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ライブハウスは非常時に照明と音響を止めなければならないのか|火災予防条例が定めるディスコ等の避難管理を解説

照明トラスとミキシングコンソールのある無人のライブハウスの客席

ライブハウスやクラブでは、照明と音響が演出のいちばん大事な部分を受け持っています。
ところが火災予防条例には、その照明と音響を非常時に止めることを求める条が置かれています。
対象はディスコ等とだけ書かれていて、令別表第一の項番号では線を引いていません。
止めるだけでなく避難上有効な明るさを保つところまでが一つの義務です

うちは小さなライブハウスなんですが、火事のときに照明はどうすればよいのでしょうか。
演出用のものを全部落として真っ暗にするのだと思っていました。

そこがちょうど条例に書いてあるところです。
止めるのは特殊照明と音響で、避難のための明るさはむしろ残さなければなりません。

残す明るさもあるんですね。
止めることばかり考えていて、そちらは頭にありませんでした。

条文は一文で二つのことを求めています。
しかも義務を負うのは防火管理者ではなく関係者と書かれています。

この記事の結論
  • 火災予防条例(例)第37条の2ディスコ等の関係者に非常時の行動そのものを義務づけています
  • 求められるのは特殊照明及び音響をすみやかに停止することと避難上有効な明るさを保つことの二つです
  • 対象はディスコ、ライブハウスその他これらに類するもので、令別表第一の項番号では切っていません
  • 第36条の2の基準の特例が及ぶのは前2条だけなので、この条には緩和の道が用意されていません
  • 体育館や講堂を一日だけディスコ等に使う日にも第42条で準用されます

ディスコ等の避難管理で止めるものと残すものを示した図解

消防法はライブハウスの非常時の行動まで決めているのか

出入口の脇に置かれた荷物と照明卓のレバーに手を伸ばす人を並べたイラスト
法律と条例のどちらに書いてあるかで、義務の中身がまるで違います。
まず消防法の側がどこまで書いているのかを見ます。
消防法第8条の2の4 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について避難の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理し、かつ、防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理しなければならない。
消防法が求めているのは物の管理です
廊下や階段や避難口に物を置かないこと、防火戸の閉鎖をさまたげる物を置かないことまでが条文の中身で、非常時にだれがなにをするかという行動までは書かれていません。
その行動を正面から義務にしているのが火災予防条例(例)第37条の2です。
条例(例)の全文を通して非常時という語が使われているのは二か所しかなく、どちらも避難管理の第5章に置かれています。
一方が第37条の2で、もう一方は第40条第三号のただし書きにある非常時に自動的に解錠できる錠の話です。
自分の店がどちらの話なのかを、まず条文の置き場所から確かめてください。

消防法だけ見ていたので、うちの店には関係のない話だと思っていました。
条例にそんな条があるとは知りませんでした。

条例は市町村ごとに定めるものなので、法律だけを読んでも出てきません。
まずお店のある市町村の火災予防条例を開いてみてください。

どんな店がディスコ等にあたるのか

球のつるされた建物とステージとスピーカーのある建物を並べたイラスト
条文は業種の名前で対象を示していて、項番号では切っていません。
自分の店が入るかどうかは、その書き方から読むことになります。
火災予防条例(例)第37条の2 ディスコ、ライブハウスその他これらに類するもの(以下「ディスコ等」という。)の関係者は、非常時において、すみやかに特殊照明及び音響を停止するとともに、避難上有効な明るさを保たなければならない。
同第40条 令別表第1に掲げる防火対象物の避難口、廊下、階段、避難通路その他避難のために使用する施設は、次に定めるところにより、避難上有効に管理しなければならない。
条文は令別表第一の項番号で線を引いていません
同じ第5章でも第40条と第41条は令別表第1に掲げる防火対象物と書き出しているのに、第37条の2はディスコ等とだけ書いています。
はっきり書き分けられているので、令別表の項番号だけを見て自分の店は外れると決めることはできません。
ディスコ等の中身もその他これらに類するものという受け皿つきで、名前の並びだけで閉じてはいない書き方です。
第5章の十の条のうち、義務の相手を関係者と名指ししているのは第37条の2と第39条の二つだけで、そのうち言い切りの形になっているのは第37条の2のほうです。
自分の店の営業のしかたを条文のことばに当てはめて、迷うところは所轄消防署に確かめてください。

うちはライブもやるバーなんですが、こういう店はどちらに入るのでしょうか。
看板にはライブハウスとは書いていません。

条文は看板の名前ではなく、これらに類するものという受け皿を持っています。
演出用の照明と音響を使う営業なら、まず当たると考えて備えておくのが安全です。

非常時にはなにをしなければならないのか

全部消して暗くなった客席と明るさを残した客席を比べたイラスト
条文は一文ですが、求めていることは二つに分かれています。
止めることと残すことを取り違えないのが要点です。
火災予防条例(例)第37条の2 ディスコ、ライブハウスその他これらに類するもの(以下「ディスコ等」という。)の関係者は、非常時において、すみやかに特殊照明及び音響を停止するとともに、避難上有効な明るさを保たなければならない
止めるのは特殊照明と音響で、明るさは残します
前半が停止、後半が明るさの維持で、とともにという言葉が二つを一つの義務としてつないでいます。
特殊照明という語は条例(例)の全文でこの条にしか出てきません。
止めることと明るさを保つことが並べて書かれているので、どちらか一方だけでは条文の求めるところに届きません。
すみやかにという言い方も入っているので、指示を待ってから探して止めるという段取りでは間に合わない場面が想定されています。
閉店後ではなく営業中に近い状態で、この二つがどれだけの時間でできるかを一度試しておいてください。

