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百貨店やマーケットのスプリンクラーはなぜ面積基準が半分になったのか|(4)項の設置義務と対象拡大の考え方を解説

百貨店やマーケットのスプリンクラーはなぜ面積基準が半分になったのかを解説する記事のアイキャッチ画像

百貨店やマーケットのスプリンクラー設備は、延べ面積3,000平方メートル以上で設置義務が生じます。
以前は6,000平方メートル以上が基準でしたが、平成2年の消防法施行令改正で基準が引き下げられました。
背景には尼崎市で起きた百貨店火災があり、以後も同じ延べ面積の基準が病院の一部にまで広がっています。
今回は(4)項の建物がどこまでスプリンクラー設備を求められるのか、条文にそって整理します。

うちのテナントビルは物品販売の店が多いんですが、スプリンクラーは何平方メートルから要るんでしたっけ。
昔聞いた基準と数字が違う気がして不安です。

実は基準そのものが平成2年に引き下げられているんです。
以前の記憶のままだと、設置義務のある建物を見落とすことがあります。

そうなんですか。
うちのビルは平屋建じゃないので、対象になるか改めて確認したいです。

それがちょうど今日お伝えしたい内容です。
条文の要件を順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • (4)項のスプリンクラー設置基準は消防法施行令第12条第1項第4号に定められている
  • 平成2年の消防法施行令改正で、基準面積が6,000平方メートル以上から3,000平方メートル以上へ引き下げられた
  • 対象になるのは平屋建以外の百貨店、マーケット、物品販売店舗、展示場である
  • 同じ3,000平方メートルの基準は(6)項イ(1)から(3)までの病院にも適用される
  • 既存建物の経過措置は平成8年11月30日で終了しており、現在は猶予がない

平成2年の百貨店火災を契機に消防法施行令が改正されスプリンクラー設備の設置基準が6,000平方メートルから3,000平方メートルに引き下げられた経緯を示す図解

なぜ百貨店やマーケットのスプリンクラー基準は引き下げられたのか

巻尺で測られる大きな百貨店の建物
平成2年3月、兵庫県尼崎市の百貨店で発生した火災を機に、基準の見直しが行われました。
以前は延べ面積6,000平方メートル以上とされていた設置義務のラインが、大きく動いています。
消防法施行令別表第一(4)項 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗又は展示場
この改正で百貨店等のスプリンクラー設置基準は3,000平方メートル以上に引き下げられました。
消防庁が公表している資料でも、この改正は百貨店火災を踏まえた設備基準強化のひとつとして整理されています。
改正前は複合用途の建物の一部に限られていた3,000平方メートルの基準が、百貨店等の単独用途にも及ぶようになりました。
延べ面積が基準の近くにある店舗ほど、現行の数字で確認し直す必要があります。
まずは自分の建物が令別表第一のどこに当たるかを押さえておきましょう。

6,000平方メートルという数字で覚えていました。
古い知識のままだと危ないですね。

基準は法令改正のたびに動くので、条文で確認する癖をつけるのが安心です。

(4)項とはどんな建物を指すのか

物品販売業の店舗と展示場の建物
(4)項は名前のとおり物を売る店舗を中心にした区分ですが、展示場も同じ枠に入ります。
まずはこの区分の定義そのものを確認しましょう。
消防法施行令別表第一(4)項 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗又は展示場
百貨店だけでなくマーケットや一般の物品販売店舗、展示場もすべて(4)項として扱われます。
条文には規模の下限が書かれていないため、小さな小売店も同じ区分に入ります。
展示場は常設の見本市会場だけでなく、商品の展示を主目的とする施設も含まれると解されています。
用途の実態で判断されるため、店舗の名称だけで区分を決めつけないことが大切です。
次の章では、この(4)項のうちどこまでがスプリンクラー設備の設置義務を負うのかを見ていきます。

展示場も同じ区分だったんですね。
知りませんでした。

名称ではなく実態で判断される点は、立入検査でもよく確認されるところです。

延べ面積の基準は具体的にいくつなのか

平屋建の小さな店舗と多層階の大きな店舗
条文には(4)項以外の用途もまとめて書かれているため、数字を読み違えやすいところです。
自分の建物がどちらの基準に当てはまるかを、条文どおりに確認しましょう。
消防法施行令第12条第1項第4号(抜粋) 別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項及び(九)項イに掲げる防火対象物のうち、平屋建以外の防火対象物で、総務省令で定める部分以外の部分の床面積の合計が、同表(四)項及び(六)項イ(1)から(3)までに掲げる防火対象物にあつては3,000平方メートル以上、その他の防火対象物にあつては6,000平方メートル以上のもの
(4)項と(6)項イ(1)から(3)までの病院だけが3,000平方メートルで、それ以外は6,000平方メートルのままです。
つまり同じ第12条第1項第4号の中でも、用途によって基準面積が二段階に分かれています。
劇場や飲食店、旅館などは改正の対象に入っておらず、従来どおり6,000平方メートルが基準になります。
床面積は総務省令で定める部分を除いて合計するため、単純な建物全体の延べ面積とは一致しないことがあります。
自分の建物がどちらの数字に当たるかは、用途区分を先に確定させてから判断してください。

