夜のビルで停電が起きたとき、廊下を照らしてくれるのはどの明かりでしょうか。
多くの方は出口の上で光っている誘導灯を思い浮かべますが、あの緑の灯火は足元を照らすためのものではありません。
床を照らす役目は建築基準法が定める非常用の照明装置が受け持っています。
この記事では設置が必要になる建物から構造の基準までを整理します。
停電したら廊下が真っ暗になるのではと不安です。
そのために非常用の照明装置という設備があります。
建築基準法が一定の建物に設置を求めているものです。
誘導灯が付いているので足りていると思っていました。
誘導灯とは根拠になる法令も照らす目的も別です。
どちらが必要なのかを建物ごとに分けて見ていきましょう。
- 非常用の照明装置は建築基準法が求める設備で消防法の誘導灯とは根拠が異なります。(建築基準法第35条)
- 劇場や病院や百貨店などの用途に供する特殊建築物の居室と、そこから地上に通ずる廊下や階段に設けます。(建築基準法施行令第126条の4第1項)
- 階数が3以上で延べ面積が500平方メートルを超える建築物の居室にも設けなければなりません。(同項)
- 一戸建の住宅や共同住宅の住戸と病院の病室と学校等はただし書で除かれます。(同項ただし書)
- 直接照明として床面において1ルクス以上の照度を確保し予備電源を設けます。(同令第126条の5第1号)
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目次
非常用の照明装置とはどんな設備なのか

停電したときだけ点いて床を照らす照明で、建築基準法はこれを非常用の照明装置と呼んでいます。
誘導灯は消防法施行令第26条にもとづく設備で、避難口である旨を表示した緑色の灯火や避難の方向を明示した緑色の灯火として、逃げる先を知らせる役目を負っています。
これに対して非常用の照明装置は建築基準法第35条が挙げる避難施設等のひとつで、暗がりのなかで床面を照らして人が歩けるようにする役目を負っています。
どちらも停電したときに働く点は同じですが、示すものと照らすものという違いがあるので、片方があればもう片方を省けるという関係にはありません。
自分の建物の天井を見上げて、緑の灯火とは別に非常用の照明装置が付いているかどうかをまず確かめてください。
ふだん光っていない照明のことだったのですね。
停電したときだけ点いて床を照らす照明です。
緑の誘導灯とは別に付いているかを見てください。
どの建物のどこに設けなければならないのか

どれかひとつに当てはまれば、その居室とそこから地上に通ずる通路が対象になります。
法別表第一(い)欄の(一)項は劇場と映画館と演芸場と観覧場と公会堂と集会場、(二)項は病院と患者の収容施設がある診療所とホテルと旅館と下宿と共同住宅と寄宿舎、(三)項は学校と体育館、(四)項は百貨店とマーケットと展示場とキャバレーとナイトクラブとバーとダンスホールと遊技場です。
これらの用途に供する特殊建築物であれば、規模の大小にかかわらず居室が対象になります。
用途で当たらなくても、階数が3以上で延べ面積が500平方メートルを超えるか、延べ面積が1000平方メートルを超えれば対象です。
そして忘れやすいのが、居室そのものだけでなく地上に通ずる廊下や階段まで含まれる点で、逃げる道すじが最後まで照らされていなければ意味がないという考え方が条文に表れています。
部屋だけでなく廊下や階段も入るのですね。
居室から地上まで通ずる道すじが条文に書かれています。
階段の途中で途切れていないかを図面で追ってください。
どんな構造でなければならないのか

数値がはっきり書かれているので、設計図書と現物を突き合わせて確かめられます。
イ 照明は、直接照明とし、床面において1ルクス以上の照度を確保することができるものとすること。
ロ 照明器具の構造は、火災時において温度が上昇した場合であつても著しく光度が低下しないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとすること。
ハ 予備電源を設けること。
ニ イからハまでに定めるもののほか、非常の場合の照明を確保するために必要があるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとすること。
条文が求めているのは器具の明るさではなく床面において1ルクス以上の照度で、しかも壁や天井に反射させた光ではなく直接照明で確保しなければなりません。
停電したときに働く設備なので、商用の電源とは別に予備電源を設けることも求められています。
器具の構造そのものについても、火災で温度が上がったときに光度が著しく落ちないものであることが条件とされています。
同条第2号には、停電した場合に自動的に点灯し避難するまでの間に床面において1ルクス以上の照度を確保できるものとして国土交通大臣の認定を受けたものという道もあり、認定品を使う場合はこちらで満たすことになります。
器具ではなく床の明るさで決まるのですか。
条文が求めているのは床面での照度です。
器具の下に背の高い棚を置くと光がさえぎられます。
実務で見落としやすいのはどこか

除かれているのは特定の居室であって、そこへ通ずる共用部分までは除かれていません。
一 一戸建の住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸
二 病院の病室、下宿の宿泊室又は寄宿舎の寝室その他これらに類する居室
三 学校等
四 避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室で避難上支障がないものその他これらに類するものとして国土交通大臣が定めるもの
第一号が除いているのは共同住宅の住戸であって、共用の廊下や階段までは除かれていないので、そこは条文の本文にもどって判定することになります。
第三号の学校等は同令第126条の2第1項第2号の言葉で、学校と体育館とボーリング場とスキー場とスケート場と水泳場とスポーツの練習場を指します。
第四号は避難階または避難階の直上階もしくは直下階の居室であれば無条件に外れるという意味ではなく、避難上支障がないものとして国土交通大臣が定めるものに限られている点に注意してください。
なお同条第2項は同令第117条第2項各号に掲げる部分をそれぞれ別の建築物とみなすと定めているので、開口部のない耐火構造の床または壁で区画されている建物では延べ面積の判定が分かれることがあります。
共同住宅なので全部いらないと思い込んでいました。
除かれているのは住戸の中だけです。
共用の廊下と階段は本文にもどって判定してください。
明日からなにを確認すればよいのか

非常用の照明装置は建築設備なので、消防用設備等とは別の届出と検査の系統で管理されています。
建築確認の図面には非常用の照明装置の位置が記されているので、そこで拾った数と現場の器具の数が合うかを見ます。
次に器具の下に背の高い什器や積み荷が置かれていないかを歩いて確かめます。条文が求めているのは床面での照度なので、光をさえぎれば基準を満たさなくなるからです。
そのうえで自分の建物が法第12条第3項の定期検査の対象になっているかを確かめます。同項は政令で定めるもののほか特定行政庁が指定するものを対象としているので、指定の範囲は建物のある地域によって違います。
最後に、消防用設備等の点検で見ている誘導灯とは別の台帳になることを社内で共有しておくと、担当者が替わっても抜けが起きません。
図面の数と現場の数を合わせるところから始めます。
図面と現場が合えば残りは光をさえぎる物だけです。
定期検査の対象かどうかは特定行政庁に確かめてください。
よくある質問
まとめ
明日さっそく天井を見上げて数えてみます。
誘導灯とは別の台帳で管理してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第12条第3項・第35条・別表第一
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第13条・第16条第3項・第116条の2・第117条第2項・第126条の2・第126条の4・第126条の5
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第26条
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





