立入検査で廊下の壁に付いた赤い押しボタンの前に立たれると、ここも見るのかと身構えてしまいます。
この押しボタンは発信機といい、火災を見つけた人が自分の手でベルを鳴らすための機器です。
どこに何メートルの間隔で付けるか、どの高さに付けるか、そばのランプがどこまで見えるかまで消防法施行規則が数字で決めています。
指摘されるのは機器そのものではなく付いている場所であることがほとんどです。
壁の赤い押しボタンは前からあるものです。
あれにも決まりがあるのでしょうか。
あれは発信機という機器です。
置く間隔も高さも省令が数字で決めています。
押しボタンの上の赤いランプも同じ設備なのですか。
切れていても困らないように見えます。
あれは表示灯といって発信機の場所を知らせる灯りです。
どこまで見えればよいかまで省令に書いてあります。
- 壁の赤い押しボタンは発信機といい置く場所も高さも省令が決めている
- 各階ごとにその階の各部分から一の発信機までの歩行距離が50メートル以下になるように配置する
- 取付けの高さは床面から0.8メートル以上1.5メートル以下と定められている
- 発信機の直近には表示灯を設け10メートル離れたところから点灯を識別できるものにする
- ベルなどの地区音響装置は中心から1メートルで90デシベル以上の音圧が要る
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目次
壁にある赤い押しボタンはなんのための装置なのか

これに対して壁の押しボタンは、火を見つけた人が自分の手で建物全体に知らせるための機器です。
条文は発信機を建物のどこかに付けろと書いているのではなく、各階ごとにその階の各部分から一の発信機までの歩行距離を50メートル以下にせよと求めています。
歩行距離なので、まっすぐの見通し距離ではなく実際に歩いていく道のりで測ります。
壁や什器で行き止まりになる区画があると、直線では近くても道のりが伸びて基準から外れることがあります。
まずは自分の階の平面図に発信機の位置を落とし、いちばん奥の部屋から歩く順路をなぞってみてください。
直線ではなく歩く道のりで測るのですね。
間仕切りを増やしたときは見直しが要りそうです。
そのとおりで、間仕切りの工事は距離を変えます。
模様替えの図面ができた時点で順路を測り直してください。
発信機は床から何メートルの高さに付いていればよいのか

省令はその高さを幅で示しています。
床面から0.8メートル以上という下限と、1.5メートル以下という上限が同時にかかります。
低すぎても高すぎても基準から外れるという書き方で、大人が立ったまま手を伸ばせば届く帯に収める趣旨です。
既存の建物で問題になりやすいのは、床の仕上げをかさ上げしたときや、二重床を入れたときです。
内装工事で床の高さを変えた階があれば、その階の発信機の高さを測り直しておいてください。
床を上げると機器を動かさなくても高さが変わりますね。
気づきにくいところでした。
基準は床面からの高さなので床が動けば数値も動きます。
コンベックスを一本持って回れば十分に確かめられます。
押しボタンのそばの赤いランプはどこまで見えなければならないのか

そこで省令は発信機の場所を知らせる灯りを別に要求しています。
表示灯は赤色の灯火で、取付け面と15度以上の角度となる方向から10メートル離れて点灯が識別できることが求められています。
真正面に立ったときだけ見える取付け方では足りず、廊下を歩いてくる人の角度から見えなければなりません。
サインや掲示物を壁に増やすと、灯りが袖看板や額の陰に入って斜めからの見通しが切れることがあります。
表示灯のまわりに後から付けたものがないか、廊下の端に立って斜めから眺めて確かめてください。
点いているかどうかだけの話ではないのですね。
見える角度まで決まっているとは思いませんでした。
灯りが隠れる原因はたいてい後から付けた掲示物です。
掲示の位置を決めるときに表示灯の見通しも見てください。
ベルの音はどれだけ大きく鳴ればよいのか

省令はこれを地区音響装置と呼び、音の大きさと置く間隔を定めています。
音の大きさは装置の中心から1メートル離れた位置で90デシベル以上と決められています。
置く間隔のほうは発信機と違って水平距離で25メートル以下なので、歩く道のりではなく平面での直線で測ります。
同じ条文の中に歩行距離と水平距離が並んでいるので、どちらの物差しで見るのかを取り違えないようにしてください。
なお音声で警報を発する地区音響装置には同条第五号の二が別に置かれていて、音圧の下限が92デシベル以上とされています。
押しボタンとベルで測り方が違うのですね。
同じ50メートルや25メートルで見ていました。
発信機は歩行距離でベルは水平距離という違いです。
平面図に円と順路を別々に描くと分かりやすくなります。
受信機を取り替えるとき発信機はそのままでよいのか

省令が受信機の種類と発信機の種類を組み合わせで指定しているためです。
条文は受信機の種類ごとに接続してよい発信機の級を指定していて、建物側が自由に組み合わせられるものではありません。
受信機だけを新しくして壁の発信機を残す計画になっていないか、見積書の内訳で確かめてください。
なお冒頭の条文のとおり、P型三級受信機など一部の受信機に設ける場合や、非常警報設備を規則第25条の2第2項のとおり設けた場合には、この号のイからホまでは適用されません。
自分の建物の受信機がどの種類なのかは、受信機の前面の銘板か消防用設備等点検結果報告書で確かめられます。
受信機の更新だけの工事だと思っていました。
壁の側まで組で見る必要があるのですね。
受信機の型と発信機の級は必ずセットで確かめてください。
銘板の写真を撮っておくと打ち合わせが早く進みます。
よくある質問
まとめ
今日のうちに発信機の高さを測って回ります。
表示灯の見通しも廊下の端から確かめます!
数字を一つずつ当てていけば指摘は先に潰せます。
迷うところがあれば㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第24条第八号の二
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第24条第五号・第五号の二
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第25条の2
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第21条
- e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





