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駐車場の床にある低い堤はなんのためにあるのか|水噴霧消火設備に求められる区画境界堤と排水設備の基準を解説

駐車場の低い区画境界堤と車路の排水溝が見える地下駐車場の写真

建物の駐車場の床をよく見ると、駐車マスの三方だけを囲む低い堤があることがあります。
車路には細長い溝が走り、その先の床には丸いふたがはめ込まれています。
これは水はけのための造作ではなく、水噴霧消火設備とセットで消防法令が求めている設備です。
堤と溝の役割が分かると駐車場のどこに物を置いてはいけないかが決まります

うちの地下駐車場は床に低い段があって台車が引っかかります。
削ってしまってもよいものでしょうか。

それは区画境界堤という名前が付いた設備の一部です。
消防法施行規則が高さまで決めているので勝手には削れません。

消火設備の話なのに床の造りまで決まっているのですか。
点検業者からもそこは指摘されたことがありません。

水をまく設備なので出したあとの水の行き先まで排水設備として決められています。
駐車の部分と道路の部分で造りが違うところまで見ていきましょう。

この記事の結論
  • 駐車の用に供される部分と道路の用に供される部分に水噴霧消火設備を設けるときは有効な排水設備がセットで要ります。根拠は消防法施行令第14条第二号です。
  • 噴霧ヘッドは床面積1平方メートルにつき20リットル毎分の水量を標準放射量で放射できるように設けます(消防法施行規則第17条第1項第二号)。
  • 駐車する場所には車路に接する部分を除いて高さ10センチメートル以上の区画境界堤を設けます(同条第5項第二号)。
  • 床は排水溝に向かって100分の2以上の勾配をつけ排水溝は40メートル以内ごとに1個の集水管で消火ピットにつなぎます
  • 消火ピットは油分離装置付とし、火災危険の少ない場所に設けることとされています(同条第5項第三号)。

駐車場の水噴霧消火設備に求められる区画境界堤と排水溝と集水管と消火ピットを示した図解

駐車場の水噴霧消火設備はなにを消しているのか

天井の配管に並ぶ噴霧ヘッドとその下に止まった2台の車を描いたイラスト
消防法施行令第13条は、駐車の用に供される部分に水噴霧消火設備・泡消火設備・不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備のいずれかを設けることとしています。
このうち水噴霧消火設備を選んだときの噴霧ヘッドの数と置き方は、消防法施行規則第17条第1項が定めています。
消防法施行規則第17条第1項 防火対象物の道路の用に供される部分又は駐車の用に供される部分に設置する水噴霧消火設備の噴霧ヘッドの個数及び配置は、次の各号に定めるところによらなければならない。
一 道路の幅員又は車両の駐車位置を考慮して防護対象物を噴霧ヘッドから放射する水噴霧により有効に包含し、かつ、車両の周囲の床面の火災を有効に消火することができるように設けること。
二 床面積一平方メートルにつき二十リットル毎分の水量を標準放射量で放射することができるように設けること。
守る相手は車だけではありません。
条文は車両の周囲の床面の火災まで消せるように置けと書いています。燃えているものが床に広がる前提で組まれた設備だということが、この一文から読み取れます。
水量も同じ規則の第16条第2項が定める指定可燃物向けの10リットル毎分に対して、駐車と道路の部分は1平方メートルにつき20リットル毎分と2倍です。
広い面にたくさんの水をまく設備だということを先に押さえておくと、このあとの排水設備の話がつながります

