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放火火災はなぜ地域ぐるみで防ぐ必要があるのか|消防庁が示した4つの重点対策を解説

静かな住宅街の街並みの外観

空き地の枯草や放置されたパレットだけが、放火の火種になるわけではありません。
全国の放火(放火の疑いを含む)火災は、平成5年に前年比9.7%増え、全出火件数のおよそ2割を占めていました。
消防庁はこの傾向を受けて、住民や事業所、自治会までも巻き込んだ対策を都道府県に求めています。
消防庁は平成6年の通知で、地域ぐるみで放火を防ぐ4つの重点対策を示しました

うちの近くにも、長いこと空き家になったままの家があります。
放火と聞くとうちも心配になってきました。

空き家だけでなく、住民や事業所を巻き込んだ地域ぐるみの対策が必要です。
まずは通知が示した4つの柱を見ていきましょう。

自治会や、車のカバーまで放火対策に関係あるんですか。

はい、身近なところにも対策のヒントがあります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 消防庁は平成6年の通知(消防予第42号)で、地域ぐるみで放火を防ぐ4つの重点対策を示しました
  • 背景には平成5年の全国の放火(放火の疑いを含む)火災が前年比9.7%増加し全出火件数の19.9%を占めたという状況があります
  • 対策の柱は地域環境づくり・広報・空家の管理・車両への放火防止の4つです
  • 空家の管理は通知の呼びかけの先に火災予防条例が定める法的な義務が控えています
  • 広報と車両対策は普及促進のレベルにとどまり、義務づけではありません

放火を防ぐ地域ぐるみの重点対策を地域環境づくり広報空家の管理車両対策の4ステップで示し空家の管理は呼びかけであり法的な義務ではないという結論を示す図解

放火及び放火の疑いの火災はなぜ全国的な運動の重点になったのか

崩れかけたゴミの山に小さな火花が見えるイメージと右肩上がりの棒グラフを見比べるイメージ
放火は、春や秋の全国火災予防運動でも毎回取り上げられてきたテーマです。
それでも、平成に入ってからの数字は下がるどころか増え続けていました。
「放火火災予防対策の推進について」(平成6年2月24日 消防予第42号 消防庁予防課長通知)=放火による火災の予防対策については、従来から春及び秋の全国火災予防運動における重点事項として「地域における防火安全体制の充実」を掲げ、放火防止対策の推進を図ってきたところであるが、近年の放火及び放火の疑いによる火災の傾向をみると、年々増加の一途をたどっている。特に、平成5年中における全国の放火(放火の疑いを含む。)火災件数(概数)は別添資料のとおり、11,307件で全出火件数の19.9%を占め、前年比で9.7%増加しており、看過し難い事態となっている
数字が示すのは、対策の緩みではなく状況の悪化です。
19.9%という割合は、火災のおよそ5件に1件が放火またはその疑いだったことを意味します。
しかも前年比で9.7%増加という伸び方は、一過性ではなく傾向として拡大していたことを示しています。
だからこそ消防庁は、都道府県任せにせず貴管下市町村への示達まで求める通知を出しました。

放火なんて、うちには関係ない話だと思っていました。

全国的に増えていた時期があり、地域ぐるみの対策が求められました。
まずは通知の狙いを見ていきましょう。

放火されにくい地域環境づくりでなにが求められているのか

簡単な人型が輪になって座る様子と住宅を背景にしたイメージと名刺入れを持つ事業所の担当者が小さな社屋のそばに立つイメージを見比べる図
通知の一番目に置かれているのが、地域環境づくりです。
主語は消防機関ではなく、住民や事業所そのものになっています。
「放火火災予防対策の推進について」(平成6年2月24日 消防予第42号)記=1 放火されにくい地域環境づくりの推進 放火の危険から地域社会を守るためには、住民、事業所、関係機関等が一体となって、放火されにくい地域環境をつくりだす必要があることから、地域の実情に即し、町内会、自治会、自主防災組織、事業所、関係機関等との連携、協力体制を確立し、地域に密着した放火火災予防対策を推進する。
主役は消防機関ではなく地域そのものです。
挙げられている連携先は町内会・自治会・自主防災組織・事業所・関係機関の5者で、防火管理者が単独で担う話ではありません。
自分のビルや施設が、こうした地域の輪の中でどんな役割を持てるかを考えるところが出発点になります。
消防計画にも、地域との連絡体制の一項目として書き込める内容です。

