火災で消防隊が到着したとき、現場では建物側の人にいくつも質問が飛びます。
階段はどこを通るのか、いま中に人が残っていないか、といった問いです。
これは現場の慣行ではなく、消防法第25条第3項が消防吏員と消防団員に認めた情報の提供の求めです。
答えられる人を決めて資料をまとめておくところまでが防火管理者の備えです。
うちのビルで火事が起きたら、消防隊の方から根掘り葉掘り聞かれると先輩に言われました。
あれは断ってもよいものなのでしょうか。
断れません。
消防法第25条第3項が、消防吏員と消防団員に情報の提供を求める権限を与えています。
権限があるということは、こちらは答える側に回るということですね。
答えるのは誰の役目になるのでしょうか。
建物の関係者と、そこに住む人や働く人です。
火が出た建物だけでなく延焼のおそれのある建物の人まで入ります。
- 火災の現場では消防吏員と消防団員が建物側に情報の提供を求めることができます
- 根拠は消防法第25条第3項で、求められる相手は消防法施行規則第47条が定めています
- 相手には火が出た建物の関係者だけでなく延焼のおそれのある消防対象物の関係者や居住者や勤務者も入ります
- 聞かれるのは建物の構造と救助を要する者の存否その他人命の救助に必要な事項です
- 正当な理由なく答えず、または虚偽を答えると六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金の対象になります
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目次
火災の現場で消防隊はなにを求めることができるのか

そのうち第3項だけが、消防隊の側から働きかける規定です。
第1項が消防隊の到着まで自分たちで消火や救助をする義務、第2項が現場付近にいる人がそれに協力する義務で、この二つは建物側が動く規定です。
これに対して第3項は、消防吏員又は消防団員が主語になっており、建物側は聞かれて答える側に回ります。
求められる事項として条文が名指ししているのは、建物の構造と、救助を要する者がいるかどうかの二つです。
そのうえで「その他消火若しくは延焼の防止又は人命の救助のため必要な事項」と続くので、この二つに限られるわけではありません。
到着した隊員に何を聞かれても答えられるのは、日ごろ建物を見ている人だけです。
同じ条文の中で、義務の向きが途中から変わっているのですね。
そこが見落とされやすいところです。
第1項と第2項だけを読んで安心しないでください。
情報の提供を求められるのは誰なのか

その総務省令が消防法施行規則第47条で、さらに前の条を引いています。
規則第47条は前条各号に掲げる者、つまり火災を発生させた者と、火災の発生に直接関係がある者と、火が出た建物の居住者又は勤務者をまず挙げます。
そのうえで延焼のおそれのある消防対象物の関係者と居住者と勤務者を足しています。
関係者とは消防法第2条第4項でいう所有者と管理者と占有者のことなので、テナントの店長も管理会社の担当者も含まれます。
隣の建物でまだ火が出ていなくても、火のまわり方によっては自分が聞かれる側になります。
自分の棟の話だから関係ないという整理は、この条文では成り立ちません。
隣のビルが燃えているときに、うちが聞かれることもあるのですね。
あります。
延焼のおそれがあれば、こちらの開口部や区画を聞かれることもあります。
建物の図面や名簿はなぜ手元に要るのか

どちらも記憶で答える種類のものではありません。
消防法にも施行令にも施行規則にも、図面を用意しておけという言い方の規定はありません。
それでも消防計画には消火活動と通報連絡に関することと、消防機関との連絡に関することを定める決まりがあります。
火災の現場で聞かれる構造の話は消火活動の欄に、誰が消防隊に応対するかは消防機関との連絡の欄に落とし込めます。
救助を要する者の存否は、在館者の人数を押さえる仕組みが無ければ答えようがありません。
平面図と在館者の名簿と鍵の在りかを一か所に置き、誰でも持ち出せる状態にしておいてください。
つまり答えるための材料を、先に消防計画へ書いておくということですね。
そのとおりです。
まずは平面図の置き場所を決めるところから始めてください。
立入検査で聞かれるのとはどこが違うのか

平常時の立入検査でも質問はありますが、根拠も相手も罰則も別の条文です。
立入検査の質問は消防法第4条第1項で、火災予防のために必要があるときに消防長又は消防署長が消防職員にさせるものです。
これに対して第25条第3項は火災の現場の規定で、質問するのは消防吏員又は消防団員です。
そして第25条第3項には罰則が置かれています。
正当な理由がないのに答えなかった場合だけでなく、虚偽の情報を提供した場合も第42条第十一号に当たります。
分からないことを分からないと言うのは虚偽ではないので、あいまいな記憶で断定しないでください。
とっさに人数を多めに言ってしまうのも危ないということでしょうか。
数を作って答えるのが危ないという意味です。
把握できていない範囲は未確認と伝えるほうが救助の役に立ちます。
明日からなにを備えておけばよいのか

そこを消防計画と訓練で埋めておきます。
まず消防隊に応対する担当と、その担当が不在のときに代わる人を消防計画に書き出してください。
次に平面図と在館者の名簿と鍵の一覧を一つのファイルにまとめ、受付か防災センターのように誰でも取り出せる場所に置きます。
図面は最新の間取りかどうかを確かめ、増築や間仕切りの変更があれば差し替えます。
そのうえで通報訓練のときに、応対役が実際にそのファイルを持って出るところまでやってみてください。
本番で探し始める建物と、手を伸ばせば届く建物とでは、救助にかかる時間が変わります。
次の訓練で、図面を持って出るところまで入れてみます。
それだけで動きが変わります。
持ち出す人が迷わないよう、背表紙に大きく書いておいてください。
よくある質問
まとめ
聞かれて答えるところまでが防火管理だと分かりました。
今週のうちにファイルを作ります。
その動き出しがいちばん効きます。
消防計画の書き方に迷われたら㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第2条・第4条・第25条・第42条 e-Gov法令検索
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第3条の2 e-Gov法令検索
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条・第46条・第47条 e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





