ハロゲン化物消火設備の貯蔵容器室をのぞくと、起動装置のレバーを引いてもすぐには消火剤が放出されない仕組みが備わっていることがあります。
消防法施行規則は、全域放出方式のハロゲン化物消火設備に二十秒以上の遅延装置を義務づけ、その間に人が防護区画から退避できるようにしています。
ところが同じハロゲン化物消火設備でも、ハロン一三〇一を放射するものだけは、この遅延装置と音響警報の一部を省略してよいと条文に定められています。
この記事では、ハロゲン化物消火設備の起動から放射までの仕組みと、ハロン一三〇一だけに認められた例外を、消防法施行規則の条文から解説します
うちのハロゲン化物消火設備、起動レバーの脇にタイマーみたいな部品が付いているんです。
これは何のためですか。
起動から二十秒以上、消火剤の放出を遅らせる遅延装置です。
その間に、防護区画の中にいる人が退避します。
うちはハロン一三〇一を使っているんですが、この部品が見当たらないんです。
ハロン一三〇一を放射するものだけは、条文上、遅延装置を設けないことができます。
他のハロン系とは扱いが違います。
- 全域放出方式のハロゲン化物消火設備は、起動から二十秒以上の遅延装置を設けることが原則である
- 手動起動装置にはその時間内に消火剤が放出しない措置を、防護区画の出入口には放出を知らせる表示灯を設ける
- 貯蔵容器の容器弁は内圧力1メガパスカル以上の蓄圧式のものに、圧力調整装置は加圧式のものに2メガパスカル以下で必要になる
- ハロン一三〇一を放射するものだけ、遅延装置と音声による警報を省略できる
- ハロン二四〇二・ハロン一二一一やHFC系の消火剤には、この省略は認められていない
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目次
ハロゲン化物消火設備はどうやって起動するのか

まずはどちらの方式で起動するのかを見ておきます。
手動式の場合、防護区画外で内部を見通せる場所で、床面から高さ0・8メートル以上1・5メートル以下の箇所に設け、外面は赤色にすることが求められます。
起動装置の放出用スイッチや引き栓は、音響警報装置を起動する操作を行った後でなければ操作できない構造にしなければなりません。
自動式の場合は、自動火災報知設備の感知器と連動して起動するものとし、容易に操作できる場所に自動と手動を切り替える装置を設けます。
準用元には二酸化炭素消火設備だけに求められる項目(二以上の火災信号による起動など)も含まれますが、条文はその部分を除いて準用しています。
起動装置は基本的に手で操作するものなんですね。
はい。
常時人のいない場所などを除いて、手動式が原則です。
全域放出方式にはなぜ二十秒の遅延装置が必要なのか

条文は、人が退避する時間を確保するための仕組みを義務づけています。
起動装置の放出用スイッチや引き栓を操作しても、二十秒以上は容器弁や放出弁が開かない構造になっています。
この時間内は手動起動装置を操作しても消火剤が放出しないような措置も、あわせて求められます。
そして防護区画の出入口など見やすい場所には、消火剤が放出された旨を知らせる表示灯を設けなければなりません。
点検では、この表示灯が実際に放出動作と連動して点灯するかを確認します。
この二十秒という数字は、条文にそのまま書いてあるんですか。
はい。
二十秒以上という時間そのものが条文に明記されています。
貯蔵容器の容器弁と圧力調整装置はどんな基準か

蓄圧式は貯蔵容器にあらかじめ消火剤と圧縮ガスを充てんしておく方式で、内圧力が高いものに限って容器弁の設置が条文で義務づけられています。
一方、加圧式は起動時に別の加圧用ガスを送り込む方式で、貯蔵容器等に想定を超える圧力がかからないよう2メガパスカル以下に調整できる圧力調整装置を設けます。
同じ加圧式でも粉末消火設備の圧力調整器は2・5メガパスカル以下が基準で、数値はハロゲン化物消火設備のほうが低く定められています。
点検では、蓄圧式か加圧式かによって確認すべき部品が異なる点に注意します。
うちの設備は蓄圧式なのか加圧式なのか、どこで分かるんでしょうか。
点検票や設計図書に記載がありますので、点検資格者に確認するのが確実です。
ハロン一三〇一だけ遅延装置と音響警報を省略できるのはなぜか

同じハロン系のハロン二四〇二やハロン一二一一を放射するものには、この省略のただし書きは適用されず、二十秒以上の遅延装置が原則どおり必要です。
またHFC―二三・HFC―二二七ea・FK―五―一―一二といったHFC系の消火剤は、そもそも遅延装置に関する規定自体が準用されていません。
条文はその理由までは書かれていませんが、消火剤ごとに保安措置の扱いが区別されていることは条文の準用先を見比べると読み取れます。
点検や巡視で、他のハロン系や二酸化炭素消火設備と同じ表示や装置をハロン一三〇一の設備にも探してしまうと、条文には無いものを探すことになるため注意します。
ハロン一三〇一だけ特別扱いなのは、なにか理由があるんですか。
条文はその理由までは示していませんが、ハロン一三〇一だけに認められた例外であることは間違いありません。
点検のときになにを確認すればよいのか

条文の内容を踏まえて、確認の観点を整理します。
- 設備がハロン二四〇二・ハロン一二一一・ハロン一三〇一のどれを放射するものかを、まず確認する
- ハロン一三〇一以外は、二十秒以上の遅延装置と放出後の表示灯が設けられているか
- ハロン一三〇一の設備で遅延装置が省略されていても、条文どおりの扱いかを確認する
- 貯蔵容器が蓄圧式か加圧式かによって、容器弁または圧力調整装置のどちらを見るべきかが変わる
- 起動装置の放出用スイッチが、音響警報装置を起動した後でなければ操作できない構造になっているか
ハロン一三〇一だけの例外を知らないまま点検表を見ると、遅延装置が無いことを不備と誤解してしまうおそれがあります。
逆に、ハロン二四〇二やハロン一二一一の設備で遅延装置が省略されていれば、それは条文に反する状態です。
消火剤の種類ごとに準用範囲が違うことを踏まえたうえで、点検結果を読み合わせることが大切です。
同じ設備でも、薬剤の種類まで確認しないといけないんですね。
はい。
薬剤の種類ごとに条文が違いますので、点検表もその設備に合ったものかを確認しています。
よくある質問
まとめ
薬剤の種類ごとに確認するポイントが分かりました!
ハロゲン化物消火設備の点検でご不明な点があれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則第二十条第四項第八号・第九号・第十二号の二・第十三号・第十四号(ハロゲン化物消火設備の技術上の基準)
- 消防法施行規則第十九条第五項第十四号・第十五号・第十六号・第十七号(不活性ガス消火設備の技術上の基準。ハロゲン化物消火設備が準用する規定)
- 消防法施行令第十二条(消火設備に関する基準)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





