BLOG

個室ビデオ店はなぜ旅館業法とも向き合うことになったのか|大阪の火災後に消防と保健所が連携した通知を解説

個室ビデオ店はなぜ旅館業法とも向き合うことになったのか|大阪の火災後に消防と保健所が連携した通知を解説

大阪市の個室ビデオ店で起きた火災をきっかけに、消防庁と厚生労働省が動きました。
個室ビデオ店は消防法上カラオケボックスと同じ区分ですが、宿泊サービスを提供していれば旅館やホテルと同じ扱いを受けることがあります。
平成21年1月23日、消防庁は消防機関に旅館業行政(保健所)との連携を求める通知を発出しました。
ベッドが無くても、毛布の貸し出しや「仮眠」の表示だけで区分が変わることがあります。

うちの店は個室ビデオ店やけど、防火の届出だけ気にしとったらええんかな。

実は消防だけやのうて、旅館業を持つ保健所も絡んでくる通知が出てるんですよ。

保健所て、うちは宿泊業やないから関係ないと思っとったわ。

宿泊させてるつもりがなくても、設備や表示だけで対象になることがあるんです。

この記事の結論
  • 大阪の個室ビデオ店火災を受け、消防庁と厚生労働省が旅館業行政と連携するよう求める通知を出しました(平成21年1月23日消防予第31号)。
  • 個室ビデオ店等は基本的に(2)項ニですが、宿泊サービスを提供していれば(5)項イとして扱われることがあります。
  • ベッドの設置だけでなく「泊」「仮眠」の表示や毛布の貸し出しだけでも宿泊とみなされうる点に注意が必要です。
  • 大阪市の調査では対象72施設のうち約36%が紛らわしい表示や設備を理由に指導を受けました。
  • 疑いがあれば所轄消防署と保健所の両方に確認することが実務上の安全策です。

個室ビデオ店と旅館業行政の連携の流れを示す図解

個室ビデオ店の防火安全対策になぜ旅館業との連携が必要になったのか

個室ビデオ店の建物を消防と保健所の担当者が並んで確認している様子
平成20年10月1日未明、大阪市浪速区の個室ビデオ店で火災が発生し、死者16名・負傷者9名という大きな被害が出ました。
消防庁はまず緊急調査と対策の徹底を指示し、その後、厚生労働省とも連携する通知を発出しました。
個室ビデオ店等に係る防火安全対策における旅館業行政との連携について(平成21年1月23日 消防予第31号) 旅館、ホテル等の宿泊施設の防火安全に係る関係行政機関との協力については、「旅館、ホテルに係る防火安全について」(昭和56年1月24日付け消防予第21号)で示された「旅館ホテル防火安全対策連絡協議会における了解事項」等に基づき実施をお願いしてきたところですが、去る平成20年10月1日に発生した大阪市個室ビデオ店火災を受け、個室ビデオ店等に係る防火対策については、「個室ビデオ店等に係る緊急調査及び防火対策の徹底について」(平成20年10月1日付け消防予第255号)、「個室ビデオ店等に係る防火対策の更なる徹底について」(平成20年10月7日付け消防予第257号)によりその徹底をお願いしているところですが、このたび、厚生労働省健康局生活衛生課長から各都道府県衛生主管部長あて「いわゆる個室ビデオ店等に対する旅館業法の適用に関する指導の徹底等について」が別添のとおり通知されました
二つの行政が同時に動いた火災でした。
消防庁は火災直後の平成20年10月に255号257号の通知で緊急調査と対策の徹底を先行して指示していました。
今回の31号通知は、その先の一歩として、旅館業を所管する保健所との連携を正式に求めるものです。
背景には、個室ビデオ店の中に実質的な宿泊サービスを提供している店舗が紛れ込んでいたという実態があります。
つまり消防法だけでなく旅館業法の視点も合わせて店舗を見る必要が出てきたということです。

