倉庫の高さを聞かれて、屋根のてっぺんまでの寸法を答えて話がかみ合わなかったことはないでしょうか。
消防や建築の書類でいう軒の高さは、屋根の先端までの高さではなく、まったく別の場所を測った数字です。
そして測る場所を取り違えると、その倉庫に危険物を置けるかどうかの判断まで変わってしまいます。
軒の高さは建築基準法施行令が算定方法を決めていて、消防法令では危険物の倉庫の基準として効いてきます
うちの倉庫の軒の高さを書けと言われて手が止まりました。
屋根のどこまでを測ればよいのでしょうか。
屋根は測りません。
柱や壁の上の端までで止めるのが軒の高さです。
そんな細かい数字が、うちの管理に関係してくるのですか。
関係します。
指定数量以上の危険物を屋内に置くなら軒高が基準そのものになります。
- 軒の高さは地盤面から、小屋組またはこれに代わる横架材を支持する壁・敷桁・柱の上端までの高さです(建築基準法施行令第2条第1項第7号)
- 起点になる地盤面は建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さで、高低差が3メートルを超えるときは3メートル以内ごとに分けて考えます
- 消防法にも消防法施行令にも消防法施行規則にも「軒」という字は出てきません。軒高に定義を置いているのは危険物の規制に関する政令です
- 危険物の屋内貯蔵所の貯蔵倉庫は軒高6メートル未満の平家建てが原則です(危険物の規制に関する政令第10条第1項第4号)
- 軒高が6メートル以上になると、消火設備と警報設備で求められるものが変わります
▼

目次
軒の高さとは建物のどこまでを指すのか

算定方法は建築基準法施行令にはっきりと書かれています。
小屋組は屋根を支える骨組みのことで、横架材は柱の上に水平に渡した部材のことをいいます。
その骨組みを受けている壁や敷桁や柱の、上の端までが軒の高さになります。
ですから、そこから上に載っている屋根そのものや棟の分は、軒の高さには入りません。
勾配のある屋根なら棟までの高さのほうが当然大きくなるので、屋根の頂部までの寸法を書いてしまうと実際より大きな数字を申告することになります。
図面で確かめるときは、屋根伏図ではなく断面図を開いて桁の位置を探すのがいちばん早い方法です
屋根の分は数えないのですね。
てっきり一番高いところまでだと思っていました。
その一番高いところまでは別の言葉で決められています。
まずは断面図で桁の上端を押さえてください。
高さの起点になる地盤面はどこなのか

その下端にあたる地盤面も、同じ条に定義が置かれています。
平らな敷地なら悩むことはありませんが、建物のまわりに段差があると話が変わります。
建築物が地面と接している位置をぐるりと見て、その平均の高さにある水平面が地盤面になります。
さらに、接する位置の高低差が3メートルを超えるときは、高低差3メートル以内ごとに区切って、それぞれの平均で考えることになります。
つまり傾斜地に建つ倉庫では、同じ建物なのに地盤面が複数出てくることがあるということです。
擁壁の上に建っている倉庫や、片側だけ土を盛ってある倉庫は、測る前に敷地の断面を確認しておくと手戻りがありません
うちの倉庫は裏側だけ土が高くなっています。
これも関係してきますか。
関係します。
地面と接する位置の平均で見るので、裏と表の高さの差を測っておいてください。
消防法令のどこで軒の高さが効いてくるのか

出てくるのは、指定数量以上の危険物を屋内で貯蔵する場面です。
消防法にも消防法施行令にも消防法施行規則にも、条文に「軒」という字は出てきません。
消防法第10条第4項が、貯蔵所の位置・構造・設備の技術上の基準は政令で定めると委ねていて、その政令がこの条文です。
原則は軒高6メートル未満で、しかも平家建てで、床は地盤面以上という三つがそろって求められています。
例外として、第2類または第4類の危険物だけを置く倉庫であれば、総務省令の基準に適合することを条件に軒高20メートル未満まで認められます。
高い倉庫がすべて駄目という話ではなく、条件を満たせば道があるという読み方をしてください
うちの倉庫は天井が高いので6メートルは超えていそうです。
それだけで駄目になってしまうのですか。
置く危険物の類によっては道があります。
まず何類をどれだけ置いているかを品名ごとに書き出してください。
実務で見落としやすいのはどこか

そしてもう一つ、数字が境目を越えたときに効いてくる規定があります。
一 貯蔵倉庫は、壁、柱、はり及び床を耐火構造とすること。
二 貯蔵倉庫の窓及び出入口には、特定防火設備を設けること。
三 貯蔵倉庫には、第十三条の二の四に規定する避雷設備を設けること。ただし、周囲の状況によつて安全上支障がない場合においては、この限りでない。
一つ目の取り違えは、建築物の高さとの混同です。建築物の高さは同じ令第2条第1項第6号の別の号で決められていて、屋上にある階段室などは一定の範囲で高さに算入しない扱いがあります。
この緩和は建築物の高さの話であって、軒の高さとは関係がありません。
二つ目の取り違えは階高です。平家建て以外の貯蔵倉庫については、床面から上階の床の下面までの高さを階高と呼び、これを6メートル未満とすることが求められています(同政令第10条第2項第1号)。
そして三つ目が境目です。軒高が6メートル以上の平家建ての屋内貯蔵所は、危険物の規制に関する規則第33条で著しく消火困難な製造所等に位置づけられ、同規則第38条では自動火災報知設備を設けるものとして掲げられています。
つまり6メートルという数字は、建てられるかどうかだけでなく、設備の要求まで動かす線引きになっているということです
つまり高さの数字ひとつで、消火設備の話にまでつながるのですね。
そのとおりです。
だからこそ実測値を持っておくと、あとの話がすべて早く進みます。
明日からなにを確認すればよいのか

その入口が消防法第10条第1項です。
届いていなければ屋内貯蔵所の話にはならず、軒高6メートル未満という基準もかかりません。
品名や指定数量の違う危険物が混ざっているときは、それぞれの数量を指定数量で割った商の和で見ます(同条第2項)。
そのうえで、断面図を開いて桁の上端の高さを読み、地面と接する位置の高低差もあわせて記録しておきます。
この二つがそろえば軒高が出るので、6メートルという線のどちら側にいるかが自分で判断できるようになります。
数字が境目に近いときや、置いている危険物の類がはっきりしないときは、所轄消防署に図面を持って相談するのが確実です
まずは中身の数量と断面図ですね。
今週のうちに両方そろえてみます。
その順番でよいと思います。
数量が先に分かれば、測る手間が要るかどうかもすぐに決まります。
よくある質問
まとめ
どこを測ればよいのかが分かって、ようやく書類の空欄が埋められそうです。
さっそく断面図を出してみます。
その一歩で判断がぐっと楽になります。
読み方に迷う図面があれば㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第2条第1項第6号・第7号・第2項
- 消防法(昭和23年法律第186号)第10条
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第10条・第20条
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第16条の2・第33条・第38条
- e-Gov法令検索(デジタル庁) https://laws.e-gov.go.jp/
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





