段ボールや古紙を大量に置く倉庫に水噴霧消火設備を入れると、天井の噴霧ヘッドを何個どこに付けるのかという話になります。
床の広さで割れば個数が出そうに見えますが、条文はそういう決め方をしていません。
消防法施行規則第16条第1項第一号は有効防護空間という言葉を使い、荷のほうを基準に配置を決めることを求めています。
守るものの形が変われば同じ広さの部屋でもヘッドの付け方は変わります。
倉庫の天井に噴霧ヘッドが並んでいますが、この数はどうやって決まったのでしょうか。
床の広さから割り出したものですか。
割り算では出ません。
消防法施行規則第16条第1項第一号が有効防護空間という基準を置いています。
聞いたことのない言葉です。
空間という書き方だと図面のどこを見ればよいのか分かりません。
ヘッドが有効に消火できる範囲のことで、条文の中に定義が書かれています。
置いてある荷がその範囲に収まっているかを見る決まりです。
- 指定可燃物を置く場所の噴霧ヘッドは防護対象物のすべての表面が有効防護空間に収まるように設けます。根拠は消防法施行規則第16条第1項第一号です。
- 有効防護空間とは、ヘッドから放射する水噴霧などによって有効に消火することができる空間をいうと同号のかっこ書きが定義しています。
- この定義は水噴霧消火設備だけのものではなく、泡消火設備とハロゲン化物消火設備と粉末消火設備のヘッドにも同じ言葉で及びます。
- 水の量は床面積1平方メートルにつき10リットル毎分の割合で計算し床面積は50平方メートルを上限とします。
- ヘッド1個が出す量は消防法施行規則第32条によりそれぞれのヘッドの設計圧力で決まるので、床面積の割り算では個数が出ません。
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目次
噴霧ヘッドの個数と配置はなにを見て決めるのか

そのうち噴霧ヘッドの置き方を定めているのが第一号です。
条文は最初に防護対象物という言葉を定義し、消火設備によって消火すべき対象物のことだとしています。
そのうえで、防護対象物の形状・構造・性質・数量・取扱いの方法に応じて必要な個数を適当な位置に設けよ、と書いています。
つまり同じ広さの部屋でも、何をどう積んでいるかが変われば必要な個数と位置は変わるという組み立てです。
必要な個数と適当な位置の中身は総務省令に委ねられていて、それが消防法施行規則第16条になります。
荷の置き方が変われば設備のほうも見直しが要るということでしょうか。
条文が形状と数量を挙げている以上、そこは無関係ではありません。
まずは設置したときの図面に描かれた荷と、いまの積み方を見比べてください。
有効防護空間とはどういう空間なのか

その第一号が有効防護空間という言葉を定義しています。
かっこ書きが定義しているとおり、有効防護空間とはヘッドから放射する水噴霧によって有効に消火することができる空間をいいます。
求められているのは防護対象物の一部ではなくすべての表面を包含することなので、上面だけが濡れる配置では足りません。
定義のかっこ書きは水噴霧消火設備のほかに泡消火設備とハロゲン化物消火設備と粉末消火設備を並べており、この言葉は四つの設備に共通します。
以下同じと書かれているため、消防法施行規則第18条の泡ヘッドの条文も同じ意味でこの言葉を使っています。
荷を高く積み上げると、上のほうが空間からはみ出してしまいそうですね。
条文が求めているのはすべての表面の包含です。
積む高さを変えるときは設備を入れた業者に一度確かめてください。
水の量はどこまで用意することになっているのか

そして水源のほうは同条第2項が別に定めています。
ヘッド側は同条第1項第二号で、床面積1平方メートルにつき次項で定める量の水量を標準放射量で放射できるように設けることとされています。
その次項で定める量が第2項の10リットル毎分にあたり、道路や駐車の用に供される部分の20リットル毎分とはちょうど倍の開きがあります。
水源のほうには上限があり、床面積が50平方メートルを超えるときは50平方メートルとして計算します。
広い倉庫でも水槽が青天井に大きくならないのは、この上限が置かれているからです。
つまり床が広くても水槽は一定の大きさで足りるということですね。
水源についてはそのとおりです。
ただしヘッドの個数まで頭打ちになるわけではないので、そこは分けて考えてください。
ヘッドの個数は床面積の割り算で出るのか

しかしその1個の能力である標準放射量は、消防法施行規則第32条が定めています。
泡消火設備のフォーム・ウォーター・スプリンクラーヘッド リットル毎分 七十五
水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備のヘッド(フォーム・ウォーター・スプリンクラーヘッドを除く。) 設置されたそれぞれのヘッドの設計圧力により放射し、又は放出する水噴霧、泡、不活性ガス消火剤、ハロゲン化物消火剤又は粉末消火剤の量
表が挙げているのは設置されたそれぞれのヘッドの設計圧力により放射する量であって、製品ごとに違う値です。
数字で決まっているのは泡消火設備のフォーム・ウォーター・スプリンクラーヘッドの75リットル毎分だけで、水噴霧の噴霧ヘッドはこの行から除かれています。
だから床面積を一律の数字で割っても個数は出ず、配置は有効防護空間で決めて水量の条件を後から確かめるという順序になります。
点検票のヘッドの個数が図面と合わないと感じたら、まず据え付けられたヘッドの型式と設計圧力を確かめてください。
同じ広さの倉庫でもヘッドの数が建物ごとに違うのは、そういう理由だったのですね。
ヘッドの性能と荷の置き方の両方が効いてきます。
他館の図面をそのまま当てはめる読み方はしないでください。
明日からなにを確かめればよいのか

これは階をまたいで確かめる項目です。
一つの一斉開放弁が同時に放射する区域を放射区域といい、防護対象物が存する階ごとに設けることとされています。
上の階と下の階で同じ荷を扱っていても、区域は階で切って考える決まりです。
現場では、設備を入れたときの図面に描かれた荷の位置と高さがいまの積み方と食い違っていないかを見てください。
荷を増やした階や、後から棚を高くした階があれば、そこだけでも設備を入れた業者と所轄消防署に相談する価値があります。
階ごとに区切るなら、弁の数も階の数だけ要るということになりますね。
防護対象物が存する階ごとという書き方なので、荷のある階が基準になります。
制御弁の位置とあわせて点検票で確かめておきましょう。
よくある質問
まとめ
まずは設置図面の荷の高さと、いまの積み方を見比べてみます。
積み方が変わっていれば見直しが必要になることもあります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第13条第1項・第2項
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第14条第一号
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第16条第1項・第2項・第3項第一号
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第18条第1項第二号
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第32条
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





