うちの建物は事情が違うから、条例の基準をそのまま当てはめられない。
現場でそう感じたときに手がかりになるのが、火災予防条例に置かれた基準の特例という条です。
消防長(消防署長)が認めたときは、その規定を適用しないと書かれています。
ただし特例の条は一つではなく、外れる範囲も認めてもらう理由も条ごとに違います。
消防署に相談すれば条例の基準は緩めてもらえると聞きました。
本当にそんな仕組みがあるんですか。
条例には基準の特例という見出しの条が置かれています。
ただし何でも緩められる万能の条ではありません。
万能ではないというのは、外せない基準もあるということですか。
そのとおりです。
特例の条が名指ししていない条は、はじめから緩和の対象外になります。
- 火災予防条例(例)には基準の特例という見出しの条が五つ置かれています
- 五つとも及ぶ範囲の書き方が違い、節ごと外すもの・条を名指しするもの・括弧で除くものに分かれます
- 認める理由は火災予防上支障がないと認めるときと、予想しない特殊の設備で同等以上の効力があると認めるときの二本立てです
- ただし二本立てになっているのは五つのうち三つだけで、残る二つは理由が一つしかありません
- 判断するのは消防長(消防署長)なので、建物の側だけで基準を外すことはできません
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目次
火災予防条例の基準は消防署が認めれば外れるのか

委任元である消防法の側から見ていきます。
第9条は基準を市町村条例で定めると書いているだけで、認めれば適用しないという緩和の文言を持っていません。
指定数量未満の危険物と指定可燃物を条例に委ねる第9条の4も、住宅用防災機器を委ねる第9条の2も同じで、緩和にはふれていません。
消防法の本則で特例という語が出てくるのは二か所だけで、防火対象物点検の特例認定を定めた第8条の2の3と、区域の変更にともなう権限の特例を定めた第16条の7です。
どちらも火の使用の基準を緩める規定ではありませんので、緩和がほしければ条例の条文を直接読みにいくことになります。
消防法をいくら読んでも緩和の話が出てこなかったわけですね。
探す先は市町村の条例です。
目次で基準の特例という見出しを拾ってください。
特例の条はどこまでの範囲に及ぶのか

基準の特例という見出しの条は五つあります。
火を使用する設備の第17条の3と、火を使用する器具の第22条の2はこの節の規定はと書き、その節をまるごと相手にしています。
住宅用防災機器の第29条の6は第29条の2から第29条の4までと条を名指しし、指定数量未満の危険物と指定可燃物の第34条の3はこの章と書いたうえで括弧の中で三つの条を除いています。
避難管理の第36条の2だけは前2条の規定の全部又は一部という書き方で、及ぶのは劇場等の屋内の客席の第35条と屋外の客席の第36条の二つに限られます。
この全部又は一部という言い回しは条例(例)の全文でここ一か所にしかなく、条の一部だけを外せると明記しているのは第36条の2だけです。
同じ見出しでも守備範囲がまるで違うんですね。
外したい基準がどの節のどの条にあるかを先に確かめてください。
そこが決まらないと使う特例の条も決まりません。
消防長はなにを見て特例を認めるのか

条文には認定の道が書き分けられています。
一つ目は火災予防上支障がないと認めるとき、二つ目は予想しない特殊の設備を用いることで同等以上の効力があると認めるときです。
条例(例)の全文で予想しない特殊という語と同等以上の効力という語はそれぞれ三か所にしかなく、二本立てになっているのは第17条の3と第22条の2と第34条の3の三つだけです。
残る二つは理由が一つしかなく、第29条の6は火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なくかつ被害を最少限度に止めることができると認めるとき、第36条の2は入場者の避難上支障がないと認めるときだけです。
つまり劇場等の客席と住宅用防災機器については、新しい設備を持ち込んで同等以上だと主張する道が条文に用意されていません。
新しい機器を入れたから緩めてほしい、という話が通る場面と通らない場面があるわけですね。
相談に行く前に、その条に同等以上の道があるかを読んでおいてください。
無ければ持っていく資料の中身が変わります。
特例で外れない条があるのはなぜか

いちばん分かりやすいのが第4章の特例です。
除かれている三つは、貯蔵と取扱いの基準そのものを定めた第30条、危険物の類ごとに共通する基準を定めた第31条の7、そして品名や指定数量が違う危険物の量を合算する第32条です。
つまり量の数え方と、扱ううえでの共通の心得は、どんな事情があっても特例で外れないという組み立てになっています。
避難管理の側も同じで、第36条の2が及ぶのは第35条と第36条の二つだけですから、キヤバレー等の避難通路の第37条から準用の第42条までは特例の射程に入りません。
さらに五つの特例はいずれも自分の章や節の中を向いているので、使用開始の届出や設備の設置の届出を並べた第6章の雑則は、どの特例からも外れる余地がありません。
届出が要らなくなることはないんですね。
特例は技術上の基準を外す仕組みです。
届出そのものは別の章にあるので手続は残ります。
明日からなにを確認すればよいのか

手続の書き場所も条例が指定しています。
条例(例)は消防庁長官の通知として示されたひな形なので、実際の条番号や枝番は市町村ごとに違います。
まず自分の市町村の火災予防条例を開いて目次から基準の特例の条を拾い、外したい基準がその条の射程に入っているかを確かめてください。
射程に入っていたら、次はその条が同等以上の効力という道を持っているかどうかを読み、持っていれば代わりの措置の資料を、持っていなければ支障がないと言える現場の状況の資料をそろえます。
そのうえで所轄の消防署に相談します。認めるかどうかを決めるのは消防長(消防署長)ですから、建物の側で結論を出さないでください。
まず自分の市の条例を開くところからですね。
目次を見れば基準の特例という見出しはすぐ見つかります。
そこから逆に射程の条を追ってください。
よくある質問
まとめ
外せる条と外せない条があると分かっただけで、相談の準備がぐっと楽になりました。
さっそくうちの市の条例を開いてみます。
射程の読み分けでつまずいたら㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条の2の3・第9条・第9条の2・第9条の4・第16条の7
- 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日 自消甲予発第73号 消防庁長官)第17条の3・第22条の2・第29条の5・第29条の6・第30条・第31条の7・第32条・第34条の3・第35条・第36条・第36条の2・第37条・第42条・第48条・第49条
- 総務省消防庁「火災予防条例(例)」
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





