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エスカレーターの勾配や踏段の幅はどこまで決まっているのか|建築基準法施行令第129条の12が定める構造基準を解説

エスカレーターの勾配や踏段の幅はどこまで決まっているのかを建築基準法施行令第129条の12から解説する記事のアイキャッチ画像

エスカレーターにも建築基準法施行令で定められた構造の基準があります。
第129条の12は勾配や踏段の幅、手すりの速度、地震時の脱落防止まで細かく定めています。
建築確認だけでなく、防火管理者の日常点検でも確認できる項目が含まれています。
この記事では第129条の12の構造基準と、日常点検で見るべき点を条文にそって解説します。

うちのビルにもエスカレーターがあります。
これにも法律で決まった基準があるんでしょうか。

はい、建築基準法施行令第129条の12がエスカレーターの構造基準を定めています。

階段とは違う基準があるんですね。

勾配や踏段の幅から地震対策まで、条文にそって見ていきましょう。
まずは勾配の基準から確認します。

この記事の結論
  • エスカレーターは建築基準法施行令第129条の12により、勾配や踏段の幅などの構造基準が定められています。
  • 勾配は30度以下、踏段の幅は1.1メートル以下としなければなりません。
  • 手すりは踏段と同一方向・同一速度で連動する構造が必要です。
  • 地震などの震動で脱落しない構造方法を用いる必要があります。
  • 制動装置は加速度1.25メートル毎秒毎秒以内で踏段を安全に停止させる構造でなければなりません。

エスカレーターの勾配と踏段の幅手すりの連動地震への備え制動装置の四つの構造基準を並べた図解

なぜエスカレーターにも建築基準法で構造の基準があるのか

エスカレーターに乗る買い物客と点検する人を示す図
エスカレーターは階段と違い、動く床が人を運ぶ設備です。
建築基準法施行令はこの動く床に専用の構造基準を置いています。
建築基準法施行令第129条の12(柱書) エスカレーターは、次に定める構造としなければならない
動く設備だからこそ専用の基準が要ります。
階段のように固定された構造物ではなく常に動作する機械設備であるため、挟み込みや脱落といった階段には無い危険が想定されます。
そのため建築基準法施行令第129条の12は、勾配・踏段の幅・手すりの速度・地震対策・制動装置まで、号ごとに具体的な数値と要件を定めています。
この基準は建築確認の段階で審査されますが、設置後も維持されているかどうかは別の話です。
まずは自分の建物のエスカレーターがどの号の基準に対応しているかを確認するところから始めます。

エスカレーターって階段と同じ扱いだと思っていました。
専用の基準があるんですね。

はい、動く設備だからこその基準が第129条の12にまとめられています。
次は勾配と踏段の幅を見ていきましょう。

勾配や踏段の幅はどこまで許されているのか

エスカレーターの勾配と踏段の幅を測る図
最初に確認するのは、傾きと踏段そのものの寸法です。
この2つは条文で明確な数値が決まっています。
建築基準法施行令第129条の12第1項 二 勾配は、三十度以下とすること。 四 踏段の幅は、一・一メートル以下とし、踏段の端から当該踏段の端の側にある手すりの上端部の中心までの水平距離は、二十五センチメートル以下とすること
勾配と踏段の幅には上限があります。
第二号は勾配30度以下と定めており、これより急な角度のエスカレーターは設置できません。
第四号は踏段の幅1.1メートル以下とし、踏段の端から手すりの上端部の中心までの水平距離も25センチメートル以下と決めています。
これは踏段からはみ出した荷物や身体が手すりの外側に落ちないようにするための数値です。
既存のエスカレーターでも、勾配と踏段幅がこの範囲に収まっているかは図面や設置時の検査記録で確認できます。

うちのエスカレーターは急な気がしていましたが、30度以下と決まっているんですね。

はい、30度を超える勾配は認められません。
次は手すりと隙間の基準を見ていきます。

手すりの速度や挟み込みの防止はどんな基準か

手すりと踏段が連動する様子とコームガードを示す図
動く設備だからこそ、手すりと踏段の動きをそろえる必要があります。
挟み込みを防ぐ構造も条文で求められています。
建築基準法施行令第129条の12第1項 一 国土交通大臣が定めるところにより、通常の使用状態において人又は物が挟まれ、又は障害物に衝突することがないようにすること。 三 踏段(人を乗せて昇降する部分をいう。以下同じ。)の両側に手すりを設け、手すりの上端部が踏段と同一方向に同一速度で連動するようにすること
挟み込み防止と手すりの連動が求められています。
第一号は人又は物が挟まれないことを国土交通大臣が定める方法で確保するよう求めており、踏段と床の境目にあるコーム状の部品もこの要件に基づいています。
第三号は手すりの上端部が踏段と同一方向・同一速度で連動することを義務付けています。
手すりの速度が踏段とずれると、利用者が体勢を崩す原因になります。
日常点検では、手すりと踏段の速度が目視でそろっているか、踏段の縁のコーム部分に欠けや変形が無いかを確認します。