なんでいきなり消防と保健所が手を組むことになったんや。

大阪の個室ビデオ店火災がきっかけで、消防庁と厚生労働省が同時に動いたんですよ。

どんな個室ビデオ店等がこの連携指導の対象になるのか

個室ビデオ店の個室ブースと宿泊用の部屋を並べて比較している様子
対象になるのは、個室ビデオ店本来の営業だけではありません。
消防法上の区分と、実際にどんなサービスを提供しているかの両方を見る必要があります。
個室ビデオ店等に係る防火安全対策における旅館業行政との連携について これを踏まえ、消防機関の行う立入検査等を通じて、宿泊サービスが提供されている個室ビデオ店等(消防法施行令別表第一(二)項ニに掲げる用途に供されているもの)や、旅館業の許可を受けていないが宿泊サービスを提供しているため消防法施行令別表第一(五)項イとして取り扱うべき施設であるものを把握した場合においても、当該施設等の存する地域を所轄する保健所と連携して指導を行う等、地域の実情に応じて旅館業行政機関との連携を推進されるようお願いいたします。
消防法施行令別表第一(2)項ニ カラオケボックスその他遊興のための設備又は物品を個室(これに類する施設を含む。)において客に利用させる役務を提供する業務を営む店舗で総務省令で定めるもの
消防法施行令別表第一(5)項イ 旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの
区分は「宿泊させているか」で変わります。
個室ビデオ店等は基本的に(2)項ニのカラオケボックス等と同じ区分です。
一方、宿泊の許可を受けずに宿泊サービスを提供していれば、(5)項イの旅館・ホテルと同じ扱いを受けることになります。
この区分は建物の名目ではなく、実際に何を提供しているかで判断されます。
自店がどちらの用途で運用されているかは、設備と表示の両面から確認する必要があります。

うちの店、カラオケボックスの区分と旅館の区分、どっちに当たるんか気になってきたわ。

ベッドを置いたり宿泊を前提にした設備があると、旅館の区分で扱われることがあります。

消防と保健所は何をするよう求められているのか

平らになる椅子と毛布を店員が指差して確認している様子
通知が問題にしたのは、ベッドの有無だけではありません。
「宿泊のように見える」設備や表示そのものが指導の対象になります。
いわゆる個室ビデオ店等に対する旅館業法の適用に関する指導の徹底等について(平成20年12月22日 健衛発第1222001号) 個室にベッドが設置されていたほか、倒すことによりフラットになる椅子の設置、「泊」、「休憩」又は「仮眠」等の表示、タオルケット又は毛布の貸し出しを行っているなどいわゆる宿泊ができる施設であると利用者が誤解を招くおそれがある店舗が認められたところである(略)。いわゆる個室ビデオ店その他利用者がいわゆる宿泊ができる施設として認識している店舗については、関係機関との連携の上、速やかにその営業形態を把握し、旅館業法を適用する必要があると判断された場合は、その施設の衛生措置を適正に講じ国民の公衆衛生の保全を図る必要があることから、旅館業法第2条に規定する宿泊させることを中止するよう指導し、又は同条に規定する宿泊させる営業を続ける意思を有する場合は旅館業法第3条第1項の規定に基づく営業の許可申請を行うよう指導されたい。なお、旅館業法第2条に規定する「宿泊」に該当しない店舗であっても、旅館業法の趣旨等を説明の上、利用者が旅館業法に基づく衛生水準が確保された宿泊施設であると誤解を招くような表示等を行わないよう要請し理解を求められたい
決め手は設備や表示の「見え方」です。
通知が挙げた例は、倒すとフラットになる椅子、「泊」「休憩」「仮眠」の表示、タオルケットや毛布の貸し出しの3つです。
宿泊させる意思がある場合は旅館業法の許可申請を行うよう指導する、というのが基本の対応です。
一方で、宿泊に該当しない店舗であっても、紛らわしい表示をやめるよう理解を求める扱いになっています。
つまり「泊めているつもりがない」という言い分だけでは、指導を避けられないということです。

寝かせるつもりはなくても、毛布を貸してるだけでもあかんのやろか。

「泊」「仮眠」といった表示や毛布の貸し出しだけでも誤解を招くと指摘されています。

実務で見落としやすいのはどこか

個室ビデオ店の調査結果を集計したグラフを確認している様子
実際にどれくらいの店舗が対象になったのか、大阪市の調査結果が参考になります。
数字を見ると、見落としやすいポイントがはっきりします。
個室ビデオ店立入状況(大阪市調査・平成20年10月下旬〜11月中旬) 対象施設数72施設のうち、旅館業法に抵触する施設(ベッドを設置している施設)は4施設にとどまる一方、宿泊と紛らわしい行為が認められた施設は26施設にのぼった。宿泊と紛らわしい行為とは、倒すことによりフラットになる椅子の設置、「泊」「休憩」「仮眠」「モーニングコール」「豪華ホテル並み」等の表示、タオルケット・毛布の貸し出しをいう。特に問題なしは30施設、閉店は12施設であった。
明確な違反より紛らわしい表示のほうが多いのです。
対象72施設のうち、ベッド設置などの明確な違反は4施設にとどまりましたが、紛らわしい行為が見つかった施設は26施設と約36%にのぼりました。
つまり「宿泊させているつもりはない」と考えている店舗のほうが、実際には指導の対象になりやすいということです。
モーニングコールや豪華ホテル並みといった表示、タオルケットの貸し出しといった、接客サービスのつもりでやっている工夫が裏目に出るケースがあります。
自店のサービス内容を、旅館業法の視点で一度見直しておくことが実務上の見落とし防止になります。

