2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、多くの外国人来訪者や障害のある方が競技場や旅館・ホテル、駅や空港を利用することが想定されました。
これらの施設で火災や地震が起きたとき、日本語音声だけでは災害情報の内容を十分に理解できない方がいることが課題として指摘されています。
消防庁は「外国人来訪者や障害者等が利用する施設における災害情報の伝達及び避難誘導に関するガイドライン」を策定し、多言語化と視覚化による自衛消防体制の整備を求めました。
この記事では、ガイドラインが求める取り組みの範囲と、明日からできる備えを解説します。
うちの施設、外国人のお客さんも増えてきてるんですけど、災害のときの案内ってどこまでやればいいんでしょうか。
消防庁が平成30年にガイドラインを出していて、多言語化と視覚化の進め方が具体的に示されていますよ。
うちの建物、対象になるんですか。
対象施設が決まっていて規模は問われないので、まず当てはまるかどうかを一緒に確認しましょう。
- ガイドラインの対象施設は競技場・旅館やホテル・駅舎や空港など、規模を問わず定められています
- 情報伝達は原則として日本語と英語で行い、施設の実態に応じて他の言語を追加できます
- 消火器ピクトグラムは9センチ角以上で、見やすい位置に設置することが望ましいとされています
- 情報伝達と避難誘導の範囲は屋外等への避難誘導までで区切られ、避難所までの誘導は含まれません
- 訓練では簡易な言葉と身振り手振りを使い、緊急時は詳しい説明より迅速な避難を優先します
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目次
外国人来訪者や障害者等への災害情報伝達はなぜガイドラインになったのか

消防庁はこの状況を受けて検討部会を開き、ガイドラインの策定に至っています。
デジタルサイネージや翻訳機能付きタブレットを導入している施設はあっても、火災や地震の情報そのものが日本語音声中心だったため、外国人来訪者や障がいのある方に届いていないという状態が残っていました。
そこで消防庁は「外国人来訪者等が利用する施設における避難誘導のあり方等に関する検討部会」を開き、提言を踏まえてガイドラインを策定しています。
自分の施設に外国人来訪者や障がいのある方がどれだけ利用しているかを、まず思い浮かべてみてください。
言われてみると、うちも日本語のアナウンスしか用意してませんでした。
珍しいことではありません。
だからこそ、どこから手をつけるかを次で見ていきましょう。
ガイドラインの対象になる建物と利用者はどこまでか

まず自分の施設が当てはまるかどうかを確認しましょう。
競技場、旅館やホテル、駅舎や空港の用途に供される部分があれば、小規模な建物でも対象施設に含まれます。
想定する利用者は、日本語を母語としない外国人来訪者・障害者・心身の機能に支障を有する高齢者の3種類で、妊娠中の方や乳幼児を連れている方も、施設の実情に応じて対象に加えることが望ましいとされています。
対象施設に当てはまらなくても、この後の内容を参考に取り組むことができます。
うちは駅前の小さいビジネスホテルなんですが、それでも対象になりますか。
はい、規模は問いません。
ホテル・宿泊所は面積を問わず対象施設に入ります。
多言語化と視覚化はどこまで行えばよいのか

無理に全言語を揃える必要はありません。
そのうえで、デジタルサイネージ、外国語メッセージを付加した非常用放送設備、点滅機能又は音声誘導機能を持つ誘導灯、光警報装置などの設備や機器を、施設の実態に応じて組み合わせます。
設備を用意できない場合でも、スマートフォンアプリの活用や、自衛消防隊員がフリップボード等の資機材を持って駆け付ける方法で補うことができます。
消火器ピクトグラムは9センチ角以上という具体的な大きさが決まっているので、既存の消火器標識に貼り足すだけでも取り組めます。
デジタルサイネージを新しく入れないといけないんでしょうか。
いいえ、必須ではありません。
フリップボードや消火器ピクトグラムから始めても構いません。
情報伝達と避難誘導の範囲はどこで区切られるのか

どこまでが対象で、どこからが対象外なのかを整理しておきましょう。
避難所までの誘導や帰宅困難者の受入れは、このガイドラインの対象外で、各自治体の取り組みに委ねられています。
また、規則第3条第1項に定める消防計画の記載事項として、この取り組みを消防計画に規定することが望ましいとされていますが、法令上の義務そのものではありません。
デジタルサイネージを非常放送設備等と連動させる工事も、消防用設備等の機能に影響を及ぼさない方法であれば、着工届出書や設置届出書の届出を要しないとされています。
「どこまでやれば良いか分からない」と感じたら、まずこの範囲の線引きを思い出してください。
避難所まで案内しないといけないと思ってました。
そこは自治体の役割です。
施設としては、屋外に出るところまでを確実にすれば十分です。
訓練でどんな伝え方を教えればよいのか

訓練のときにそのまま使えるフレーズを見ておきましょう。
「〇〇は危険です」「私の後について来てください」のような短いフレーズを基本にし、複雑な説明やあやふやな言い方は避けます。
身振り手振りは大きい動作を心がけ、遠くにいる人には肩より上の位置で、近くにいる人には肩より下の位置で合図するとガイドラインに示されています。
翻訳機器での詳しい説明は、緊急時には必要以上に行わず、安全な場所への迅速な避難を優先することが求められます。
拡声器を使うときは、非常放送等の音声と重ならないように気をつけましょう。
英語が話せる従業員がいないと難しいですよね。
短いフレーズと身振りが基本なので、難しい英語力は必要ありません。
訓練で繰り返し練習しておきましょう。
よくある質問
まとめ
対象になる範囲と、簡単なフレーズの型がわかって安心しました!
訓練に落とし込むところまでできれば十分です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「外国人来訪者や障害者等が利用する施設における災害情報の伝達及び避難誘導に関するガイドライン」について(平成30年3月29日 消防予第254号)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条第1項・第25条第1項
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第一(1)項イ・(5)項イ・(10)項
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第1項・第9条第4号・第28条の3第4項
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





