防火管理者を選んで届出も出したので、消防から言われることはもう無いと考えていませんか。
消防法第8条を最後まで読むと、選任と届出のうしろに二つの命令が置かれています。
そのうち一つは、防火管理者を選んでいる建物にだけ出る命令です。
しかも罰則の条を並べてみると、選ばなかった場合よりも重い罰が用意されています。
うちは防火管理者を選任して届出も済ませています。
これで消防から何か言われることはもう無いですよね。
届出は入口にすぎません。
消防法第8条には、選任のあとに業務の是正を命じる規定が別に置かれています。
業務の是正といっても、何をしていないと言われるのでしょうか。
訓練は毎年やっているつもりです。
物差しは法令と、ご自身が作った消防計画の二つです。
計画に書いたとおりに動いていなければ、そこが指摘されます。
- 消防法第8条は五つの項で組み立てられていて、第3項が防火管理者を定めるべきことの命令、第4項が業務の是正の命令です
- 第4項の命令は防火管理者を選んでいる建物にだけ出ます。選んでいなければ第3項の出番です
- 第4項が見るのは法令の規定と消防計画の二つで、計画に書いたことも判断の物差しになります
- 命令の相手は管理権原者であって、防火管理者本人ではありません
- 第4項の命令に違反した場合の罰は第3項より重く定められています。あわせて公示と標識が付きます
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目次
消防法第8条は防火管理者を選ぶことだけを定めているのか

ところが条文はそこで終わらず、消防長または消防署長が使える命令が二つ続いています。
第1項が選任と業務、第2項が選任と解任の届出、第3項が選任の命令、第4項が業務の是正の命令、そして第5項が第5条第3項および第4項を準用する規定です。
第3項と第4項は向いている先が違います。第3項は防火管理者がいない建物に、第4項は防火管理者がいる建物に出ます。
つまり選任を済ませた瞬間に、条文上の関心は「誰を選んだか」から「その人に何をさせているか」へ移ります。
届出の控えを金庫にしまって終わりにせず、選任後の条文まで一度は目で追ってください。
第3項と第4項が別々に置かれている意味を考えたことがありませんでした。
選任したあとの条文だったんですね。
そのとおりです。
まずはお手元の消防法第8条を第5項まで通して読んでみてください。
どんなときに業務の是正を命じられるのか

何を「行うべき業務」とするかは、第1項が列挙しています。
一つ目は法令の規定です。消防計画の作成と届出、訓練の実施、点検と整備、火気の監督、避難施設の維持管理、収容人員の管理といった第1項が挙げる業務が動いているかを見ます。
二つ目が見落とされがちな消防計画です。条文は「法令の規定又は同項の消防計画に従つて」と、法令と計画を「又は」でつないでいます。
自分で作って届け出た計画は、そこから先は判断の基準そのものになります。訓練を年3回と書いたなら、年2回では計画に従っていないことになります。
書きすぎたと感じる計画があるなら、放置せずに計画そのものを見直して変更の届出を出すのが筋です。
ひな形をそのまま出した計画に、実際にはやっていないことが書いてあるかもしれません。
一度読み返してみます。
それが一番早い確認です。
届け出た計画の写しと、この一年の実施記録を並べて突き合わせてください。
命令は誰に出てなにが起きるのか

そして命令が出ると、第5項によって第5条の規定が準用されます。
防火管理者本人に命令が出るのではなく、その人を選んで業務を行わせる立場にある管理権原者が受け取ります。オーナーや事業主が矢面に立つ形です。
そして第5項が第5条第3項と第4項を準用するので、命令はその建物の中だけの話では終わりません。
消防長または消防署長は公示をしなければならず、その方法として標識を建物やその場所に設置できます。所有者などが設置を拒んだり妨げたりすることは条文で禁じられています。
テナントを募集している建物であれば、この標識が入居希望者の目に入ることになります。
建物の外に札が出るのは正直こたえます。
オーナーに説明できる自信がありません。
だからこそ命令に至る前が勝負です。
命令の相手はオーナーであると先にお伝えしておくと、予算の話が通りやすくなります。
選ばない違反と業務をさせない違反はどちらが重いのか

第8条第3項の命令違反と第4項の命令違反は、それぞれ別の条に置かれています。
防火管理者を定めるべきことの命令に従わない場合は第42条で六月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、業務の是正の命令に従わない場合は第41条で一年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。
参考までに、第8条第2項の選任や解任の届出を怠った場合は第44条第8号で30万円以下の罰金または拘留にとどまります。
さらに命令が履行されないときは、第5条の2第1項が使用の禁止や停止や制限を命じる道を用意しています。
そのうえ第8条の2の3第1項第2号イは、過去三年以内に第8条第3項または第4項の命令がされたことがある場合を、防火対象物点検の特例認定を受けられない事由として挙げています。
選んでいないほうが軽いというのは意外でした。
形だけ整えるのが一番まずいということですね。
条文の並びはそう読めます。
点検の特例認定を目指している建物なら、命令は三年先まで響くと覚えておいてください。
明日からなにを確かめればよいのか

特例認定を目指している建物では、次の条文の書きぶりにも注意が要ります。
まず所轄消防署に届け出た消防計画の写しを机に出し、訓練の実施記録、点検結果の書類、火気使用の届出、収容人員の資料をその横に並べてください。
次に計画に書いてある事項を一つずつ指でたどり、対応する記録があるかを確かめます。記録が無い事項が第4項で指摘される候補です。
そのうえで上の条文を読むと、特例認定の場面では命令を受けた事実だけでなく、命令がされるべき事由が現にある状態も同じ扱いになると書かれています。
命令書が届いていないから大丈夫、とは言えないということです。ずれを見つけたら、記録を作るか計画を変更するかを今週のうちに決めてください。
つまり計画と記録のずれを埋めておけばよいのですね。
今週中に書類を並べてみます。
それで十分です。
ずれが多くて手が回らないときは、計画の見直しから先に着手してください。
よくある質問
まとめ
選任して終わりではないと分かってすっきりしました。
計画と記録の突き合わせから始めます。
その一歩が命令を遠ざけます。
計画の見直しでお困りでしたら㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第5条第3項・第4項、第5条の2第1項、第8条第1項から第5項まで、第8条の2の3第1項第2号、第41条第1項第2号、第42条第1項第1号、第44条第8号
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第1条の2第3項、第3条の2
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第1項
- e-Gov法令検索(デジタル庁) 法令データの原文を確認
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





