきます。
迷われたら㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 蓄光式誘導標識等に係る運用について(通知)(平成22年4月9日 消防予第177号)
  • 消防法施行令第26条(誘導灯及び誘導標識に関する基準)
  • 消防法施行規則第28条の2(誘導灯及び誘導標識を設置することを要しない防火対象物又はその部分)
  • 消防法施行規則第28条の3(誘導灯及び誘導標識に関する基準の細目)
  • 誘導灯及び誘導標識の基準(平成11年消防庁告示第2号)
  • 消防組織法第37条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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