席を一つ増やしたい、売場に季節の平台を一つ出したい。
店の現場ではよくある相談ですが、階の広さによっては通路の幅が先に決まっていることがあります。
決めているのは消防法の条文そのものではなく、市町村の火災予防条例です。
この記事では客席と売場の避難通路にどんな幅が求められるのかを条文から解説します。
売場に平台を出したいと言われています。
通路の幅に決まりがあるのかどうかが分かりません。
広さによっては主要避難通路の幅が条例で決まっています。
まず階ごとの床面積から見てください。
建物ではなく階ごとに見るのですね。
そのとおりです。
飲食店なら客席の床面積、百貨店なら売場又は展示場の床面積で判断します。
- 火災予防条例(例)は客席と売場の避難通路に幅の数値を置いています。
- キヤバレー等と飲食店は階の客席の床面積が150平方メートル以上になると第37条がかかります。
- 百貨店等は売場又は展示場の床面積で見て主要避難通路と補助避難通路が分かれます。
- 幅は1.6メートルと1.2メートルの二段ですが、どちらが原則かは条ごとに逆です。
- 条文は保有しなければならないと書いており設けたあと保ち続けることまで求めています。
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目次
客席や売場の避難通路とはどこを指すのか

ところが避難通路の話は、その委任とは別の場所に置かれています。
第1条が名指ししている委任は法第9条・法第9条の2・法第9条の4・法第22条第4項の四つで、避難通路の幅はそのどれにも当たりません。
支えているのは末尾の火災予防上必要な事項のほうで、市町村が自分の判断で置いている章ということになります。
その章が第5章の避難管理で、第35条から第42条までの10の条でできています。
劇場等の客席・キヤバレー等の避難通路・百貨店等の避難通路等・定員・避難施設の管理と並び、このうち通路の幅を数値で示しているのが第37条と第38条です。
消防法に直接の条があるわけではないのですね。
幅の数値そのものは条例の側にあります。
だから市町村ごとに確かめる必要があります。
どの階のどんな店が対象になるのか

そして客席か売場かで、見る面積そのものが変わります。
キヤバレー等と飲食店は、当該階における客席の床面積が150平方メートル以上かどうかで判断します。
百貨店等のほうは第38条が売場又は展示場の床面積で見ており、入口のしきい値は同じ150平方メートルです。
百貨店等という語は第23条が百貨店、マーケツトその他の物品販売業を営む店舗又は展示場と定義しており、避難管理の章はその定義を借りています。
建物全体で足すのではないので、同じビルでも階によってかかったりかからなかったりします。
つまり階ごとに図面を出して床面積を足せばよいのですね。
その足し方が出発点です。
飲食店の階なら客席の部分だけを拾ってください。
通路の幅は何メートル必要なのか

ここが読み違えのいちばん多いところです。
2 百貨店等の階のうち当該階における売場又は展示場の床面積が600平方メートル以上の売場又は展示場には、前項の主要避難通路のほか、有効幅員1.2メートル以上の補助避難通路を保有しなければならない。
3 百貨店等に避難の用に供することができる屋上広場を設けた場合は、当該広場を避難上有効に維持しなければならない。
第37条はキヤバレー等が1.6メートルで、飲食店だけが1.2メートルまで下がるという書き方をしています。
一方の第38条第1項は原則が1.2メートルで、売場又は展示場の床面積が300平方メートル以上になると1.6メートルへ上がります。
第38条第1項の主要避難通路は1以上あればよく、そのかわり行き先が屋外へ通ずる避難口又は階段に直通することまで指定されています。
600平方メートル以上になると、これに加えて有効幅員1.2メートル以上の補助避難通路が要ります。
同じ数値でも原則と例外が入れ替わっているのですね。
数値だけを覚えると取り違えます。
どちらの条を読んでいるかを先に決めてください。
実務で見落としやすいのはどこか

条例(例)の側から四つ拾っておきます。
一つ目は有効幅員という語で、条例(例)の全文でこの語が出てくるのは第37条と第38条第2項と第40条第2号の三か所だけです。第38条第1項の主要避難通路は幅としか書かれていません。
二つ目は測り方で、屋外の客席を定める第36条が歩行距離15メートルや40メートルで測るのに対し、第37条はいす席、テーブル席又はボツクス席7個以上を通過しないでという席の数で測ります。
三つ目は特例で、第36条の2の基準の特例が及ぶのは前2条つまり第35条と第36条だけで、第37条と第38条には特例の条そのものが置かれていません。
四つ目は準用の範囲で、第42条が準用するのは第37条の2から前条までなので、体育館を一時的に使う日にも第37条だけは入ってきません。
幅が足りないときに緩めてもらう条が無いというのは意外です。
(例)の側にはありません。
実際の扱いは市町村の条例と所轄の運用で確かめてください。
明日からなにを確認すればよいのか

そのうえで図面と現物の両方を当たります。
火災予防条例(例)は消防庁長官が示したひな形なので、実際に効くのは市町村が定めた条例のほうです。避難管理の章にあたる条を、番号ではなく条の見出しで引き直してください。
次に階ごとの図面で客席または売場と展示場の床面積を出し、150平方メートル・300平方メートル・600平方メートルのどこに当たるかを確かめます。
そのうえで現物をメジャーで測り、什器や柱でいちばん狭くなっている地点の幅を記録します。
用途を変えて使い始めるときは使用開始の日の7日前までの届出が第43条に置かれているので、売場のレイアウトはその前に固めておくと手戻りがありません。
図面で当たりを付けてから現物を測ればよいのですね。
その順番が速いです。
いちばん狭い地点の数値を残しておくと次の入替えでも使えます。
よくある質問
まとめ
明日の開店前にいちばん狭い地点から測ってみます。
階ごとの床面積と通路の幅が起点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条の2の4・第9条
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第4条の2の3
- 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日 自消甲予発第73号)第1条・第23条・第35条・第36条・第36条の2・第37条・第38条・第42条・第43条 総務省消防庁
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





