障害者のグループホームやケアホームは、少人数が同じ建物で共同生活する点で高齢者施設とよく似ています。
平成22年3月、北海道札幌市の認知症高齢者グループホームで死者7名を出す火災が発生し、消防庁は緊急調査に乗り出しました。
調査の結果、障害者のケアホームでも消防法令違反が多数見つかり、避難訓練のやり方そのものが問われることになりました。
この記事では、通知が求める訓練の留意点と、明日から確認できることを解説します。
うちの事業所では年に1回、避難訓練をやっています。
それで十分ですよね。
実施しているだけでは足りません。
時間内に避難できたかどうかの確認まで求められています。
できなかった場合はどうすればいいんですか。
通知が示す手順に沿って、順番に確認していきましょう。
- 平成22年の札幌市認知症高齢者グループホーム火災を受けた緊急調査で、障害者のケアホームでも消防法令違反が50%を超えていた実態が判明しました
- 対象は障害者のグループホーム・ケアホームです
- 訓練で入所者の代わりにダミー人形を使う場合も、実際の歩行速度や介助の手順をできる限り再現する必要があります
- 避難目標時間内に完了できなかった場合は要因を検討し、改善後に再度確認するまでが訓練です
- 明日からは夜間の施錠状況の再現と近隣協力者への参加呼びかけを確認します
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目次
障害者グループホームの避難訓練はなぜ徹底を求められることになったのか

きっかけになった火災と、その後の調査結果を確認します。
平成18年の長崎県大村市の火災、平成21年の群馬県渋川市の火災に続き、平成22年3月には札幌市で死者7名を出す認知症高齢者グループホーム火災が発生しました。
消防庁は「小規模社会福祉施設等の防火対策に係る緊急調査」を実施し、その結果を踏まえて防火安全対策の更なる徹底を求めました。
この流れの中で、厚生労働省とも連携し、障害者のグループホーム・ケアホームについても同様の通知が出されています。
まずはこの通知が「繰り返された火災への危機感から出された」ものだと押さえておきます。
認知症高齢者の施設の話なのに、なぜ障害者のグループホームにも関係するんですか。
少人数の共同生活という建物の性格が同じだからです。
実際に緊急調査の対象にもなりました。
どの施設のどんな実態が調査で分かったのか

調査で明らかになった実態を見ておきます。
障害福祉サービスの運営基準が求める避難訓練でさえ、未実施が各地で20%を超えていました。
消防法令上の違反となると、障害の程度が重い方が入居するケアホームで50%を超えるという結果です。
規模の小さい施設ほど、防火管理の体制づくりが後回しになりやすいことがうかがえます。
自分の事業所がこの実態に当てはまっていないか、まず疑って確認する姿勢が必要です。
半数以上が違反というのは、ずいぶん高い割合ですね。
だからこそ、訓練のやり方そのものまで踏み込んだ指導が必要になりました。
訓練でダミー人形を使うときに何が求められるのか

そのときの対応が、通知でくわしく示されています。
体調不良や身体状況を理由に参加できない入所者がいる場合、職員の代役やダミー人形での代替が認められています。
ただし、実際の歩行速度をできる限り再現し、介助に必要な安全確認の手順を省略しないことが条件です。
軽く運べば終わりという扱いでは、実際の避難にかかる時間を正しく測れません。
参加できない入所者がいることを前提に、訓練の設計そのものを工夫する必要があります。
ダミー人形なら軽いので、職員だけでさっと運べてしまいます。
それでは訓練の意味が薄れてしまいます。
実際の介助手順を省略せず行ってください。
避難目標時間内に終わらなかったらどうするのか

時間内に終わらなかったときの対応まで、通知は求めています。
訓練を実施したら、まず避難目標時間内に対応行動が完了できたかどうかを確認します。
完了できなかった場合は、どこで時間がかかったのかという要因の検討が必須です。
改善したら、それで満足せず再度効果確認を行い、まだ時間内に収まらなければさらに改善を続けます。
訓練の実施記録には、この確認と改善のやり取りまで残しておくことが重要です。
時間内に収まらなかったら、その場で終わりにしてはいけないんですね。
はい。
改善して再確認するところまでが一連の訓練です。
明日からなにを確認すればよいのか

通知が挙げる留意点は、そのまま自己点検リストとして使えます。
まず、施錠や防火戸の開閉状況は夜間の状況を想定して再現できているかを見直します。
次に、自力避難困難な入所者の搬送方法に無理がないかを、実態に即して確認します。
そのうえで、近隣協力者がいる場合は通報連絡の手順を共有し、訓練への積極的な参加を働きかけます。
効果確認と改善のサイクルを含め、この3点を次の訓練から取り入れてみてください。
つまり、訓練をやったかどうかではなく、時間内にできたかどうかまで確認するということですね。
そのとおりです。
次の訓練から3点を確認してみてください。
よくある質問
まとめ
訓練は時間内にできたかどうかまで確認すればいいんですね。
次の訓練から見直してみます。
はい。
夜間の施錠状況と近隣協力者もあわせて確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 社会福祉施設等に係る防火対策の更なる徹底について(平成22年3月13日 消防予第130号 消防庁予防課長)
- 「障害者のグループホーム・ケアホームにおける防火安全対策の徹底について」(平成22年6月25日付け厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課事務連絡)等について(平成22年6月25日 事務連絡 消防庁予防課)
- 消防法第8条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





