事務所の一角を仕切って会議室にしたり、倉庫の窓を棚でふさいだりすると、その部屋は建築基準法でいう無窓の居室に当たることがあります。
無窓の居室になると、家具や内装の色ではなく、その部屋を区画する主要構造部そのものに制限がかかります。
しかも消防法にも無窓階というよく似た言葉があり、判定する単位も根拠となる法令も別のものです。
窓のあるなしで変わるのは設備の数だけではなく建物の骨組みそのものです。
会議室を作るのに窓は要らないと思っていました。
そんなに大きな話になるんでしょうか。
窓のない居室は建築基準法で主要構造部の造りまで決められています。
壁や柱そのものの話なので、後から直すのは簡単ではありません。
うちは立入検査で無窓階だと言われたことがあります。
それと同じ話ですか。
別の制度です。
無窓階は消防法で階ごとに見るもので、無窓の居室は建築基準法で部屋ごとに見ます。
- 建築基準法第35条の3は、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室について、その居室を区画する主要構造部を耐火構造とし、又は不燃材料で造らなければならないと定めています
- 該当するかどうかは建築基準法施行令第111条第1項で決まり、採光に有効な開口部と避難上有効な開口部のどちらも足りない居室が無窓の居室になります
- 採光の側の物差しは床面積の20分の1で、避難の側の物差しは直径1メートル以上の円が内接できる開口部などです
- ふすまや障子で仕切られた二室は、同条第2項により一室とみなして判定します
- 消防法の無窓階は階ごとに見る別の制度で、根拠は消防法施行令第10条第1項第5号と消防法施行規則第5条の5です
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目次
窓のない部屋は建築基準法でどう扱われるのか

そのかわり、窓が足りない居室には部屋の造りについての条件が付きます。
窓を付けなさいと命じる条文ではなく、窓がないなら耐火構造か不燃材料で区画しなさいという組み立てになっています。
対象は建物全体ではなく居室です。建築基準法第2条第4号は居室を、居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室と定めています。
ただし書により、別表第一(い)欄(一)項に掲げる劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場などの用途に供するものは、この条文の対象から外れます。
まず見るべきは、その部屋が居室かどうかと、どの用途に使われているかの二点です。
倉庫や機械室も居室になるんでしょうか。
条文の分かれ目は継続的に使用する室かどうかです。
実際にどう使っているかを図面と突き合わせて確かめてください。
どんな部屋が無窓の居室になるのか

物差しは採光と避難の二つです。
第1号は採光の物差しで、採光に有効な部分の面積の合計が床面積の20分の1以上あるかを見ます。ここでいう面積は同令第20条の採光補正係数を使って計算するものなので、窓の見た目の大きさとは一致しません。
第2号は避難の物差しで、直接外気に接する避難上有効な構造であり、直径1メートル以上の円が内接できるか、幅75センチメートル以上かつ高さ1.2メートル以上であることが求められます。
条文には、避難上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合するものを除くという除外もかかっています。
自分の建物で確認するときは、部屋ごとに開口部の寸法と床面積を拾い出すところから始めてください。
小さな窓が一つあれば足りるということですか。
条文が求めているのは大きさと構造なので、数ではありません。
図面の窓の寸法をそのまま条文に当てて確かめてください。
無窓の居室になると建物の造りはなにを求められるのか

主要構造部という言葉の範囲も法律が定めています。
壁、柱、床、はり、屋根、階段が主要構造部であり、構造上重要でない間仕切壁や間柱などは条文で除かれています。
その主要構造部を、法第35条の3は耐火構造とするか、不燃材料で造ることを求めています。耐火構造は法第2条第7号、不燃材料は同条第9号にそれぞれ定義があり、いずれも国土交通大臣が定めた構造方法か大臣の認定を受けたものに限られます。
つまり後から張り替えて済ませられる話ではなく、設計と施工の段階で決まってしまう部分です。
既存の建物で窓をふさぐ計画があるときは、工事に入る前に設計者と建築主事や指定確認検査機関に確認しておくのが確実です。
つまり内装をやり直せば済む話ではないんですね。
条文が指しているのは骨組みのほうです。
間取りを変える計画が出た段階で設計者に相談してください。
実務で見落としやすいのはどこか

条文は仕切られた二室をまとめて見ると定めています。
ふすまや障子のように随時開放することができるもので仕切られた二室は、施行令第111条第1項の適用については一室とみなすと定められています。
窓のある部屋を可動間仕切りで二つに割ったとき、窓のない側だけを取り出して判定するのではなく、二室をまとめて一室として見ることになります。
もう一つの見落としが、消防法の無窓階との混同です。無窓階は階を単位に判定する消防法の言葉で、無窓の居室は建築基準法で部屋を単位に判定するものです。効いてくるのも消防用設備等ではなく主要構造部のほうです。
同じ建物で両方に当たることも片方だけに当たることもあるので、どちらの話をしているのかをはっきりさせてから図面に当たってください。
可動間仕切りで部屋を割ることはよくあります。
そこまで見られているとは思いませんでした。
条文が一室とみなすと書いているところです。
間仕切りを入れる図面が出てきたら、割る前の部屋で測り直してください。
明日からなにを確認すればよいのか

部屋の単位と階の単位を分けて見るのが要点です。
継続的に使用する室を拾い、そのうち窓のない部屋と窓が小さい部屋に印を付けます。次にその部屋の床面積と開口部の寸法を並べ、建築基準法施行令第111条第1項の二つの物差しに当てはめます。
採光に有効な部分の面積は同令第20条の計算によるものなので、判定に迷う部屋が出たら設計者や建築士に計算を依頼してください。
そのうえで、その階が消防法の無窓階に当たっていないかを別に確かめます。具体的な物差しは消防法施行規則第5条の5にあり、10階以下の階では直径1メートル以上の円が内接できる開口部などを2以上有するかどうかで判定します。所轄消防署の立入検査でも見られる項目です。
最後に、テナント工事や倉庫の模様替えで窓をふさぐ計画が出ていないかを社内で拾い上げ、工事の前に相談する流れを作っておくと後戻りがなくなります。
図面を見ながら部屋ごとに拾っていけばよいのですね。
その順番で十分です。
迷った部屋だけを設計者に回せば手戻りが減ります。
よくある質問
まとめ
窓のあるなしで骨組みまで変わるとは知りませんでした。
さっそく図面を出して部屋ごとに見てみます。
部屋と階を分けて見る癖がつけば迷いません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第4号・第5号・第7号・第9号、第35条の3、別表第一
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第20条、第111条
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第10条第1項第5号
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第5条の5
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。建築基準法の適用については建築主事または指定確認検査機関にご確認ください。





