テナントビルの1階に小さな飲食店が1軒だけ入っている、という建物は珍しくありません。
飲食店が入った時点で、その建物は令別表第一(16)項イの複合用途防火対象物になります。
ただし消防法施行規則は、特定用途の部分がごくわずかな建物のために小規模特定用途複合防火対象物という枠を置いています。
延べ面積の10分の1以下でしかも300平方メートル未満なら一部の設備の義務が軽くなります。
うちのビルは事務所ばかりで、1階に小さなラーメン屋が入っているだけです。
それでも飲食店があるからには、設備を全部そろえないといけないのでしょうか。
面積しだいで変わります。
特定用途の部分が延べ面積の10分の1以下で、しかも300平方メートル未満なら別の扱いになります。
面積で線が引かれているのですね。
その線を超えていない建物には、名前が付いているのでしょうか。
小規模特定用途複合防火対象物といいます。
消防法施行規則第13条第1項第2号が、その定義を括弧書きで置いています。
- 小規模特定用途複合防火対象物は消防法施行規則第13条第1項第2号が定義しています
- 対象は令別表第一(16)項イの建物だけで、特定用途の部分の床面積を合計します
- 延べ面積の10分の1以下でしかも300平方メートル未満という二つを両方満たすことが条件です
- 当てはまるとスプリンクラー設備や誘導灯や避難器具の義務が軽くなります
- 自動火災報知設備の義務や防火管理の義務は軽くなりません
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目次
小規模特定用途複合防火対象物とはどんな建物を指すのか

出てくるのは消防法施行令ではなく、消防法施行規則の括弧書きです。
令第12条第1項第3号は地階を除く階数が11以上の建物にスプリンクラー設備を義務づけていますが、そこから外れる部分の決め方を総務省令に委ねています。
その受け皿が規則第13条第1項で、第1号と第1号の2と第2号の三つが並んでいます。
このうち第2号だけが、括弧書きの中で小規模特定用途複合防火対象物という言葉を定義しています。
名前はここで初めて出てきて、以後は規則のほかの条でも同じ意味で使われます。
自分の建物がこの言葉に当たるかどうかは、まず用途と床面積を書き出すところから始まります。
定義が令ではなく規則の括弧書きにあるというのは意外でした。
消防法令ではよくある置き方です。
言葉の定義を探すときは、その言葉が最初に出てくる条を追ってください。
どこまで小さければ小規模特定用途複合防火対象物になるのか

しかも数える範囲に細かい前提が付いています。
一つ目は割合で、特定用途の部分の床面積の合計が延べ面積の10分の1以下であることです。
二つ目は実数で、その合計が300平方メートル未満であることです。
大きなビルなら10分の1に収まっても300平方メートルを超えますし、小さなビルなら300平方メートル未満でも10分の1を超えることがあります。
数えるのは(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イの用途に供される部分で、事務所や倉庫や駐車場は含みません。
まず用途ごとの床面積を拾い、合計と延べ面積を並べて割り算をしてみてください。
飲食店の客席だけでなく、厨房や下足室も特定用途の面積に入るのでしょうか。
その飲食店として使っている部分は数えます。
共用の廊下や階段の扱いは判断が分かれるので、所轄で確かめておくと確実です。
該当すると消防用設備等の義務はどう変わるのか

規則がこの言葉を使っている条を、一つずつ拾っていくしかありません。
一つ目はスプリンクラー設備で、地階を除く階数が11以上の建物でも10階以下の階の部分が対象から外れます。
二つ目は誘導灯で、規則第28条の2第1項第5号と第2項第4号により、地階と無窓階と11階以上を除いた部分には避難口誘導灯も通路誘導灯も要りません。
三つ目は避難器具で、規則第26条第6項が下階の用途と階段の数と収容人員の条件を満たすときは設置しないことができるとしています。
四つ目は屋内消火栓設備の非常電源で、規則第12条第1項第4号が延べ面積1,000平方メートル以上の特定防火対象物から小規模特定用途複合防火対象物を除いています。
どれも黙って外れるものではないので、点検票と図面に根拠の号を書き添えておいてください。
誘導灯が要らなくなる建物があるというのは驚きました。
ただし地階と無窓階と11階以上は外れません。
その三つが自分の建物にあるかどうかを先に見てください。
小規模でも軽くならないのはどこか

けれど動かない義務のほうが、実務では大きく効いてきます。
令第21条第1項第3号は(16)項イの建物に延べ面積300平方メートル以上で自動火災報知設備を義務づけていて、ここに小規模特定用途複合防火対象物を除くという括弧書きはありません。
建物が(16)項イである以上は特定防火対象物のままなので、防火管理者の選任も収容人員30人以上で必要になります。
消防用設備等の点検結果の報告も、規則第31条の6第3項第1号により1年に1回のままです。
さらに規則第13条第1項第2号のイからハまでは、病院や福祉施設の用途に供される部分をスプリンクラーの免除から外しています。
軽くなる設備と軽くならない義務を一枚の表にまとめて、テナントが入れ替わるたびに見直してください。
設備は減っても、防火管理の義務はそのままなのですね。
建物の用途区分そのものは変わりません。
点検結果の報告も1年に1回のままです。
明日からなにを確かめればよいのか

根拠になる数字を残しておくことが、いちばんの近道です。
一つ目は用途ごとの床面積の一覧を作ることで、テナントの屋号ではなく令別表第一の項で分けます。
二つ目は割り算で、特定用途の合計を延べ面積で割り、10分の1以下に収まっているかを見ます。
三つ目は合計が300平方メートル未満かどうかの確認で、二つとも満たしたときだけ枠に入ります。
四つ目は入れ替わりの管理で、テナントが増えたり広がったりした日に必ず数え直します。
判定が変わりそうなときは、図面と面積表を持って所轄の消防署に相談してください。
テナントが1つ増えるだけで、枠から外れることもあるのですね。
面積で決まるので十分にありえます。
賃貸借の契約前に数え直しておくと安全です。
よくある質問
まとめ
用途ごとの面積表を作って、10分の1と300平方メートルの両方を確かめます。
数字が残っていれば説明できます。
判定に迷う建物があれば㈱防災屋でもご相談を承っております。
参考・出典
- 消防法施行令第12条第1項第3号(スプリンクラー設備を設置する防火対象物)
- 消防法施行令第21条第1項第3号(自動火災報知設備を設置する防火対象物)
- 消防法施行令第25条第1項(避難器具を設置する防火対象物の階)
- 消防法施行令第26条第1項(誘導灯及び誘導標識の設置とただし書)
- 消防法施行規則第12条第1項第4号(屋内消火栓設備の非常電源)
- 消防法施行規則第13条第1項第2号(小規模特定用途複合防火対象物の定義)
- 消防法施行規則第23条第4項第1号ヘ(感知器を設けなくてよい部分)
- 消防法施行規則第26条第6項(避難器具の設置個数の減免)
- 消防法施行規則第28条の2第1項第5号及び第2項第4号(誘導灯を設置することを要しない部分)
- 消防法施行規則第31条の6第3項(消防用設備等の点検結果の報告期間)
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





