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水噴霧消火設備のポンプはどこまでの範囲を見て選ぶのか|道路区画面積と区画面積で決まる吐出量の基準を解説

地下の機械室に据えられた赤い消火ポンプと圧力計と左手の水槽を写した写真

駐車場や建物の下の道路に水噴霧消火設備を入れると、ポンプの大きさをどうやって決めたのかという話が必ず出てきます。
建物じゅうの噴霧ヘッドが一度に開くわけではないので、床面積をそのまま掛け算しても答えは出ません。
消防法施行規則第17条第2項は、比べるべき水量を三つ挙げたうえでいずれか多い水量を送れることを求めています。
どの範囲を一度に消す前提で選んだポンプなのかが分かると図面の見え方が変わります

うちの駐車場のポンプは点検票に吐出量が書いてありますが、この数字の出どころが分かりません。
床の広さから決めたものなのでしょうか。

床面積だけでは決まりません。
消防法施行規則第17条第2項が比べるべき三つの水量を挙げています。

三つも比べるのですか。
どれを使うかは設計する人が選べるものですか。

選ぶのではなくいちばん多いものに合わせます。
道路の部分と駐車の部分で数え方が違うところから見ていきましょう。

この記事の結論
  • 道路や駐車の部分の水噴霧消火設備の加圧送水装置は三つの水量のうちいずれか多い水量を送れるものにします。根拠は消防法施行規則第17条第2項です。
  • 第一号は道路の長さが10メートル以上となるように区分した道路区画面積のうち、最大となる部分の噴霧ヘッドを同時に放射する水量です。
  • 第二号の区画面積は、区画境界堤で区画された部分の面積にこれと接する車路の部分の面積を加えたものです。
  • 第三号は隣接する二つの道路区画面積又は区画面積を合計した面積のうち最大となるものまで比べます
  • 一方で水源の水量は同条第3項が別に定めており、20分間放射することができる量以上とされています。

水噴霧消火設備の加圧送水装置が道路区画面積と区画面積と隣り合う二つの合計を比べていちばん多い水量を送ることを示した図解

水噴霧消火設備のポンプはなにを基準に選ぶのか

ポンプから伸びた配管が天井の噴霧ヘッドにつながりその下に2台の車が止まっているイラスト
消防法施行令第14条第五号は、水源に連結する加圧送水装置を点検に便利で延焼と衝撃のおそれが少ない箇所に設けることとしています。
そのポンプがどれだけの水を送れるものであるべきかは、消防法施行規則第17条第2項が定めています。
消防法施行規則第17条第2項 加圧送水装置は、前条第三項第三号の規定によるほか、次の各号に定める水量のうちいずれか多い水量を送水できるものでなければならない。
ポンプは三つの水量を比べて決めます
条文が挙げる三つは、道路区画面積・区画面積・隣接する二つを合計した面積のそれぞれについて、すべての噴霧ヘッドを同時に標準放射量で放射する場合の水量を求めたものです。
どれか一つを選ぶのではなく、三つのうちいずれか多い水量が求められる能力になります。
噴霧ヘッドは床面積1平方メートルにつき20リットル毎分の水量を標準放射量で放射できるように設けるので(同条第1項第二号)、面積が決まれば水量も決まる組み立てです。
点検票のポンプの吐出量を見るときは、その数字が建物のどの範囲を一度に消す前提なのかを図面と合わせて確かめてください。

三つのうち多いものというと、たいてい三つ目になりそうですね。

合計する号があるのでそうなりやすいのは確かです。
ただし区画の割り方によって順位は変わるので、順に見ていきましょう。

道路の部分では水量をどこで区切って数えるのか

三つに区切られた車道の真ん中の区画が色分けされ上の配管に噴霧ヘッドが並んでいるイラスト
道路の用に供される部分は端から端まで一続きの床になっていることが多く、そのままでは面積が決まりません。
そこで条文は区切り方そのものを定めています。
消防法施行規則第17条第2項
一 道路の用に供される部分を、道路の長さが十メートル以上となるように区分した場合における当該区分されたそれぞれの道路の部分の面積(以下「道路区画面積」という。)のうち最大となる部分に設けられたすべての噴霧ヘッドを同時に標準放射量で放射する場合の水量
道路は長さで区切って数えます
条文がいう道路区画面積は、道路の長さが10メートル以上となるように区分したときの一区分ぶんの面積です。
比べるのはその中で最大となる部分なので、区分の数が増えても一区分の面積が小さければ水量は増えません。
逆にいえば、幅が広い部分や長い直線を持つ建物ほどこの号の水量が大きくなります。
図面には区分の線が残っているはずなので、どこで切って計算したのかを確かめておくと点検票の数字が読めるようになります。

うちの建物は下を道路が抜けているので、この号が効いてくるということですね。

道路の部分と駐車の部分の両方があるなら両方の号を計算します。
そのうえでいちばん多いものに合わせることになります。

駐車の部分の区画面積には車路がどこまで入るのか

向かい合う2列の駐車マスと真ん中に線が引かれた車路を描いたイラスト
駐車の部分は区画境界堤で囲まれているので、区切り方は堤の位置で決まります。
ところが面積に足すものは堤の内側だけではありません。
消防法施行規則第17条第2項
二 第五項第二号に定める区画境界堤で区画された部分の面積にこれと接する車路の部分の面積(車両が駐車する場所が車路をはさんで両側にある場合は、当該車路の中央線までの面積とする。)を加えたものの面積(以下次号において「区画面積」という。)のうち最大となるものに設けられたすべての噴霧ヘッドを同時に標準放射量で放射する場合の水量
車路の面積まで足して数えます
条文がいう区画面積は、区画境界堤で区画された部分の面積に、これと接する車路の部分の面積を加えたものです。
車路をはさんで両側に車両が駐車する場所があるときは、かっこ書きにより当該車路の中央線までの面積を加えることになります。
堤の内側だけで数えると面積が小さく出るので、そのぶん求められる水量も小さく見えてしまいます。
駐車マスの配置を変えたり車路の幅を変えたりしたときは、この面積が動くことを頭に入れて設計した業者に相談してください。

