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統括防災管理者を定めていないと消防は誰に命じるのか|協議して定める義務と全体の業務への是正命令を解説

統括防災管理者を定めていないと消防は誰に命じるのか

管理権原が分かれた大きな建物では統括防災管理者を置かなければならないことがあります。
決めるのはテナントの誰か一人ではなく権原を有する者が協議して定める仕組みです。
定めていないと消防長又は消防署長から命令が出ますが、その命令が届く相手も同じ人たちです。
消防法第36条第1項が統括防火管理の規定をそのまま防災管理へ読み替えて準用しているためです

うちのビルは所有者もテナントもばらばらです。
建物全体をまとめる人を決めろと言われて困っています。

その役目が統括防災管理者です。
誰か一人が背負うのではなく権原を持つ人たちが協議して決めます。

協議がまとまらないまま何年も過ぎています。
放っておくと誰が消防に呼ばれるのでしょうか。

命令の名あて人は権原を有する者です。
まとまらなかった側だけが外れる仕組みにはなっていません。

この記事の結論
  • 統括防災管理者は権原を有する者が協議して定めます。
  • 定めていないときの選任命令は消防法第8条の2第5項の準用です
  • 全体の業務が計画どおりでないときの是正命令は同条第6項の準用です
  • どちらの命令も名あて人は管理権原者でテナントの防災管理者ではありません。
  • テナントごとの消防計画は全体の消防計画に適合していなければなりません。

統括防災管理者をめぐる選任命令と是正命令の名あて人と根拠条文を左右に並べた図解

統括防災管理者は誰がどうやって定めるのか

高層ビルの前で三人の管理権原者が円卓を囲み建物全体の消防計画を前に統括防災管理者を協議して定める様子のイラスト
出発点は防火管理の規定です。
消防法第36条第1項が、次の条文を防災管理へ読み替えて準用しています。
消防法第8条の2第1項(抜粋) 高層建築物(高さ31メートルを超える建築物をいう。(略))その他政令で定める防火対象物で、その管理について権原が分かれているもの又は地下街(略)でその管理について権原が分かれているもののうち消防長若しくは消防署長が指定するものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちからこれらの防火対象物の全体について防火管理上必要な業務を統括する防火管理者(以下この条において「統括防火管理者」という。)を協議して定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物の全体についての消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設の管理その他当該防火対象物の全体についての防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
義務を負うのは建物ではなく人です。
第36条第1項の読替表は、この条文の「統括防火管理者」を統括防災管理者に、「防火管理上」を「防災管理上」に、訓練の部分を「避難の訓練の実施」に置き換えています。
つまり防災管理の側でも、全体の消防計画を作り避難訓練を行い廊下や階段や避難口を管理する役目を、権原を有する者が協議して決めることになります。
資格は消防法施行令第48条の2が定めており、防災管理者になれる者のうち全体の業務を遂行するための権限と知識を持つ者に限られます。
協議は義務であって話がまとまらないことを理由に先延ばしできる規定はありません

協議というのは全員で集まって決めるという意味ですか。

条文が求めているのは権原を有する者が話し合って一人を定めることです。
まずは建物の権原がいくつに分かれているかを書き出してみてください。

定めていないとき消防は誰に命じるのか

消防の職員が差し出す命令書を三人の管理権原者がそれぞれ受け取る様子のイラスト
ここが実務でいちばん誤解されるところです。
命令の相手は建物の管理会社でも防災センターでもありません。
消防法第8条の2第5項 消防長又は消防署長は、第一項の防火対象物について統括防火管理者が定められていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、同項の規定により統括防火管理者を定めるべきことを命ずることができる
名あて人は「同項の権原を有する者」です。
第一項で協議義務を負っていた人たちが、そのまま命令を受ける立場になります。
建物の権原が五者に分かれているなら、命令はその五者それぞれに向けられ得るということです。
自分のフロアの防災管理者を選任していても、それは部分ごとの義務を果たしただけで、この命令をかわす理由にはなりません。
協議に消極的だった側だけが命令の対象になるという書き分けは条文にありません
命令が出されたときは第7項が消防法第5条第3項及び第4項を準用するので、標識の設置その他の方法で公示されます。

うちは一テナントなので他社の事情までは動かせません。
それでも命令の相手になるのですか。

条文は権原を有する者と書いているだけで人数や立場で区別していません。
協議を呼びかけた記録を残しておくことが自衛になります。

全体の業務が消防計画どおりでないときはなにを命じられるのか

消防の職員が建物全体の階段と避難口を確認して是正命令の要否を判断する様子のイラスト
人を定めれば終わりではありません。
定めたあとに効いてくるのが次の規定です。
消防法第8条の2第6項 消防長又は消防署長は、第一項の規定により同項の防火対象物の全体について統括防火管理者の行うべき防火管理上必要な業務が法令の規定又は同項の消防計画に従つて行われていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、当該業務が当該法令の規定又は同項の消防計画に従つて行われるように必要な措置を講ずべきことを命ずることができる
見られるのは紙ではなく実際の運用です。
是正命令の要件は「法令の規定又は同項の消防計画に従つて行われていない」ことなので、自分たちで作った全体の消防計画に書いたことも判断の物差しになります
防災管理へ読み替えた場合の業務は、全体の消防計画の作成と避難訓練の実施、そして廊下や階段や避難口といった避難上必要な施設の管理です。
全館の避難訓練を計画に書いたまま一度も実施していない状態は、この要件に近づきます。
名あて人はここでも権原を有する者であって、統括防災管理者本人ではありません。

