ラック式倉庫の天井を見上げると スプリンクラーヘッドがずらりと並んでいます。
ところが図面をよく見ると 棚の中にもヘッドが描かれていることがあります。
高い棚に荷を積み上げる倉庫では 天井から降った水が下の段まで届かないからです。
消防法施行規則が定めているのは収納物で分けた等級ごとにヘッドと板を入れるという決まりです。
自動倉庫の図面に 棚の段ごとにスプリンクラーヘッドが描いてありました。
天井にもあるのに二重に付けるものなのですか。
二重ではなく そういう決まりになっています。
ラック式倉庫は棚の中にもヘッドを設けます。
棚の中の数はどうやって決まるのでしょうか。
荷物の量で変わったりするのでしょうか。
よいところに気づかれました。
置いている物と包んでいる材料で決まる等級が物差しになります。
- ラック式倉庫は天井の高さと延べ面積と搬送装置の三つがそろって対象になります
- 使えるヘッドは有効散水半径が2.3でヘッドの呼びが20の標準型ヘッドだけです
- 収納物と収納容器や梱包材の組み合わせで等級がⅠからⅣに分かれます
- 棚を設けた部分には水平距離と高さの両方でヘッドを設けます
- 水平遮へい板は難燃材料で等級ごとの高さごとに設けます
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目次
ラック式倉庫のスプリンクラー設備はなにが違うのか

ところがラック式倉庫だけは 別の号で建物ごとに名指しされています。
別表第一(十四)項に掲げる防火対象物のうち、天井(天井のない場合にあつては、屋根の下面。次項において同じ。)の高さが十メートルを超え、かつ、延べ面積が七百平方メートル以上のラック式倉庫(棚又はこれに類するものを設け、昇降機により収納物の搬送を行う装置を備えた倉庫をいう。)
天井の高さが10メートルを超え かつ延べ面積が700平方メートル以上という二つの条件を同時に満たすことがまず必要です。
そのうえで棚又はこれに類するものを設け 昇降機により収納物を搬送する装置を備えていることが 条文の括弧書きで定義に組み込まれています。
人がフォークリフトで出し入れするだけの倉庫は 天井が高くてもここには当たりません。
自社の倉庫が該当するかどうかは 天井の高さと延べ面積を図面で拾い 搬送装置の有無を現場で確かめるところから始まります。
うちは天井が高いだけで 荷物は人が出し入れしています。
それでもラック式倉庫になるのでしょうか。
搬送装置が無ければこの号には当たりません。
まずは図面で天井の高さと延べ面積を押さえておきましょう。
収納物で決まる等級とはなんなのか

建物の大きさではなく 何をどう包んで置いているかで決まります。
前項に規定するラック式倉庫は、次項及び第十三条の六第一項第一号において、次の表の上欄に掲げる収納物等の種類に応じ、同表の下欄に定める等級に区分する。
一つは収納物そのもの もう一つは収納容器や梱包材です。
収納物の側は 指定可燃物を危険物の規制に関する政令別表第四の数量の1,000倍以上置いているか 100倍以上か その他かで三段に分かれます。
そこへ 容器や梱包材に高熱量溶融性物品が10倍以上あるかどうかが重なり 等級Ⅰから等級Ⅳまでが決まります。
高熱量溶融性物品とは 指定可燃物のうち燃焼熱量が34キロジュール毎グラム以上で 炎が触れると溶ける性状のものを指します。
| 収納物 | 収納容器 梱包材等 | 等級 |
|---|---|---|
| 指定可燃物を1,000倍以上(高熱量溶融性物品は300倍以上) | 高熱量溶融性物品を10倍以上 | Ⅰ |
| 指定可燃物を1,000倍以上(高熱量溶融性物品は300倍以上) | その他のもの | Ⅱ |
| 指定可燃物を100倍以上(高熱量溶融性物品は30倍以上) | 高熱量溶融性物品を10倍以上 | Ⅱ |
| 指定可燃物を100倍以上(高熱量溶融性物品は30倍以上) | その他のもの | Ⅲ |
| その他のもの | 高熱量溶融性物品を10倍以上 | Ⅲ |
| その他のもの | その他のもの | Ⅳ |
中身だけでなく 包んでいる材料まで見るのですね。
段ボールか金属かで変わるということでしょうか。
条文が見ているのは高熱量溶融性物品にあたるかどうかです。
包材の樹脂の種類まで含めて棚の列ごとに書き出してみてください。
棚の中のヘッドはどこにいくつ設けるのか