つまり暗転させて終わりではないということですね。
止めたあとに明るさをどう作るかまで決めておく必要がありそうです。

そのとおりです。
非常用の照明や誘導灯は設備として別に基準がありますので、演出卓の操作とあわせて手順にしておくと確実です。

実務で見落としやすいのはどこか

一日だけ会場にした体育館と常設の店に同じ照明卓を置いたイラスト
緩和と罰則の条を見にいくと、この義務の輪郭がはっきりします。
三つの見落としを順に確かめます。
火災予防条例(例)第36条の2 前2条の規定の全部又は一部は、消防長(消防署長)が劇場等の位置、収容人員、使用形態、避難口その他の避難施設の配置等により入場者の避難上支障がないと認めるときにおいては、適用しない。
同第42条 第35条から第36条の2まで及び第37条の2から前条までの規定は、体育館、講堂その他の防火対象物を一時的に劇場等、展示場又はディスコ等の用途に供する場合について準用する。
この条には緩和の道が用意されていません
第36条の2の基準の特例が及ぶのは前2条だけで、そこに入るのは第35条と第36条です。
二つ目は準用で、体育館や講堂を一日だけディスコ等の用途に使う日にも第42条が第37条の2を掛けています。
同じ第42条でもキヤバレー等の避難通路を定めた第37条は準用の対象から外れているので、条番号を一つ読み違えると結論が入れ替わります。
三つ目は罰則で、条例(例)の罰則の条が挙げている号は四つあり、そこに避難管理の第5章の条は一つも入っていません。
罰金が付いていないことと守らなくてよいことは別なので、立入検査で見られる項目として手順に落としておいてください。

体育館を一日だけ借りてライブをやる場合も同じなんですね。
常設のお店だけの話だと思い込んでいました。

一時的な用途でも準用されます。
会場を借りる側が、照明卓と音響卓を誰が触るのかを先に決めておいてください。

明日からなにをすればよいのか

点検票を持つ人と手順書を立てた卓と壁に貼った札を並べたイラスト
条文は行動を求めているので、紙の上だけでは終わりません。
手を動かす順番に並べます。
消防法第2条第4項 関係者とは、防火対象物又は消防対象物の所有者、管理者又は占有者をいう。
まず主語を決めます
条文が名宛人にしているのは関係者で、消防法第2条第4項がこれを所有者と管理者と占有者と定義しています。
ビルのオーナーもテナントとして入っている占有者もここに入るので、非常時に照明卓と音響卓を誰が触るのかを先に決めておいてください。
次に消防計画や自衛消防の任務分担表へ、停止の操作と明るさの確保を一行ずつ書き足します。
そのうえで営業中に近い状態で一度試し、開演中でもすみやかに止められるかを確かめます。
条文の数値や運用は市町村ごとに違うので、自分の市町村の火災予防条例を所轄消防署で確かめておくのが確実です。

手順にしてみると、やることは意外と少ないですね。
卓の操作と明るさの確認をひとまとめにしておきます。

その二つが並んでいれば条文の求めるところに届きます。
市町村ごとの条番号だけは念のため確かめておいてください。

よくある質問

Qディスコ等にあたるかどうかは誰が決めるのですか?
A条文には判断する人が書かれていません。対象はディスコ、ライブハウスその他これらに類するものとだけ示されているので、実際の営業のしかたを持って所轄消防署に確かめるのが確実です。
Q非常用の照明や誘導灯があれば明るさを保つ義務は果たしたことになりますか?
A条文は関係者に避難上有効な明るさを保つことを求めていて、設備があれば免除するとは書いていません。設備がある場合でも、演出の照明を落としたあとに実際に明るさが残るかを確かめてください。
Q一日だけのイベントでも同じ義務がかかりますか?
A火災予防条例(例)第42条が、体育館や講堂を一時的にディスコ等の用途に使う場合について第37条の2を準用しています。常設の店かどうかで分かれる書き方にはなっていません。
Q消防長が認めれば適用しないという特例は使えますか?
A第36条の2の基準の特例が及ぶのは前2条で、これは第35条と第36条を指します。第37条の2はその範囲に入っていないので、この特例で外すことはできません。

まとめ

火災予防条例(例)第37条の2はディスコ等の関係者に非常時の行動を義務づけています
止めるのは特殊照明と音響で、避難上有効な明るさは保ちます
対象はディスコ、ライブハウスその他これらに類するもので、令別表第一の項番号では切っていません
同じ第5章でも第40条と第41条は令別表第1に掲げる防火対象物と書き出していて、書き分けられています
第36条の2の基準の特例が及ぶのは前2条だけで、この条には緩和の道がありません
第42条により体育館や講堂を一日だけディスコ等に使う日にも準用されます
義務を負うのは関係者で、消防法第2条第4項が所有者と管理者と占有者と定義しています

止めるものと残すものを分けて考えればよいと分かりました。
さっそく任務分担表に照明卓と音響卓の担当を書き足します!

開演中に一度試しておくと当日の迷いが消えます。
ライブハウスの避難管理でお困りでしたら㈱防災屋でもご相談を承っております

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第2条第4項・第8条の2の4 e-Gov法令検索
  • 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日 自消甲予発第73号)第36条の2・第37条・第37条の2・第39条・第40条・第41条・第42条・第49条 総務省消防庁

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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