うちは特に問題ないと思うんやけど、なにを見落としがちなんや。

大阪の調査でも約36%の店が紛らわしい表示や設備を理由に指導を受けています。

明日からなにを確認すればよいのか

店主がチェックリストを手に個室ビデオ店の設備を確認している様子
最後に、明日から確認できることを整理します。
チェックの視点は大きく3つあります。
個室ビデオ店等に係る防火安全対策における旅館業行政との連携について 各都道府県消防防災主管部長にあっては、貴都道府県内の市町村に対してその旨周知するようお願いします。
まず自分の店の設備と表示を点検してください。
確認する視点は設備表示・区分の3つです。
設備は、リクライニングチェアがフラットになるか、毛布やタオルケットを貸し出していないかを見ます。
表示は、「泊」「休憩」「仮眠」「モーニングコール」のような宿泊を連想させる文言を使っていないかを確認します。
区分に迷う場合は、所轄の消防署と保健所の両方に相談しておくと安心です。

なるほどな、まず自分の店の設備と表示を見直してみるわ。

はい、区分に迷ったら所轄消防署と保健所の両方に相談するのが確実です。

よくある質問

Qうちの店に宿泊させるつもりがなくても対象になりますか?
A毛布の貸し出しや「仮眠」といった表示があるだけでも、旅館業法上の宿泊とみなされる可能性があると指導の対象になり得ます。実際に該当するかどうかは所轄保健所への相談が必要です。
Q個室ビデオ店は消防法上どの区分になりますか?
A基本的には消防法施行令別表第一(2)項ニですが、実質的に宿泊サービスを提供している場合は(5)項イとして取り扱われることがあります。
Q区分によってなにが変わりますか?
A用途区分によって必要な消防用設備や防火管理体制の基準が変わるため、区分の見極めは実務上重要です。詳しい基準は所轄消防署にご確認ください。
Qこの通知は今も参考にできますか?
A通知が引用する消防法施行令別表第一(2)項ニ・(5)項イの区分は現在も同じ内容で存在しており、通知の考え方は現在も参考にできます。

まとめ

きっかけは平成20年10月1日の大阪市個室ビデオ店火災(死者16名・負傷者9名)です。
消防庁は個室ビデオ店等に緊急調査(255号)と対策徹底(257号)を先行して指示しました。
平成21年1月23日消防予第31号で、旅館業行政(保健所)との連携を求めました。
対象は(2)項ニの個室ビデオ店等と、実質的に(5)項イとして扱うべき無許可の宿泊提供施設です。
厚生労働省も同時に旅館業法の適用徹底を都道府県に通知しました(健衛発第1222001号)。
大阪市調査では紛らわしい表示・設備を理由に約36%の施設が指導対象になりました。
自店の設備・表示を点検し、区分に迷えば消防署と保健所の両方に相談することが望ましい対応です。

おかげでうちの店の用途区分が整理できたわ、ありがとうな!

㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 個室ビデオ店等に係る防火安全対策における旅館業行政との連携について(平成21年1月23日 消防予第31号 消防庁予防課長)
  • いわゆる個室ビデオ店等に対する旅館業法の適用に関する指導の徹底等について(平成20年12月22日 健衛発第1222001号 厚生労働省健康局生活衛生課長)
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第一(2)項ニ・(5)項イ
  • 消防組織法第37条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
個室ビデオ店はなぜ旅館業法とも向き合うことになったのか|大阪の火災後に消防と保健所が連携した通知を解説
大阪市の個室ビデオ店で起きた火災をきっかけに、消防庁と厚生労働省が動きました。 個室ビデオ店は消防法上カラオケボックスと同じ区分ですが、宿泊サービスを提供していれば旅館やホテルと同じ扱いを受けることがあります。 平成21...
リクルート 採用情報はこちら →
採用ページ 一緒に働く仲間を募集中 → フランチャイズ (株)防災屋と一緒に開業する → 協力業者 協力業者さん募集中 →