天井のヘッドだけでは 上の段の荷が水をさえぎってしまうからです。
スプリンクラーヘッドは、棚又はこれに類するもの(以下この項において「ラック等」という。)を設けた部分にあつては、次に定めるところにより設けること。
イ ラック等を設けた部分の各部分から一のスプリンクラーヘッドまでの水平距離が二・五メートル以下となるように設けること。
ロ 次の表の上欄に掲げるラック式倉庫の等級に応じ、それぞれ同表の下欄に定める高さにつき一個以上設けること。
横は水平距離2.5メートル以下で 棚を設けた部分のどこからでもこの距離の中にヘッドがあるようにします。
縦は等級で分かれ 等級ⅠとⅡとⅢは4メートルにつき1個以上 等級Ⅳは6メートルにつき1個以上です。
棚を設けていない部分は 天井か小屋裏に水平距離2.1メートル以下で設けますが 階段や浴室や便所 通信機器室や電子計算機器室 発電機や変圧器などの電気設備がある場所は設けないことができます。
さらに 棚の中のヘッドには他のヘッドから散水された水がかかるのを防ぐ措置を講ずることも 同じ項に置かれています。
棚を1段増やしただけでも ヘッドを足さないといけないのですね。
設備の話だと思って現場に任せきりでした。
棚の高さが変われば基準もそのまま動きます。
棚の増設を決めた時点で設備業者に相談してください。
水平遮へい板はどんなときに設けるのか

炎が棚の中を上へ抜けていくのを止めるためのものです。
ラック等を設けた部分には、次に定めるところにより水平遮へい板を設けること。ただし、ラック式倉庫の等級がⅢ又はⅣであり、かつ、消防庁長官が定めるところによりスプリンクラーヘッドが設けられている場合にあつては、この限りでない。
イ 材質は、難燃材料とすること。
ロ ラック等との間に延焼防止上支障となるすき間を生じないように設けること。
ハ 次の表の上欄に掲げるラック式倉庫の等級に応じ、それぞれ同表の下欄に定める高さごとに設けること。この場合において、天井又は小屋裏は、水平遮へい板とみなす。
水平遮へい板とは 棚を設けた部分の内部を水平方向にさえぎる板のことで 材質は難燃材料と決められています。
ラックとの間に延焼防止上支障となるすき間をつくらないことも要件で 天井や小屋裏は水平遮へい板とみなされます。
等級ⅢかⅣで消防庁長官が定めるところによりヘッドが設けられているときは 板を省くことができます。
なお水源の水量を出すときは 等級ⅢかⅣで水平遮へい板があるものは1個あたり2.28立方メートル それ以外のラック式倉庫は3.42立方メートルを掛けるので 板の有無は水槽の大きさにも効いてきます。
| 等級 | 水平遮へい板を設ける高さ |
|---|---|
| Ⅰ | 4メートル以内ごと |
| Ⅱ及びⅢ | 8メートル以内ごと |
| Ⅳ | 12メートル以内ごと |
つまり板を入れておけば 水槽も小さくて済むということですね。
棚の付属品くらいに思っていました。
消火の効きにも水源の量にも関わる部品です。
板が外されたまま戻っていないかを棚の点検のときに見てください。
明日からなにを確かめればよいのか

建物を触っていなくても 中身の入れ替えだけで基準からずれることがあります。
令第十二条第二項第二号ハの総務省令で定める種別のスプリンクラーヘッドのうち同条第一項第五号に掲げる防火対象物(次項及び第五項、第十三条の六第一項及び第二項並びに第十四条第一項において「ラック式倉庫」という。)に設けるものは、閉鎖型スプリンクラーヘッドのうち標準型ヘッド(有効散水半径が二・三であつて、閉鎖型スプリンクラーヘッドの技術上の規格を定める省令第三条第二項のヘッドの呼びが二十のものに限る。)とする。
はじめにヘッドの種別で ラック式倉庫に使えるのは有効散水半径が2.3で呼びが20の標準型ヘッドだけなので 交換のときに別の呼びを付けないよう発注書を見ます。
次に等級で 置いている物と包んでいる材料を棚の列ごとに書き出し 危険物の規制に関する政令別表第四の数量の何倍かを出せば表に当てはめられます。
最後に水平遮へい板で 増設した段だけ板が入っていないという状態になっていないかを見ます。
この三つを棚の配置図に書き込んでおけば 収納物を入れ替えるたびに同じ手順で確かめ直せます。
棚の配置図に書き込んでおくというのは分かりやすいです。
次の棚卸しのときにまとめてやってみます。
棚卸しと合わせるのは良い進め方です。
写真を残しておくと次の点検のときに比べられます。
よくある質問
まとめ
棚の中のヘッドが等級で決まっていることがよく分かりました。
さっそく配置図と収納物の一覧を並べて確かめてみます。
その突き合わせができれば等級の判断はぐっと楽になります。
読み方に迷ったときは㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第12条(スプリンクラー設備に関する基準)
- 消防法施行規則第13条の5(ラック式倉庫等に設けるスプリンクラーヘッド等)
- 消防法施行規則第13条の6(スプリンクラー設備の水源の水量等)
- 閉鎖型スプリンクラーヘッドの技術上の規格を定める省令(昭和40年自治省令第2号)
- 危険物の規制に関する政令別表第四
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