堤の内側だけを測っていたら足りなくなるところでした。

車路をはさんで両側にマスがあるかどうかで足す範囲が変わります。
図面の中央線がどこに引かれているかを見てください。

隣り合う二つの区画を合計した水量まで比べるのはなぜか

隣り合う2つの区画が色分けされそれぞれの上に噴霧ヘッドが並び左のポンプから配管が分かれているイラスト
ここまでは一区画ぶんの水量でしたが、条文にはもう一つ号があります。
これが三つの中でいちばん大きな数字になることのある号です。
消防法施行規則第17条第2項
三 隣接する二つの道路区画面積又は区画面積を合計した面積のうち最大となるものに設けられたすべての噴霧ヘッドを同時に標準放射量で放射する場合の水量
隣どうしを足した面積まで比べます
第三号は、隣接する二つの道路区画面積又は区画面積を合計した面積のうち最大となるものを計算の対象にしています。
理由までは条文に書かれていませんが、隣り合う二つの範囲の噴霧ヘッドが同時に標準放射量で放射しても足りる能力を、加圧送水装置に持たせる規定になっています。
一区画ぶんで計算した水量よりこの合計が大きくなるなら、柱書のいずれか多い水量はこちらの数字になります。
自分の建物でどの組み合わせが最大になるのかは消防用設備等の設計図書に残っているので、点検の前に開いておくと話が早くなります。

三つの中でどれが最大になるかは建物ごとに違うということですね。

道路と駐車の両方がある建物では組み合わせも増えます。
三つとも計算したうえで比べるのが条文の求めるところです。

水源の水量もポンプと同じ計算でよいのか

水槽とポンプが配管でつながりその横で作業服の人が書類を持って立っているイラスト
加圧送水装置の水量が決まっても、水源の水量が同じ計算で出るわけではありません。
消防法施行令第14条第四号を受けて、消防法施行規則第17条第3項が別に定めています。
消防法施行規則第17条第3項 第一項の水噴霧消火設備の水源の水量は、次の各号に定める水量で、二十分間放射することができる量以上の量としなければならない。
一 道路の用に供される部分にあつては、道路区画面積が最大となる部分における当該床面積一平方メートルにつき二十リットル毎分の量の割合で計算した量
二 駐車の用に供される部分にあつては、当該防火対象物又はその部分の床面積(当該床面積が五十平方メートルを超える場合にあつては、五十平方メートルとする。)一平方メートルにつき二十リットル毎分の量の割合で計算した量
水源は別の数え方になります
第3項には隣接する二つを合計する号がありません。道路の部分は道路区画面積が最大となる部分、駐車の部分は床面積で計算します。
しかも駐車の部分は床面積が50平方メートルを超えるときは50平方メートルとして計算するので、広い駐車場でも水源の水量にはここで頭打ちがかかります。
そのうえで20分間放射することができる量以上が必要になります。
明日からできることとして、点検票のポンプの吐出量と水槽の有効水量を並べて見て、それぞれの根拠が第2項と第3項のどちらなのかを設計図書で確かめてください。

ポンプは隣まで見て、水源は一区画ぶんという違いがあるのですね。

条文の作りがそうなっています。
数字の出どころが分かれば増築や模様替えのときに再計算が要るかどうかの見当も付きます。

よくある質問

Q道路区画面積の10メートルはどこから測るのですか?
A消防法施行規則第17条第2項第一号は道路の長さが10メートル以上となるように区分した場合と書いているだけで、区分をどこに置くかまでは定めていません。実際の区分の仕方は所轄消防署にご確認ください。
Q車路をはさんで両側に駐車する場所があるときはどこまで面積に足すのですか?
A同項第二号のかっこ書きが当該車路の中央線までの面積とすると定めています。区画境界堤で区画された部分の面積にこの車路の部分の面積を加えたものが区画面積です。
Q指定可燃物を置く場所の水噴霧消火設備も同じ水量になるのですか?
A別の条です。消防法施行規則第16条第2項は水源の水量を床面積1平方メートルにつき10リットル毎分の割合で計算した量とし、床面積が50平方メートルを超えるときは50平方メートルとして計算します。道路と駐車の部分は20リットル毎分です。
Q排水設備の大きさはポンプのどの水量に合わせるのですか?
A消防法施行規則第17条第4項第五号と第5項第六号が、排水溝及び集水管について加圧送水装置の最大能力の水量を有効に排水できる大きさ及び勾配を有することを求めています。

まとめ

道路や駐車の部分の水噴霧消火設備の加圧送水装置は三つの水量のうちいずれか多い水量を送れるものにします
根拠は消防法施行規則第17条第2項です。
第一号は道路の長さが10メートル以上となるように区分した道路区画面積のうち最大となる部分を見ます。
第二号の区画面積は区画境界堤で区画された部分の面積にこれと接する車路の部分の面積を加えたものです
車路をはさんで両側に駐車する場所があるときは車路の中央線までの面積を加えます。
第三号は隣接する二つの道路区画面積又は区画面積を合計した面積のうち最大となるものを対象にします。
水源の水量は同条第3項が別に定めており20分間放射することができる量以上とされています

さっそく点検票の吐出量と設計図書を突き合わせてみます。

区画の割り方が変わったときは再計算が要ることもあります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第17条第1項
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第14条第一号・第四号・第五号
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第16条第1項・第2項・第3項
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第17条第1項から第5項まで
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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