屋内貯蔵所に荷役用のひさしをつけたい。トラックを建物の中に入れて積みおろしをしたい。
物流の効率を考えれば当然の要望ですが、保安距離や保有空地はどこから測ることになるのでしょうか。
昭和57年の回答は、この点をまとめて整理しています。
この記事ではひさしや荷役場所を設ける屋内貯蔵所の扱いを消防庁の質疑応答に沿って解説します。
荷役用にひさしを出したいのですが、空地はどこから測るのでしょうか。
先端からです。
回答は保安距離及び保有空地はひさしや荷役場所の先端からとることとしています。
トラックを中に入れて積みおろしするのはどうでしょうか。
認められています。
ただし積みおろし作業中には、自動車の原動機を停止させておくことという条件が付きます。
この記事でまとめて解説します!
- 通路をはさんで貯蔵室を並べる形態は政令第23条を適用してその設置を認めてさしつかえない
- 通路に貨物自動車を入れて積みおろしをする行為は認められるが作業中は自動車の原動機を停止させておく
- 貨物自動車による積みおろし用にひさしや荷役場所を設けることは認められる
- 保安距離及び保有空地はひさしや荷役場所の先端からとる
- 作業用台車設備は認められるが床に段差を設ける方式は適当でない
▼
目次
通路をはさんで貯蔵室を並べる形態は政令第23条で認められる

昭和57年5月11日付け消防危第57号は、福岡県からの照会に答えたものです。
管下消防長から寄せられた疑義をまとめて尋ねたもので、屋内貯蔵所の形態が三つの論点にわたっています。
一つめが、通路を有する屋内貯蔵所です。
通路については床はコンクリート造で危険物の積みおろし専用として使用し、危険物の貯蔵や他の目的に使用することはないとされています。
問題になったのは、貯蔵室と通路の境の壁です。
図面ではa〜a’間とb〜b’間の壁体は設けないとされていました。
壁と出入口についての規定に政令第23条すなわち基準の特例をあてる形で認められました。
特例で通した形です。
通路をはさんで並べる形も、認められる場合があるのですね。
特例の適用です。
壁の仕様を、図面で確かめてください。
通路にトラックを入れる積みおろしは原動機の停止が条件になる

形態が認められるなら、そこで何をしてよいかが次の問いになります。
照会は屋内貯蔵所(通路)に貨物自動車を入れて危険物の積みおろしをする行為は認められるかと尋ねました。
行為そのものは認められましたが、条件が一つ付けられています。
積みおろし作業中には、自動車の原動機を停止させておくことです。
エンジンをかけたままの荷役は認められないということになります。
車を建物の中に入れる以上、着火源を止めておくという考え方です。
エンジンは止めます。
積みおろしのときは、エンジンを止めるのですね。
条件として示されています。
作業の手順書に、明記しておきましょう。
ひさしや荷役場所を設けることは認められている

二つめの論点が、ひさしと荷役場所です。
照会では、奥行3メートルのひさしを設ける案と、前面を開放した荷役場所を設ける案の二つが図で示されました。
回答は(1)及び(2)について お見込みのとおりです。
建築面積については、照会が建築物の水平投影面積か。また、ひさしの場合は、建築基準法施行令第2条第1項第2号に規定する建築面積により算定するのかと尋ねており、これも認められています。
ひさしは設けられます。
ひさしや荷役場所そのものは、設けられるのですね。
認められています。
面積の算定方法も、あわせて確認してください。
保安距離と保有空地はひさしや荷役場所の先端から測る

ここがこの回答のいちばん重要な部分です。
ひさしを出せば建物の輪郭が前に出ますが、距離の起算点はどこになるのかが問われました。
さらになお、ひさしや荷役場所は、屋内貯蔵所の一部分として規制されるので念のため申し添えると続きます。
建築基準法の考え方にならって1メートル後退した線から測る、という案は採られませんでした。
先端そのものが起算点になります。
そして、ひさしや荷役場所は屋内貯蔵所の一部分として規制されると明記されました。
付属物ではなく施設の一部だという整理です。
先端が起算点です。
距離は、先端から測るのですね。
後退した線ではありません。
配置図に、起算点を書き込んでおきましょう。
作業用台車は認められるが床に段差を設ける方式は適当でない

三つめの論点は、貯蔵室の中に置く作業用の台車設備です。
照会された設備は、かなり具体的に説明されています。
図面では、幅2.5メートルの台車スペースが床から0.9メートル掘り下げられた形で示されていました。
両側の貯蔵場所より台車の床面が低くなる構造です。
台車そのものは否定されていません。
問題とされたのは床に段差を設けるという点です。
危険物が漏れた場合、低いところに溜まります。
床を平らに保つという考え方が優先されたことになります。
床は掘り下げません。
台車は認められても、床の段差は難しいのですね。
構造の面で問題とされました。
設備を入れる前に、床の計画から相談してください。
よくある質問
まとめ
- 通路をはさんで貯蔵室を並べ境の壁体を設けない形態は政令第23条を適用して認められた
- 適用されたのは政令第10条第1項第6号及び第8号の規定である
- 通路に貨物自動車を入れて危険物の積みおろしをする行為は認められる
- ただし積みおろし作業中には自動車の原動機を停止させておくこととされている
- 貨物自動車による積みおろし用にひさしや荷役場所を設けることは認められる
- 保安距離及び保有空地はひさしや荷役場所の先端からとる
- ひさしや荷役場所は屋内貯蔵所の一部分として規制される
- 作業用台車設備を設けることはさしつかえないが床に段差を設ける方式は適当でない
ひさしを出した分だけ、空地も前に出るのですね。
すっきりしました。
そのとおりです。
荷役設備をふくめた屋内貯蔵所の計画も、所轄消防署との事前協議からお手伝いします。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第10条・第16条の5 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第10条・第23条 e-Gov法令検索
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第2条 e-Gov法令検索
- 危険物規制事務上の疑義について(昭和57年5月11日付け消防危第57号 消防庁危険物規制課長から福岡県あて回答)
- 危険物規制事務上の疑義について(昭和56年9月25日付け消防危第120号 消防庁危険物規制課長から岡山県あて回答)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の危険物の規制に関する政令の質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




