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避難器具のまわりはどれだけ空けておくのか|操作面積と降下空間と避難空地の基準を解説

バルコニーの床にある避難器具用ハッチとそのまわりの空いた床

避難器具はあるのに、そのまわりに植木鉢や自転車が置かれている建物があります。
消防法令は器具そのものだけでなく、器具のまわりに空けておく場所まで決めています。
しかもその場所には操作面積や降下空間といった名前が付いていて、寸法まで示されています。
つまり空けておくべき範囲は感覚ではなく数字で決まっているということです。

バルコニーの避難ハッチの上に住人が物を置いてしまいます。
どこまで空けてくださいと言えばよいのでしょうか。

空ける範囲は告示で決まっています。
上だけでなく真下の地面まで含めて見てください。

真下まで見るという発想がありませんでした。

降りた先の避難空地まで含めて一組と考えます。
名前を覚えると見回りの声かけが具体的になります。

この記事の結論
  • 避難器具のまわりに空ける場所は操作面積と降下空間と避難空地と避難通路の4つです
  • この4つは消防法施行規則第27条第2項に基づく告示が定めています
  • 避難はしごの操作面積は0.5平方メートル以上で一辺がそれぞれ0.6メートル以上です
  • 避難器具用ハッチの降下空間は開口部の面積以上を地面まで貫く角柱形です
  • 空ける形は器具ごとに違い緩降機は半径0.5メートルの円柱形になります

避難器具のまわりに空けておく四つの場所を順に示した図解

避難器具のまわりに空ける場所には名前が付いているのか

バルコニーの床と空中の枠と地面の四角と道路へ続く帯を並べた図
呼び名は告示に置かれています。
まず4つの言葉から押さえます。
避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目(平成8年消防庁告示第2号)第二 用語の意義
三 操作面積 避難器具を使用できる状態にするための操作に必要な当該避難器具の取付部付近の床等の面積をいう。
四 降下空間 避難器具を使用できる状態にした場合に、当該避難器具の設置階から地盤面その他の降着面(以下「降着面等」という。)までの当該避難器具の周囲に保有しなければならない避難上必要な空間をいう。
五 避難空地 避難器具の降着面等付近に必要な避難上の空地をいう。
六 避難通路 避難空地から避難上安全な広場、道路等に通ずる避難上有効な通路をいう。
使う前と降りる間と降りた先で場所が分かれています
操作面積は器具を使える状態にするために人が立って作業するの部分です。
降下空間は設置してある階から地面までの間で、器具のまわりに確保しておく空間を指します。
避難空地は降りきった先の地面で、避難通路はそこから広場や道路へ抜ける道すじです。
この4つはひとつづきの経路なので、どこか一か所でも物でふさがると全体が使えなくなると考えてください。

器具のまわりの空間にまで名前が付いているとは知りませんでした。

名前が付いているから寸法も書けるわけです。
まずは避難空地という言葉を覚えてください。

避難はしごの操作面積と降下空間はどれだけ要るのか

壁の窓の手前の床に区切った四角とそこに立って窓へ手をのばす人
寸法は器具の種類ごとに書き分けられています。
基本になるのは避難はしごの欄です。
同告示第三 一(一)(避難はしご)
ニ 操作面積は、〇・五平方メートル以上(当該器具の水平投影面積を除く。)で、かつ、一辺の長さはそれぞれ〇・六メートル以上とし、当該避難はしごの操作に支障のないものであること。
ホ 降下空間は、縦棒の中心線からそれぞれ外方向(縦棒の数が一本のものについては、横桟の端からそれぞれ外方向)に〇・二メートル以上及び器具の前面から奥行〇・六五メートル以上の角柱形の範囲とすること。
ヘ 避難空地は、降下空間の水平投影面積以上の面積とすること。
床の広さと空中の柱の太さの両方が要ります
操作面積は0.5平方メートル以上で、しかも細長い帯では足りず一辺がそれぞれ0.6メートル以上でなければなりません。
はしご自体が床に載っている部分は面積から除くので、実際にはもう少し広く空けておく必要があります。
降下空間は縦棒の中心から左右に0.2メートル以上、器具の前面から奥行0.65メートル以上の角柱形で、地面まで同じ太さで抜けている必要があります。
窓の外に看板や室外機の架台が張り出していないかを、まずこの角柱の断面で当ててみてください。

面積さえあればよいのかと思っていましたが、一辺の長さも見るのですね。

細長い隙間では人が動けないためです。
告示はかつでつないでいるので両方を満たす必要があります。

避難器具用ハッチの下はどこまで空けておくのか

開いた避難器具用ハッチの真下に置かれた荷物と自転車
集合住宅で相談が多いのはこの形です。
床にある器具は真下がそのまま経路になります。
同告示第三 一(二)(避難器具用ハッチに格納した金属製避難はしご)
ホ 降下空間は、避難器具用ハッチの開口部から降着面等まで当該避難器具用ハッチの開口部の面積以上を有する角柱形の範囲とすること。
ヘ 避難空地は、降下空間の水平投影面積以上の面積とし、避難上の安全性が確保されたものとすること。
チ 下ぶたの下端は、避難器具用ハッチの下ぶたが開いた場合に、避難空地の床面上一・八メートル以上の位置であること。
ハッチの真下は地面まで筒抜けにしておきます
降下空間はハッチの開口部と同じ太さの角柱で、上の階から降着面までまっすぐ抜けている必要があります。
そこに自転車や物置を置けば、その階だけでなく上の階の住人の経路まで断つことになります。
下ぶたの下端が避難空地の床面上1.8メートル以上という基準もあり、ふたを開けたときに下の階の人の頭に当たらない高さを求めています。
掲示で注意するときは物を置かないでくださいではなく、ハッチの真下は上の階の人が降りてくる場所ですと書くほうが伝わります。

