避難器具の個数は収容人員から計算しますが、そこで終わりではありません。
建物に避難階段や特別避難階段が設けられていると、計算した数から本数ぶんを引くことができます。
ただし引ける階段には条件があり、外に付いた階段と建物の中の階段とでは扱いも違います。
この記事では消防法施行規則第26条第2項が定める引き算の条件を条文から順に読み解きます。
うちのビルには外階段が付いているのですが、避難器具の数は減らせるものなのでしょうか。
消防署に聞く前に、条文でどう決まっているのかを知っておきたいです。
消防法施行規則第26条第2項に、避難階段の本数を引いてよいと書かれています。
ただし引ける階段には建築基準法施行令の側の条件が付いています。
建築基準法まで出てくるのですね。
どの階段なら数に入るのか、そこが知りたいです。
順番に見ていきましょう。
まず個数を減らしてよいと決めている条文から確かめます。
- 個数を減らしてよいと決めているのは消防法施行令第25条第2項第一号のただし書きで受け皿は総務省令
- 避難階段又は特別避難階段があると計算した数からその本数を引くことができます
- 引けるのは建築基準法施行令第120条から第122条までにより必要とされる直通階段を避難階段等としたものだけです
- 屋内に設ける避難階段は消防庁長官が定める部分を有するものに限られます
- 引いた数が一に満たないときはその階に避難器具を設置しないことができます
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目次
避難器具の個数を減らしてよいと決めているのはどこか

減らせるかどうかの話は、まずここから始まります。
令第25条第2項第一号の本文は、収容人員に応じて必要な避難器具の個数を計算する規定です。
その末尾のただし書きが、避難上支障がないと認められるときは総務省令で定めるところにより個数を減らし、又は避難器具を設置しないことができるとしています。
この総務省令が消防法施行規則で、受け皿になっているのが第26条です。
第26条は七つの項からなり、そのうち第2項が避難階段による引き算を定めています。
自分の建物で減らせるかを調べるときは、このただし書きを起点にして規則第26条のどの項に当たるかを探してください。
令にただし書きがあって、細かいところは規則に降りている形なのですね。
そのとおりです。
減らす話が出たら規則第26条のどの項かを先に決めてください。
避難階段があると何個ぶん引けるのか

条文はどこから何を引くのかを一文で書き切っています。
条文は、算出して得た数から避難階段又は特別避難階段の数を引いた数以上とすることができるとしています。
引くのは本数そのもので、数に何かを乗じるとは書かれていません。
同じ第26条でも、第3項の渡り廊下は渡り廊下の数に二を乗じた数を引き、第4項の避難橋も避難橋の数に二を乗じた数を引く書き方になっています。
引く相手の数は、令第25条第2項第一号本文で計算した数のほか、規則第26条第1項で読み替えて計算した数でもかまいません。
そして引いた数が一に満たないときは、その階に避難器具を設置しないことができます。
渡り廊下は二倍で階段はそのままなのですね。
同じ緩和でも効き方が違うとは思いませんでした。
項ごとに書き方が違うところです。
まずは自分の階の階段が何本あるかを数えてみてください。
引き算の数に入る階段はどれか

そこで求められている階段かどうかが最初の分かれ目です。
規則第26条第2項は、引ける階段を建築基準法施行令第120条、第121条及び第122条の規定により必要とされる直通階段に限っています。
第121条第1項は、避難階以外の階が各号のいずれかに該当するときに二以上の直通階段を設けなければならないとしている規定です。
ホテルや旅館なら宿泊室の床面積の合計が百平方メートルを超える階、病院や診療所なら病室の床面積の合計が五十平方メートルを超える階が並んでいます。
条文が必要とされる直通階段と書いている以上、そこから外れる階段は第2項の文言には乗りません。
自分の建物の階段がどの条文で求められたものかは、確認申請の図面と検査済証で確かめたうえで所轄消防署にご確認ください。
つまり建築確認の側で要るとされた階段が前提なのですね。
条文はそう書いています。
確認申請の図面を一度出してきてください。
屋内の避難階段も同じように引けるのか

その差を読み落とすと本数の数え方を間違えます。
規則第26条第2項の括弧書きは、避難階段のうち屋外に設けるもの及び屋内に設けるもので消防庁長官が定める部分を有するものに限るとしています。
屋外に設ける避難階段にはそれ以上の限定が付いていませんが、屋内に設けるものにはこの条件が重ねてかかります。
建築基準法施行令第123条第2項の屋外避難階段は、開口部から二メートル以上離すこと、屋内から通じる出入口に防火設備を設けること、耐火構造として地上まで直通することの三つで構成されています。
同条第1項の屋内避難階段には七つの号があり、階段室を耐火構造の壁で囲むことなどが並んでいます。
なお括弧書きは避難階段に付いており、特別避難階段の側には付いていません。
屋内の階段を数に入れられるかどうかは長官の定めに当てはまるかで決まりますので、所轄消防署にご確認ください。
括弧の中に条件がもう一段入っていたのですね。
読み飛ばすところでした。
括弧書きが本体より効くことはよくあります。
屋内の階段を数えるときは必ず所轄に当ててください。
明日からなにを確かめればよいのか

出発点になるのは令第25条第1項の柱書です。
まず令第25条第1項の柱書で、避難階と十一階以上の階が対象から外れることを押さえます。
次にその階の用途と収容人員から、令第25条第2項第一号本文で必要な個数を計算します。
そのうえで、その階に避難階段又は特別避難階段としたものが設けられているかを図面で数えます。
数えた本数を引き、結果が一に満たないときは避難器具を置かなくてよい階になります。
引いた根拠は点検票にも効いてきますので、図面と条項を控えとして残しておいてください。
階を絞ってから計算して最後に引く、という順番ですね。
その順番で構いません。
数えた図面はそのまま点検の記録に添えておいてください。
よくある質問
まとめ
引ける階段の条件まで見ておけば、消防署との話も早く済みそうです。
さっそく確認申請の図面を出して数えてみます。
数えた根拠を残しておくと次の点検が楽になります。
避難器具の個数の見直しは㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第25条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第26条
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第121条
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第123条
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





