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イベント民泊はなぜ消防法上の旅館業に当たらないのか|自治体主導の自宅提供が対象になる条件を解説

イベント民泊はなぜ消防法上の旅館業に当たらないのかを解説する記事のアイキャッチ画像

大規模なイベントが開催される街では、宿泊施設が足りなくなることがあります。
そんなとき自治体が住民に呼びかけ、自宅の一部を旅行者に貸し出してもらう「イベント民泊」が行われることがあります。
宿泊施設のように見えても、消防法施行令が定める旅館やホテルとは扱いが分かれます。
年に1回程度の一時的な利用にとどまるかどうかが、その分かれ目になっています。

「イベント民泊」という言葉を最近聞くようになりました。
うちの自治体でも実施されると聞いて、消防法上どう扱われるのか気になっています。

年に1回程度・数日間だけの一時的な利用であれば、旅館やホテルと同じ扱いにはなりません
ただし住宅用火災警報器や消火器の備えは指導されています。

自宅を提供する側にも、何か条件があるのでしょうか。

自治体の公募を通じた要請が前提で、いくつかの要件が定められています。
順に見ていきましょう。

この記事の結論
  • イベント民泊は、年1回程度・数日間の一時利用であれば消防法施行令別表第一(5)項イ(旅館・ホテル等)に該当しないとされています
  • 該当しない代わりに、住宅用火災警報器の設置・維持や消火器の設置が指導されます
  • 自宅提供者は自治体の公募・要請を通じた参加が前提で、反社会的勢力に該当しないことなど複数の要件があります
  • 「民泊サービス」向け注意喚起リーフレットの活用が指導されますが、最終ページの消防用設備等の記載はイベント民泊には該当しません
  • 住宅宿泊事業法に基づく届出住宅とは別枠の取扱いなので、混同しないよう注意が必要です

イベント民泊は年に1回程度の一時利用なら消防法上の旅館ホテルにはあたらない流れを示した図解

イベント民泊はなぜ消防庁が防火安全対策を示すことになったのか

イベント会場に近い住宅街で自治体職員が住民に書類を手渡すイメージ
大規模なイベントが開催される地域では、来場者の宿泊需要が一時的に膨れ上がります。
既存の宿泊施設だけでは対応しきれず、自治体が住民の自宅を借りて旅行者に提供する取り組みが広がってきました。
イベント民泊における防火安全対策の推進について 年1回のイベント開催時に自治体の要請等により自宅を旅行者に提供する行為(以下「イベント民泊」という。)について、今般、観光庁観光産業課及び厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生課において「イベント民泊ガイドライン」がとりまとめられ(略)通知されたので、お知らせします。つきましては、同ガイドラインに基づき観光部署及び旅館業法担当部署からの相談等があった場合は、適切に対応いただくとともに、下記に留意の上、住宅宿泊事業法における防火安全対策を推進いただきますようお願いします。(平成28年4月1日 消防予第106号 消防庁予防課長)
観光庁と厚生労働省が先にガイドラインを整理し、消防庁がそれを追いかける形で通知を出しました。
背景にあるのは、大規模イベント開催時の宿泊施設不足という現実的な課題です。
自治体が仲介役となって住民の自宅を一時的な宿泊先として活用する仕組みが、観光庁・厚生労働省の共同ガイドラインとしてまとめられました。
消防庁はこれを受けて、消防法令上の取扱いと防火安全対策の留意点を都道府県の消防防災主管部長あてに通知しました。
イベント民泊ガイドラインという枠組みは、こうして観光・衛生・消防の3部署が連携するかたちで整えられています。

イベント民泊は、いつ頃から行われるようになったのでしょうか。

大規模イベントで宿泊施設が不足する地域で活用されてきました。
今回の通知は平成28年に出されたものです

どんなイベント民泊が消防法上の対象になるのか

カレンダーに一度だけ丸を付けたイベント日と鍵を差し出す住民のイメージ
どんな住宅提供でもイベント民泊として扱われるわけではありません。
通知は、対象となる行為の範囲を具体的な条件で区切っています。
用途の取扱い 年1回(2〜3日程度)のイベント開催時のみの使用であり、宿泊が継続して行われないことから、消防法施行令別表第一(5)項イに該当しないものとする
(5) イ 旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの(消防法施行令別表第一)
年に1回・数日間という頻度と期間の短さが、扱いを分ける条件そのものです。
イベント開催の前後の日を含めてイベント民泊を実施できる期間として定めることができ、開催期間が数日でも前後を合わせて1週間程度の幅が認められています。
自宅提供者には、対象の自宅について権原を有すること、反社会的勢力に該当しないこと、同一自治体で1年の間に他のイベントについてイベント民泊を実施したことがないことなど、いくつかの募集要件が示されています。
対象地域を限定して募集することも可能とされています。
継続的に人を泊める通常の宿泊業とは、この時点で明確に区別されています。