つまり自分の階だけの問題ではないということですね。

そのとおりです。
最上階から一階まで一本の縦の道だと説明してください。

緩降機と救助袋では空ける形が違うのか

ロープのまわりの円柱形の空間と斜めに張った袋の下の空地を並べた二枚の壁
同じ寸法を当てはめると外れます。
器具の降り方によって形そのものが変わります。
同告示第三 二(三)(緩降機)
緩降機は、使用の際、壁面からロープの中心までの距離が〇・一五メートル以上〇・三メートル以下となるように設けるとともに、降下空間は、当該緩降機を中心とした半径〇・五メートルの円柱形に包含される範囲以上確保されていること。(略)
同告示第三 三(一)(斜降式の救助袋)
ニ 避難空地は、展張した袋本体の下端から前方二・五メートル及び当該救助袋の中心線から左右それぞれ一メートル以上の幅とすること。
丸い柱と斜めの帯という違いになります
緩降機はロープが揺れながら降りるので、器具を中心にした半径0.5メートルの円柱形で空間を押さえます。
斜降式の救助袋は斜めに張り出すので、降下空間も下方と側面に向かって上部25度と下部35度という角度で示されています。
着地する場所も広く、袋の下端から前方2.5メートルと左右それぞれ1メートル以上の幅が避難空地になります。
自分の建物に付いている器具の種類を先に確かめないと、空けるべき範囲を狭く見積もることになります。

救助袋の着地点にいつも駐車場のコーンを積んでいます。
これは動かしたほうがよいでしょうか。

避難空地に当たるなら動かしてください。
置き場所を先に決めておくと戻る場所ができて続きます。

明日からなにを確かめればよいのか

点検票を持つ人と物のない地面と道路へ続く通路と頭上の架空電線
見るのは器具ではなくまわりです。
上を見上げる項目も告示に入っています。
同告示第三 一(一)(避難はしご)
ト 避難空地には、当該避難空地の最大幅員(一メートルを超えるものにあつては、一メートルとすること。)以上で、かつ、避難上の安全性が確保されている避難通路が設けられていること。
ヌ 降下空間と架空電線との間隔は一・二メートル以上とするとともに、避難はしごの上端と架空電線との間隔は二メートル以上とすること。
足元と頭上を順に見ていきます
はじめに器具の種類を管理台帳で確かめ、避難はしごなのか緩降機なのか救助袋なのかを書き出してください。
つぎに操作面積と降下空間と避難空地に物が入っていないかを、器具ごとの形に当てはめて見ます。
そのうえで避難空地から道路へ抜ける避難通路が確保されているかと、頭上の架空電線との間隔を確かめます。
写真を撮って日付とともに残しておけば、消防用設備等の点検のときにも立入検査のときにも同じ資料を出せます。

まずは管理台帳で器具の種類を書き出すところからやってみます。

そこまで出せば見回りの項目が決まります。
判断に迷う箇所は所轄消防署に見てもらってください。

よくある質問

Q操作面積の0.5平方メートルにはしごが載っている部分は含めてよいですか?
A告示第三 一(一)ニは当該器具の水平投影面積を除くと書いているので含められません。器具が床を占めているぶんだけ、実際に空けておく床は広くなります。
Q避難空地に置いた物は普段どかしておけばよいのではないですか?
A告示は避難空地を必要な避難上の空地と定義しており、火災のときにどかす前提の書き方はしていません。物を置く場所は避難空地の外に決めてください。
Q避難通路の幅は何メートルあればよいのですか?
A避難はしごの場合は避難空地の最大幅員以上とされ、その幅員が1メートルを超えるときは1メートルとされています。避難橋のように有効な経路で広場や道路に通じていることだけを求めている器具もあります。
Qこの告示は古い建物の避難器具にも適用されますか?
A告示は平成9年4月1日から施行され、その時点で現に存する防火対象物の避難器具のうち告示に適合しないものについてはなお従前の例によるとされています。個別の建物がどちらに当たるかは所轄消防署にご確認ください。

まとめ

空ける場所は操作面積と降下空間と避難空地と避難通路の4つです
寸法は消防法施行規則第27条第2項に基づく告示にあります
避難はしごの操作面積は0.5平方メートル以上で一辺0.6メートル以上です
避難器具用ハッチの真下は地面まで角柱形で空けます
緩降機は半径0.5メートルの円柱形で救助袋は斜めの範囲になります
降下空間と架空電線との間隔も1.2メートル以上と決まっています
見回りでは器具ではなくまわりの空きを見てください

器具のまわりに四つの場所があると分かって説明しやすくなりました。
今週の見回りから項目に入れます。

器具の種類ごとにが違うことだけ忘れないでください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法施行令第25条(避難器具に関する基準)(昭和36年政令第37号)
  • 消防法施行規則第27条(避難器具に関する基準の細目)(昭和36年自治省令第6号)
  • 避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目(平成8年4月16日消防庁告示第2号・最終改正 平成18年5月19日消防庁告示第16号)
  • 避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目を定める告示の施行について(平成8年4月16日 消防予第66号 消防庁予防課長)
  • 消防法施行規則の一部を改正する省令(平成8年自治省令第2号)附則第6条

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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