同じ号の中でも数字が違うなんて、条文だけ見ていたら混乱しそうです。

用途区分を先に固めてから面積を当てはめると、迷いにくくなりますよ。

実務で見落としやすいのはどこか

建物に取り付けられるスプリンクラーヘッドとカレンダー
見落としが起きやすいのは、平屋建の扱いと既存建物の経過措置の二つです。
どちらも条文の読み方を誤ると判断を間違えます。
消防法施行令第12条第1項第4号(抜粋) (略)のうち、平屋建以外の防火対象物で(略)
平屋建の店舗はこの号の対象から外れますが、他の号や特例が別に及ぶことがあります。
「平屋建だから設備は要らない」と決めつけず、他の設置義務が無いかを確認してください。
既存の建物にも当時は経過措置がありましたが、その期限は平成8年11月30日で終了しています。
経過措置の期限が終わっている以上、今の延べ面積が基準を超えていれば設置義務は現在進行形で生じています。
古い改修計画のまま止まっている建物がないか、この機会に棚卸ししておくと安心です。

うちは平屋建だから関係ないと思っていました。
他の号も見ておいたほうがよさそうです。

一つの号だけで判断せず、建物全体で確認するのがおすすめです。

明日からなにを確認すればよいのか

見取り図を確認する人物と消防署への電話
条文の数字を確認できたら、次は自分の建物に当てはめる作業です。
順番に押さえておくべきポイントを整理します。
  • 建物の用途が令別表第一(4)項に当たるかを見取り図で確認する
  • 総務省令で定める部分を除いた延べ面積の合計を算定し直す
  • 平屋建か平屋建以外かを建築図面で確認する
  • 3,000平方メートルに近い建物は増床や用途変更の予定も含めて点検する
延べ面積が基準に近い建物ほど、早めに所轄消防署へ相談しておくことが実務の近道です。
図面上の数字と現況が一致しているかも、あわせて確認しておきましょう。
用途変更や増改築の予定がある場合は、計画の段階で基準への該当を確認するのが安全です。
点検のたびに数字を洗い直す習慣をつけておけば、改正があっても慌てずに対応できます。

まずは見取り図を引っ張り出して、面積を数え直してみます。

それが一番確実な一歩です。
一緒に確認していきましょう。

よくある質問

Q展示場も(4)項に含まれますか?
Aはい、展示場は百貨店やマーケットと同じ(4)項に区分されます。物品を売る店舗と展示場は用途の性質が近く、同じ延べ面積基準が適用されます。
Q平屋建の店舗もこの基準の対象になりますか?
Aいいえ、第12条第1項第4号は平屋建以外の防火対象物を対象にしています。平屋建の店舗はこの号の対象外ですが、他の号や特例の対象になる場合があるため個別の確認が必要です。
Q複数のテナントが入る商業ビルではどう面積を数えますか?
A同じ建物内で(4)項の用途に供される部分の床面積を合計して判定します。他の用途と混在する場合は、用途ごとの取り扱いを所轄消防署に確認してください。
Q平成8年11月30日の経過措置期限を過ぎた既存の店舗はどうなりますか?
A経過措置は既に終了しており、現在は基準を満たす延べ面積であればスプリンクラー設備の設置義務が生じます。未設置のまま基準に該当する場合は早急な対応が必要です。

まとめ

消防法施行令第12条第1項第4号が(4)項のスプリンクラー設置基準を定めている
(4)項は百貨店、マーケット、物品販売店舗、展示場を指す
平成2年の消防法施行令改正で6,000平方メートル以上から3,000平方メートル以上に引き下げられた
対象は平屋建以外の防火対象物に限られる
同じ3,000平方メートルの基準は(6)項イ(1)から(3)までの病院にも適用される
既存施設の経過措置は平成8年11月30日で終了している
延べ面積が基準に近づいたら早めに所轄消防署へ確認するのが実務の基本になる

基準がいつの間にか変わっていることがあると分かって、勉強になりました!
まずはうちの店舗の延べ面積を数え直してみます!

数字を早めに確認しておけば、いざというときも慌てずに済みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第12条(e-Gov法令検索)
  • 消防法施行令別表第一(e-Gov法令検索)
  • 総務省消防庁予防課「社会情勢の変化等に対応した消防用設備や防火管理のあり方」(平成30年7月23日)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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