火事のときに頼りになるのは階段です。
その階段が部屋から遠すぎては逃げ切れないので建築基準法施行令は居室から階段までの歩行距離に上限を置いています。
上限は建物の用途と造りによって30メートルから50メートルまで分かれます。
この距離は直線ではなく実際に歩く長さで見ます。
避難訓練で奥の部屋から階段まで思ったより遠く感じました。
距離の決まりのようなものはあるのでしょうか。
あります。
建築基準法施行令第120条が居室から直通階段までの歩行距離に上限を置いています。
うちは事務所ビルですが何メートルまで認められるのでしょうか。
建物の造りによって変わります。
準耐火構造や不燃材料の建物なら50メートルその他の建物なら40メートルです。
- 居室から階段までの距離を決めているのは建築基準法施行令第120条で用途と構造によって上限が変わります
- 百貨店や遊技場などの居室と採光のとれない居室は構造にかかわらず30メートルです
- 病院やホテルや共同住宅の居室は準耐火構造なら50メートルその他の構造なら30メートルです
- それ以外の居室は準耐火構造なら50メートルその他の構造なら40メートルです
- 測るのは直線距離ではなく実際に歩く経路の長さです
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目次
直通階段とはどんな階段のことなのか

建築基準法施行令はそれを直通階段と呼んで置く場所まで決めています。
途中の階でいったん廊下に出て別の階段へ乗り換えなければ下りられない造りは、この条がいう直通階段には当たりません。
条文は傾斜路もこれに含めています。
そのうえで避難階以外の階には、居室から一定の距離のうちにその階段の一つがあるように設けなさいと求めています。
つまり階段は本数だけでなく置く場所まで決められているということです。
途中で乗り換えが要る階段は直通階段に数えないのですね。
そのとおりです。
まずは図面で地上まで一本で下りられる階段がどれかを押さえてください。
居室から階段まで何メートルまで認められるのか

居室の種類と建物の造りの組み合わせで三つに分かれます。
| 居室の種類 | 主要構造部が準耐火構造である場合(特定主要構造部が耐火構造である場合を含む)又は主要構造部が不燃材料で造られている場合 | その他の場合 |
|---|---|---|
| 採光に有効な開口部が床面積の二十分の一に満たない居室(避難上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合するものを除く)又は別表第一(い)欄(四)項(百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場等)に掲げる用途に供する特殊建築物の主たる用途に供する居室 | 30メートル以下 | 30メートル以下 |
| 別表第一(い)欄(二)項(病院、診療所(患者の収容施設があるもの)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎等)に掲げる用途に供する特殊建築物の主たる用途に供する居室 | 50メートル以下 | 30メートル以下 |
| 上の二つに掲げる居室以外の居室 | 50メートル以下 | 40メートル以下 |
いちばん厳しいのは上の段で、百貨店や遊技場などの居室と採光のとれない居室は、建物の造りがどうであっても30メートルです。
中の段は病院やホテルや共同住宅で、準耐火構造なら50メートルまで延びますが、そうでなければ30メートルに戻ります。
下の段は事務所や倉庫などそれ以外の居室で、準耐火構造なら50メートル、そうでなければ40メートルです。
自分の建物がどの段かは用途と主要構造部の造りの二つを確かめれば決まります。
同じホテルでも造りが違えば上限が20メートルも変わるのですね。
大きく変わります。
ご自分の建物の造りは確認済証や検査済証の書類で確かめられます。
内装を準不燃材料にすると距離は延びるのか

内装と階数によって加算と減算がかかります。
延ばせるのは、居室そのものと、そこから地上へ通じる主たる廊下や階段の壁と天井を準不燃材料で仕上げた場合です。
壁のうち床面からの高さが1.2メートル以下の部分は対象から外れているので、腰の高さまで張り替える必要はありません。
反対に15階以上の階の居室は10メートル短くなります。
ただし内装を準不燃材料で仕上げた居室は、この減算を受けないと条文が定めています。
つまり内装の仕上げが階段の位置にまで効いてくるのですね。
効いてきます。
だから内装を張り替えるときは材料の種別を勝手に下げないでください。
歩行距離が足りなくなるのはどんなときか

問題になるのは後から経路のほうが変わったときです。
だから階段までのまっすぐな経路がふさがれて遠回りになれば、そのぶん歩行距離は延びます。
段ボールを積み上げた通路や、防犯のために閉めたままにしているシャッターがその原因になります。
建てたときに30メートルだった経路が、物の置き方ひとつで40メートルにも50メートルにもなるということです。
消防法第8条の2の4は避難上必要な施設に避難の支障になる物件を放置しないよう管理することを管理権原者に求めています。
夜だけ閉めているシャッターも経路を変えてしまうのですね。
変えてしまいます。
在館者がいる時間帯に閉めている扉があれば所轄消防署に相談してください。
明日からなにを歩いて確かめればよいのか

図面を広げる前に実際に歩いてみるのがいちばん早い方法です。
階数が三以上の建築物や延べ面積が1,000平方メートルを超える建築物などが対象になります。
対象だと分かったら、いちばん奥の居室から階段まで実際に歩いて距離を測ります。
そのとき途中に置かれた物で遠回りをさせられていないかを一緒に見ておきます。
測った結果は日付とあわせて記録に残し、消防計画の避難経路の図と食い違っていないかを確かめます。
まず対象かどうかを見てから歩いて測る順番なのですね。
その順番で結構です。
歩いた結果は避難訓練の記録にそのまま添えられます。
よくある質問
まとめ
明日いちばん奥の部屋から階段まで歩いて測ってきます。
途中で遠回りさせられていないかも見てみます。
歩いて測った記録は消防計画の裏づけになります。
経路の見直しでお困りのことがあれば㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第35条(特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準)
- 建築基準法別表第一
- 建築基準法施行令第116条の2(窓その他の開口部を有しない居室等)
- 建築基準法施行令第117条(適用の範囲)
- 建築基準法施行令第120条(直通階段の設置)
- 消防法第8条の2の4
- e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