年に1回だけなら、うちの自治体でも参加できそうですね。

権原の確認や反社会的勢力の排除など、募集の要件も定められています。
次は消防法上どんな対応が求められるかを見ていきましょう

通知は消防法上どんな対応を求めているのか

寝室の天井の警報器とキッチン脇に置かれた消火器を並べたイメージ
別表第一(5)項イに該当しないとされても、何もしなくてよいわけではありません。
通知は防火安全対策として2つの点を指導するよう求めています。
防火安全対策の推進 (1)消防用設備等 以下の点について指導されたいこと。 ア 自動火災報知設備等が設置されていない場合は、各市町村の火災予防条例に基づき住宅用火災警報器の設置及び維持を適切に行うこと。 イ 消火器の設置が推奨されること。
設備の設置義務がない代わりに、住宅用火災警報器と消火器という基本の備えが求められています。
自動火災報知設備等がすでに設置されている住宅であれば、そのままで足ります。
無い場合は、市町村の火災予防条例に基づく住宅用火災警報器の設置・維持を行うことが指導内容です。
消火器についても設置が推奨されており、義務ではないものの備えておくことが望ましいとされています。
このほか、「民泊サービス」向けの注意喚起リーフレットを活用した防火管理面の指導も行われることになっています。

住宅用火災警報器なら、もう寝室には付けているのですが。

それで足ります
台所やガレージへの追加は義務ではありませんが、消火器とあわせて備えておくと安心です。

イベント民泊で見落としやすいのはどこか

リーフレットを読む手と丸印が並んだ繰り返しの予定表を並べたイメージ
一時的な利用だからこそ、見落としやすい落とし穴もあります。
通知の記載を丁寧に読み解くと、注意すべき点が見えてきます。
なお、当該リーフレット本体の最終ページに消防用設備等の設置等に係る記載があるが、イベント民泊は該当しないため留意すること
配布されるリーフレットの記載を、そのまま自分の住宅に当てはめないことが重要です。
「民泊サービス」向けリーフレットの最終ページには消防用設備等の設置に関する記載がありますが、これは通常の民泊向けの内容で、イベント民泊には該当しません
また、別表第一(5)項イに該当しないとされるのは、あくまで年1回・数日間という一時性が前提です。
同じ住宅で年に何度も繰り返せば、実質的に旅館業や住宅宿泊事業法の対象に変わり得ます。
住宅宿泊事業法に基づく届出住宅は別の通知で扱いが整理されているため、イベント民泊と混同しないよう注意してください。

リーフレットに設備のことが書いてあったので、うちも工事が必要かと思っていました。

それはイベント民泊には当てはまりません。
年に1回という前提を外れていないかだけ確認してください

明日から何を確認すればよいのか

チェックリストを持つ住民と消防署に電話で確認する住民のイメージ
ここまでの内容を、実際の確認作業に落とし込みます。
自治体の担当者と自宅提供者、それぞれの立場で確認することがあります。
各都道府県消防防災主管部長にあっては、貴道府県内の市町村(消防の事務を処理する一部事務組合等を含む。)に対しても、この旨周知されるようお願いします
自治体側と住民側、双方が確認すべき項目は分かれています。
自治体の担当者は、観光部署・旅館業法担当部署からの相談内容を踏まえ、募集要件と防火安全対策の指導内容を市町村へ周知します。
自宅提供者になる住民は、まず自宅に自動火災報知設備等があるかを確認します。
無ければ住宅用火災警報器を設置し、あわせて消火器を備えます。
イベント終了後は通常の住宅利用に戻し、同じ自治体で1年の間に重ねて実施しないという条件も忘れずに確認してください。

まずは自宅に自動火災報知設備があるかどうか、確認してみます。

それが最初の一歩です。
無ければ住宅用火災警報器と消火器を備えてください

よくある質問

Qイベント民泊を実施すると旅館業の営業許可が必要になりますか?
A消防法上は年1回程度・数日間の一時利用であれば別表第一(5)項イ(旅館・ホテル等)に該当しないとされています。旅館業法上の取扱いは観光庁・厚生労働省のイベント民泊ガイドラインで別途整理されています。
Qイベント民泊でも住宅用火災警報器は必要ですか?
A自動火災報知設備等が設置されていない場合は、市町村の火災予防条例に基づく住宅用火災警報器の設置・維持が指導されます。
Q誰でもイベント民泊の自宅提供者になれますか?
A自治体の公募・要請を通じた参加が前提で、対象の自宅について権原を有することや反社会的勢力に該当しないことなどの要件があります。
Q住宅宿泊事業法の届出住宅とイベント民泊は同じ扱いですか?
A別の制度です。住宅宿泊事業法に基づく届出住宅に係る消防法令上の取扱いは、別の通知で整理されています

まとめ

イベント民泊は、年1回程度・数日間の一時利用であれば消防法施行令別表第一(5)項イ(旅館・ホテル等)に該当しないとされています
用途の判断基準は、宿泊が継続して行われるかどうかという頻度と期間そのものです
該当しない代わりに、住宅用火災警報器の設置・維持と消火器の設置が指導されます
自宅提供者は自治体の公募・要請を通じた参加が前提で、権原の確認や反社会的勢力の排除などの要件があります
「民泊サービス」向けリーフレット最終ページの設備記載は、イベント民泊には該当しません
同じ住宅で年に何度も繰り返せば、扱いが変わり得ることに注意が必要です
住宅宿泊事業法に基づく届出住宅とは別枠の取扱いなので、混同しないようにします

年に1回という条件さえ守れば、うちの自治体でも協力できそうです!

住宅用火災警報器と消火器の備え、そして頻度の確認を忘れないでください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • イベント民泊における防火安全対策の推進について(平成28年4月1日 消防予第106号 消防庁予防課長)
  • 消防法施行令別表第一(5)項イ

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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