つまり計画に書きすぎると自分の首を絞めるということですね。

書いたことは守る前提なので、実行できる中身に整えるほうが先です。
今年やれない訓練が計画に残っていないかを確かめてください。

テナントの消防計画が全体の計画と合っていないとどうなるのか

建物全体の消防計画とテナントごとの消防計画が並び一冊だけ向きの合っていない様子のイラスト
見落とされやすいのが計画どうしの関係です。
統括の規定は指示の権限と適合の義務を対にして置いています。
消防法第8条の2第2項 統括防火管理者は、前項の規定により同項の防火対象物の全体についての防火管理上必要な業務を行う場合において必要があると認めるときは、同項の権原を有する者が前条第一項の規定によりその権原に属する当該防火対象物の部分ごとに定めた同項の防火管理者に対し、当該業務の実施のために必要な措置を講ずることを指示することができる。 同条第3項 前条第一項の規定により前項に規定する防火管理者が作成する消防計画は、第一項の規定により統括防火管理者が作成する防火対象物の全体についての消防計画に適合するものでなければならない
適合は努力目標ではありません。
第36条第1項の読替表は第2項と第3項も対象にしているので、防災管理の側でも統括防災管理者は部分ごとの防災管理者へ必要な措置を指示でき、部分ごとの消防計画は全体の計画に適合していなければなりません。
避難する方向や一時的な集合場所を各テナントが独自に決めていると、建物全体では逆向きの人の流れができて適合していない状態になります
届出も別々に出すため、消防側は全体の計画と部分ごとの計画を並べて読める立場にあります。
テナントの計画を改訂したら統括防災管理者へ写しを回す運用を決めておくと、この食い違いは起きにくくなります。

うちのフロアの計画は入居したときのまま止まっています。
全体の計画と突き合わせたことがありません。

まず全体の計画の写しをもらって避難経路の章だけ見比べてください。
そこが合っていれば残りは書き方の問題であることが多いです。

明日からなにを確かめればよいのか

統括防災管理者の選任届の控えと消防計画の写しを窓口で確かめる様子のイラスト
命令を受ける前にできることがあります。
順番は届出の控えを探すところからです。
消防法第8条の2第4項 第一項の権原を有する者は、同項の規定により統括防火管理者を定めたときは、遅滞なく、その旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
まず控えの有無で状況が分かれます。
届出の様式と手続は消防法施行規則第51条の11の3が定めており、選任届の控えが見つからないなら、そもそも定めていない可能性を疑ってください。
控えがあるなら、次は全体の消防計画が同規則第51条の11の2のとおりに作られ届け出られているかを確かめます。
そのうえで自社の部分の消防計画を並べ、避難経路と集合場所と連絡先の三点だけでも突き合わせておくと、適合していない箇所は短時間でも見つかります
統括防火管理者を置くべき建物でもある場合は、消防法第36条第3項により統括防災管理者が統括防火管理者の業務も行うので、二人を別に立てる前提で探さないでください。

まず届出の控えを探せばよいのですね。
どこにも無ければ管理組合に確認してみます。

その確認だけでも協議を始めるきっかけになります。
所轄の消防署に届出の有無を尋ねる方法もあります。

よくある質問

Q統括防災管理者は統括防火管理者と別の人を立てなければならないのですか?
A消防法第36条第3項は、統括防火管理者を置くべき建物では統括防災管理者に統括防火管理者の業務も行わせることとしています。別々に立てる前提ではありません。
Q命令はテナントごとの防災管理者にも届くのですか?
A第5項と第6項の名あて人はいずれも権原を有する者です。部分ごとに定めた防災管理者は名あて人になりません。
Q統括防災管理者を定めたら届出はいるのですか?
A第4項の準用により遅滞なく所轄消防長又は消防署長へ届け出ます。解任したときも同じです。
Q命令が出たことは建物の外から分かるのですか?
A第7項が消防法第5条第3項及び第4項を準用しているため、標識の設置その他の総務省令で定める方法により公示されます。

まとめ

統括防災管理者の根拠は消防法第36条第1項が準用する第8条の2です。
定めるのは権原を有する者が協議して行う義務です
定めていないときの選任命令は第5項の準用です。
全体の業務が計画どおりでないときの是正命令は第6項の準用です。
どちらの命令も名あて人は権原を有する者です
部分ごとの消防計画は全体の計画に適合していなければなりません。
まず選任届の控えがあるかどうかを確かめてください

今日のうちに選任届の控えを探してみます。
無ければ他の権原者にも声をかけて協議の場を作ります。

その動き出しがあれば選任命令を受ける前に手を打てます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第5条第3項及び第4項・第8条の2・第36条第1項及び第3項
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第3条の3・第4条・第4条の2の4・第46条・第47条・第48条の2
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条の3・第51条の8・第51条の11・第51条の11の2・第51条の11の3

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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