劇場や映画館の客席は、上映や公演のあいだ照明を落とします。
その暗い客席で足元だけをぼんやりと照らしているのが客席誘導灯です。
避難口誘導灯や通路誘導灯とは役目が違い、行き先を示すのではなく床面の明るさそのものを確保する灯火です。
そして消防法令には客席誘導灯を省略できる定めが置かれていません。
ホールの客席の足元に小さな灯りが並んでいます。
あれも消防の設備なのでしょうか。
消防用設備等のひとつで客席誘導灯といいます。
誘導灯の仲間ですが求められているのは明るさです。
避難口の誘導灯には省略できる場合があると聞きました。
客席のほうも同じように減らせますか。
そこが分かれ目です。
省略できる部分を定めた省令に客席誘導灯は挙げられていません。
- 誘導灯は避難口誘導灯と通路誘導灯と客席誘導灯の三つに分かれる
- 客席誘導灯だけは避難口や方向を示す灯火ではなく客席の明るさを確保する灯火である
- 設置の対象は令別表第一(1)項と、(16)項イ及び(16の2)項のうち(1)項の用途に供される部分である
- 客席内の通路の床面における水平面で0.2ルクス以上となるように設ける
- 避難口誘導灯や通路誘導灯には省略できる部分の定めがあるが客席誘導灯にはその定めが無い
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目次
客席誘導灯はほかの誘導灯となにが違うのか

同じ誘導灯という名前でも、条文は種類ごとに求めることを書き分けています。
二 通路誘導灯は、避難の方向を明示した緑色の灯火とし、防火対象物又はその部分の廊下、階段、通路その他避難上の設備がある場所に、避難上有効なものとなるように設けること。ただし、階段に設けるものにあつては、避難の方向を明示したものとすることを要しない。
避難口誘導灯は避難口である旨を、通路誘導灯は避難の方向を、それぞれ緑色の灯火で表示するものと書かれています。
これに対して客席誘導灯には、緑色という色の指定も、なにかを表示するという指定もありません。
求められているのは客席の照度だけで、暗くした客席でも人が足元を見て動けるようにするための灯火だからです。
自分のホールで足元の灯りを「小さな誘導灯」と呼んでいるなら、まず種類の違いから台帳の記載を見直してください。
うちでは足元の灯りを通路誘導灯として数えていました。
それでもよいのでしょうか。
条文の上では別の種類です。
点検の記録も種類ごとに分けて残しておくほうが確かです。
どの建物のどの部分に客席誘導灯が要るのか

令別表第一のどの項に当たるかで、要否がそのまま決まります。
三 客席誘導灯 別表第一(一)項に掲げる防火対象物並びに同表(十六)項イ及び(十六の二)項に掲げる防火対象物の部分で、同表(一)項に掲げる防火対象物の用途に供されるもの
令別表第一の(1)項イは劇場と映画館と演芸場と観覧場で、(1)項ロは公会堂と集会場です。
テナントとして入っている場合も、(16)項イの複合用途防火対象物や(16の2)項の地下街のうち(1)項の用途に供される部分であれば対象になります。
一方で避難口誘導灯と通路誘導灯の号には(16の3)項が並んでいるのに、客席誘導灯の号には(16の3)項が入っていません。
まずは消防用設備等の点検票で、自分の建物や区画がどの項として整理されているかを確かめてください。
ビルの一角を借りて小さなホールを開いています。
建物全体が事務所でも対象になりますか。
建物が(16)項イになっていれば、その(1)項の部分が対象です。
用途の判定から所轄消防署に相談してください。
客席の明るさはどこをどれだけ測るのか

測って出た明るさが基準を満たしているかどうかで判断します。
消防法施行規則第28条 令第二十六条第二項第三号の客席誘導灯の客席における照度は、客席内の通路の床面における水平面について計るものとする。
令が定める数値は0.2ルクス以上で、規則が測る場所を客席内の通路の床面における水平面と決めています。
座席の上や壁面ではなく、人が実際に歩く通路の床が基準の位置だという書き方です。
条文は灯具の間隔を定めていないので、同じ台数でも通路の形が変われば結果は変わります。
座席の配置や通路の幅を変えたときは、模様替えのあとに測り直しをして記録に残してください。
つまり灯具の数ではなく床の明るさで見られるのですね。
座席を入れ替えた年は測り直しが要りそうです。
そのとおりです。
通路の位置が動いたら測定点も動くと考えてください。
客席誘導灯は省略することができるのか

その省令が消防法施行規則第28条の2で、預かった内容は項ごとに書き分けられています。
2 令第二十六条第一項ただし書の総務省令で定めるものは、通路誘導灯については、次の各号に定める部分とする。(略)
3 令第二十六条第一項ただし書の総務省令で定めるものは、誘導標識については、次の各号に定める部分とする。(略)
第28条の2が受けているのは避難口誘導灯と通路誘導灯と誘導標識の三つで、客席誘導灯についての項がありません。
そのため令第26条第1項ただし書を根拠にして客席誘導灯を省くことはできず、(1)項に当たる客席なら設けることになります。
これとは別に、消防法施行令第32条は消防長又は消防署長が認める場合の特例を定めていますが、個別の判断であって条文上の一般的な免除ではありません。
見通しがよいから要らないだろうと自分で判断せず、外したい理由があるなら所轄消防署に持ち込んでください。
客席の避難口がよく見えていれば足元は要らないと思っていました。
それは通らない考え方なのですね。
見通しの話は避難口誘導灯や誘導標識のほうの定めです。
客席の足元は別の物差しで見ます。
明日からなにを確かめればよいのか

条文が求めていることは少ないので、確かめる項目も絞り込めます。
消防法施行規則第28条の3第4項第10号 非常電源は、直交変換装置を有しない蓄電池設備によるものとし、その容量を誘導灯を有効に二十分間(略)作動できる容量(略)以上とするほか、(略)の規定の例により設けること。
一つめは用途で、自分の建物や区画が令別表第一の(1)項として整理されているかを点検票で見ます。
二つめは明るさで、客席内の通路の床面における水平面を測り0.2ルクス以上を満たしているかを記録します。
三つめは非常電源で、誘導灯には非常電源を附置することとされ、規則は二十分間を基本の容量としています。
座席の入替えや客席の模様替えを予定しているなら、工事の前に測定の記録を残しておくと前後の比較ができます。
用途と明るさと非常電源の順に見ればよいのですね。
その三つなら今週のうちに回れます。
その順番で足ります。
測った値を残しておけば立入検査のときにそのまま示せます。
よくある質問
まとめ
今週のうちに客席の通路で照度を測ってみます。
そこまでできていれば安心です。
迷うところがあれば㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第26条・第32条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第28条・第28条の2・第28条の3
- 消防法施行令別表第一
- e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