車そのものにかけるだけでは足りないのですね。
床の火まで消すという発想はありませんでした。

床にこぼれたものが燃えることを見込んだ書き方になっています。
だから水の行き先も条文で決められています。

排水設備はどの部分に義務づけられているのか

車が並ぶ駐車フロアと車が走る道路の部分を並べて描いたイラスト
水噴霧消火設備の基準は消防法施行令第14条にまとめられています。
排水設備が出てくるのは第二号で、対象が2つの部分に絞られています。
消防法施行令第14条 前条に規定するもののほか、水噴霧消火設備の設置及び維持に関する技術上の基準は、次のとおりとする。
二 別表第一に掲げる防火対象物の道路の用に供される部分又は駐車の用に供される部分に設置するときは、総務省令で定めるところにより、有効な排水設備を設けること。
三 高圧の電気機器がある場所においては、当該電気機器と噴霧ヘツド及び配管との間に電気絶縁を保つための必要な空間を保つこと。
細かい排水設備が要るのはこの2つだけです。
同じ水噴霧消火設備でも、指定可燃物を貯蔵し取り扱う場所に設けるものは規則第16条第3項第五号が「加圧送水装置の最大能力の水量を有効に排水できる大きさ及び勾配」を求めるだけで、堤や集水管の規定はありません。
道路と駐車の部分だけ規定が厚いことは、規則第17条が消火ピットを油分離装置付としていることからも読み取れます。油の混じった水が出る前提で組まれている条文です。
自分の建物の水噴霧消火設備がどの部分に付いているかで読む条文が変わります

倉庫の水噴霧と駐車場の水噴霧では条文が違うということですね。
同じ設備名なので同じだと思っていました。

規則は第16条と第17条で条を分けています。
図面を見るときはまず設備がどの部分に付いているかを確かめてください。

駐車の用に供される部分の床にはなにを設けるのか

三方を低い堤で囲まれ車路側だけ開いた駐車マスと車路の排水溝を描いたイラスト
駐車の用に供される部分の排水設備は、消防法施行規則第17条第5項が六つの号で定めています。
床の勾配から消火ピットまでが一続きの決まりになっています。
消防法施行規則第17条第5項 駐車の用に供される部分に設ける排水設備は、次の各号に定めるところにより設けなければならない。
一 車両が駐車する場所の床面には、排水溝に向かつて百分の二以上の勾配をつけること。
二 車両が駐車する場所には、車路に接する部分を除き、高さ十センチメートル以上の区画境界堤を設けること。
三 消火ピットは、油分離装置付とし、火災危険の少ない場所に設けること。
四 車路の中央又は両側には、排水溝を設けること。
五 排水溝は、長さ四十メートル以内ごとに一個の集水管を設け、消火ピットに連結すること。
六 排水溝及び集水管は、加圧送水装置の最大能力の水量を有効に排水できる大きさ及び勾配を有すること。
水はマスの中で受け止めてから流します。
区画境界堤で駐車する場所を囲い、床を100分の2以上の勾配で排水溝に向け、車路の中央か両側の排水溝が受け、40メートル以内ごとの集水管が消火ピットへ落とす、という順です。
堤を切ってよいのは車路に接する部分だけで、条文はそこだけを除いています。車が出入りする側は開いていますが、残りの三方は囲われている必要があります。
台車が引っかかるからと堤を削ると設備の基準そのものを外すことになります

つまり駐車マスがひとつの受け皿になっているのですね。
床がわずかに傾いている理由がやっと分かりました。

そのとおりです。
床の傾きも堤の高さも図面に寸法が入っているので一度確かめてみてください。

道路の用に供される部分では造りがどこまで変わるのか

中央に排水溝が走る道路の部分と丸いふたのついた集水管と地下の消火ピットを描いたイラスト
建物の下を車が通り抜ける部分にも水噴霧消火設備が入ることがあります。
その排水設備は同じ規則第17条の第4項にあり、駐車の部分より号がひとつ少なくなっています。
消防法施行規則第17条第4項 道路の用に供される部分に設ける排水設備は、次の各号に定めるところにより設けなければならない。
一 道路には、排水溝に向かつて有効に排水できる勾配をつけること。
二 道路の中央又は路端には、排水溝を設けること。
三 排水溝は、長さ四十メートル以内ごとに一個の集水管を設け、消火ピットに連結すること。
四 消火ピットは、油分離装置付とし、火災危険の少ない場所に設けること。
五 排水溝及び集水管は、加圧送水装置の最大能力の水量を有効に排水できる大きさ及び勾配を有すること。
違いは三つです。
道路の部分には区画境界堤の号がありません。車が止まらないので囲う相手がないという並びになっています。
勾配も「排水溝に向かつて有効に排水できる勾配」とだけあり、駐車の部分のような100分の2という数値は置かれていません。排水溝の位置も「中央又は両側」ではなく中央又は路端です。
一方で水源の水量は第3項で分かれ、道路の部分は道路区画面積が最大となる部分で計算し、駐車の部分は床面積が50平方メートルを超えるときに50平方メートルとして計算します。この道路区画面積は第2項第一号が道路の長さを10メートル以上に区分して求めるものと定めています。
同じ建物に両方あるときは条文を分けて読まないと寸法を取り違えます