手すりと踏段の速度がずれることなんてあるんですか。

経年劣化や整備不良で起こり得ます。
次は地震対策と制動装置を確認しましょう。

地震で脱落したり急停止したりする危険はどう防がれているのか

地震の揺れとエスカレーターの脱落防止装置を示す図
エスカレーターは建物の階をまたぐ長い構造物です。
地震時に脱落したり、非常時に急停止したりする危険にも基準があります。
建築基準法施行令第129条の12第1項 六 地震その他の震動によつて脱落するおそれがないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとすること。 同条第4項 エスカレーターには、制動装置及び昇降口において踏段の昇降を停止させることができる装置を設けなければならない
脱落防止と制動装置の両方が義務付けられています。
第六号は地震その他の震動による脱落を防ぐ構造方法を求めています。
第4項は制動装置と、昇降口での停止装置の設置を義務付けています。
第5項では制動装置の性能として、加速度が1.25メートル毎秒毎秒を超えない範囲で安全に停止させる構造方法を求めています。
急停止で利用者が転倒しないよう配慮された数値です。

地震のときエスカレーターが落ちてこないか心配していました。

脱落防止の構造方法が義務付けられています。
最後に日常点検の手順を確認しましょう。

防火管理者は日常点検で何を確認すればよいのか

点検リストを持つ人がエスカレーターを確認する図
構造基準そのものは建築確認の時点で決まっています。
防火管理者ができるのは、その基準が保たれているかの確認です。
消防法第八条の二の四 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について避難の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理し、かつ、防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理しなければならない。
日常点検で見るべきは基準の維持状態です。
まず手すりと踏段の速度がそろって動いているか、踏段の縁のコーム部分に欠けが無いかを目視で確認します。
次に非常停止ボタンが押しやすい位置にあり、実際に作動するかを保守点検の記録で確認します。
エスカレーター周りに避難の支障になる物件を置かないことも、消防法第8条の2の4の管理義務に含まれます。
異常や異音に気づいたら、すぐに専門業者に点検を依頼してください。

コームの部分まで見るのは気づきませんでした。

踏段と床の境目は特に見落としやすい箇所です。
次の点検から確認項目に加えてください。

よくある質問

Qエスカレーターの勾配が30度を超えていたらどうなりますか?
A建築基準法施行令第129条の12第1項第二号に違反するため、そのままでは建築確認を受けられません。既存の設備であれば既存不適格として、改修時に是正が求められることがあります。
Q踏段の幅が1.1メートルを超えるエスカレーターは設置できませんか?
A設置できません。第四号は踏段の幅1.1メートル以下と上限を定めており、これを超える幅の踏段は認められません。
Q制動装置の点検は誰が行うものですか?
A制動装置を含むエスカレーターの保守点検は、専門の昇降機保守点検業者が行うのが一般的です。防火管理者は点検記録の有無と結果を確認する立場になります。
Q地震対策の基準はすべてのエスカレーターに適用されますか?
A第129条の12第1項第六号は新設のエスカレーターに適用される構造基準です。既存のエスカレーターについては、個別の耐震診断や改修の要否を所轄の特定行政庁や専門業者にご確認ください。

まとめ

エスカレーターは建築基準法施行令第129条の12により、勾配や踏段の幅などの構造基準が定められています。
勾配は30度以下、踏段の幅は1.1メートル以下としなければなりません。
手すりは踏段と同一方向・同一速度で連動する構造が必要です。
人や物が挟まれない構造も義務付けられています。
地震などの震動で脱落しない構造方法を用いる必要があります。
制動装置は加速度1.25メートル毎秒毎秒以内で踏段を安全に停止させる構造でなければなりません。
防火管理者は手すりと踏段の速度、コーム部分の状態、周囲の物件の放置がないかを日常点検で確認します。

コームの部分もしっかり確認します。
手すりの速度もあわせて見ます。

制動装置や地震対策の点検もまとめてご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第129条の12
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第8条の2の4

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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