うちは荷さばき場の車路と駐車場が続いています。
ひとつの基準で見てはいけないということですね。

どこからが道路の用に供される部分になるかは所轄の消防署が判断します。
図面の区分に迷ったら早めに相談しておくと安心です。

明日からなにを確かめればよいのか

荷物が積まれてふさがれた排水溝と何も置かれていない排水溝を点検する人を描いたイラスト
消防用設備等は設置しただけでは足りず、消防法第17条第1項が維持まで求めています。
水噴霧消火設備で見る場所は令第14条にも書かれています。
消防法施行令第14条
三 高圧の電気機器がある場所においては、当該電気機器と噴霧ヘツド及び配管との間に電気絶縁を保つための必要な空間を保つこと。
五 水源に連結する加圧送水装置は、点検に便利で、かつ、火災の際の延焼のおそれ及び衝撃による損傷のおそれが少ない箇所に設けること。ただし、保護のための有効な措置を講じたときは、この限りでない。
見るのは水が通る道です。
排水溝の上に台車やパレットを置いていないか、集水管のふたが荷物でふさがれていないか、区画境界堤が欠けたり削られたりしていないかを歩いて確かめます。
高圧の電気機器を後から持ち込んだ場合は、噴霧ヘッドや配管との間の空間が詰まっていないかも見ます。加圧送水装置の周りに物を積んで点検できなくなっていないかも同じ条文の話です。
点検と報告は消防法第17条の3の3が定期に行うこととしていますので、点検結果報告書の水噴霧消火設備の欄と現場を突き合わせておくと引き継ぎが楽になります。
床の堤と溝は掃除の対象であって撤去や改造の対象ではありません

排水溝の上は物置になっていました。
今日のうちにどかしておきます。

そこが一番よく詰まる場所です。
置かない場所として消防計画に書いておくと引き継げます。

よくある質問

Q指定可燃物を置く場所の水噴霧消火設備にも区画境界堤は要るのですか?
A区画境界堤や集水管の基準は消防法施行規則第17条にあり、これは道路と駐車の部分の規定です。指定可燃物の場合は同規則第16条第3項第五号が排水設備について加圧送水装置の最大能力の水量を有効に排水できる大きさ及び勾配を求めるにとどまります。
Q水源の水量はどれだけ必要になるのですか?
A規則第17条第3項が20分間放射することができる量以上としています。駐車の部分は床面積1平方メートルにつき20リットル毎分で計算し、床面積が50平方メートルを超えるときは50平方メートルとして計算します。
Q区画境界堤は駐車する場所の周り全部に要るのですか?
A規則第17条第5項第二号は車路に接する部分を除きと書いています。車が出入りする側には設けませんが、それ以外の部分には高さ10センチメートル以上のものが必要です。
Q駐車場に充電設備や配電盤を置くときは何に気をつけますか?
A消防法施行令第14条第三号が高圧の電気機器がある場所について、当該電気機器と噴霧ヘッド及び配管との間に電気絶縁を保つための必要な空間を保つこととしています。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

まとめ

駐車と道路の部分の水噴霧消火設備には有効な排水設備がセットで求められます
根拠は消防法施行令第14条第二号と消防法施行規則第17条です。
噴霧ヘッドは床面積1平方メートルにつき20リットル毎分を標準放射量で放射できるように設けます。
駐車する場所は車路に接する部分を除いて高さ10センチメートル以上の区画境界堤で囲みます
床は排水溝に向かって100分の2以上の勾配をつけ、排水溝は40メートル以内ごとに1個の集水管で消火ピットにつなぎます。
道路の部分には区画境界堤の号がなく、勾配にも数値が置かれていません。
排水溝と集水管の上に物を置かないことが日々の維持管理になります

まずは駐車場を一周して堤と溝の状態を見てきます。

気になる箇所は写真に残しておくと引き継ぎに使えます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第17条第1項・第17条の3の3
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第13条第1項
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第14条第一号から第六号まで
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第16条第1項・第2項・第3項
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第17条第1項から第6項まで
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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