自治会や自主防災組織との連携なんて、うちの防火管理の仕事の範囲外だと思っていました。

通知は住民・事業所・関係機関が一体となることを求めています。
次は具体的な広報と車両対策を見ていきます。

広報の推進と車両への放火防止でなにが求められているのか

メガホンを持つ手とパンフレットスタンドを見比べるイメージとボディーカバーを掛けた自動車とオートバイを見比べるイメージ
2番目と4番目の柱は、どちらも呼びかけ型の対策です。
広報と車両対策は、特別な設備投資をしなくても始められます。
「放火火災予防対策の推進について」(平成6年2月24日 消防予第42号)記=2 広報の推進 放火火災の予防についての意識を向上させるため、行政機関の広報紙、パンフレット等による広報を推進するほか、地域の防犯コミュニティーを中心とした広報活動の実施を呼びかけるなど、放火予防に係る広報の効果的な推進を図る。/4 車両への放火防止対策の推進 車両への放火防止対策を推進するため、自動車、オートバイ等のボディーカバーを防炎製品に替えるなど普及促進を図る。
どちらも「〜を呼びかける」「〜の普及促進を図る」という表現にとどまっています。
広報は行政機関の広報紙やパンフレットに加えて、地域の防犯コミュニティーを巻き込むところまでが対象です。
車両対策は自動車やオートバイのボディーカバーを防炎製品に替えるという、駐車場や車庫を持つ施設ならすぐに検討できる中身です。
義務ではなく普及促進のレベルなので、防火管理者としては「できるところから」着手すれば足ります。

駐車場のカバーまで気にする必要があるとは思っていませんでした。

あくまで普及促進の呼びかけで義務ではありません
次は空家の管理について見ていきます。

空家の管理はなぜ通知だけでなく条例も確認する必要があるのか

施錠された空き家の玄関と片づけられた敷地を見比べるイメージと壁際に積まれた可燃物に禁止マークが付いたイメージ
3番目の柱は空家の管理ですが、ここだけ性格が少し違います。
通知の呼びかけの先に、市町村の条例が定める義務が控えているからです。
「放火火災予防対策の推進について」(平成6年2月24日 消防予第42号)記=3 空家の管理の徹底 空家の所有者又は管理者に対して、当該空家にみだりに人が出入りできないような措置を講じること、可燃性の物品を周囲に放置しないこと等、放火火災を防止する上で必要な措置の徹底を図る。
火災予防条例(例)第二十四条(空地及び空家の管理) 2 空家の所有者又は管理者は、当該空家への侵入の防止、周囲の燃焼のおそれのある物件の除去その他火災予防上必要な措置を講じなければならない
この通知自体は「措置の徹底を図る」という行政指導レベルの呼びかけにとどまります。
一方で市町村の火災予防条例は、空家の所有者・管理者に対して侵入防止と燃焼のおそれのある物件の除去を義務として課しています
つまり通知が示す「侵入できないようにする」「可燃物を放置しない」という中身は、条例では既に法的な義務になっているのです。
自分の敷地内に空家や空き店舗があるなら、通知の呼びかけで終わらせず、自分の市町村の条例の条文まで確認しておく必要があります。

この通知を守っていれば、条例のほうは気にしなくていいと思っていました。

通知は呼びかけですが、条例の該当条文は義務です。
あわせて確認しておきましょう。

防火管理者は明日から何を確認すればよいのか

クリップボードを持つ人物と消火器付きの掲示板を見比べるイメージと書類を囲んで確認する複数人のイメージ
4つの柱を並べただけでは、実務に落とし込めません。
最後に、防火管理者としてどこから手を付けるかを整理します。
「放火火災予防対策の推進について」(平成6年2月24日 消防予第42号)=このような状況に鑑み、貴職におかれても、放火による火災の低減を図るため、下記事項に留意の上、放火予防対策をより一層推進されるとともに、貴管下市町村に対してもこの旨示達され、よろしく御指導願いたい。
通知の宛先は都道府県ですが、最終的に動くのは現場の防火管理者です。
まずは自分の建物やその周辺に、空家・空き店舗・放置された可燃物がないかを見て回ることから始めます。
次に、駐車場があるなら車両のボディーカバーの防炎製品化を検討し、消防計画に地域との連絡体制の項目を加えます。
自治会や自主防災組織との接点を消防計画に一行加えるだけでも、通知が求める体制に近づきます

うちの消防計画には、地域との連携なんて一行も書いていませんでした。

まずは一行加えるところからで構いません。
できるところから見直していきましょう。

よくある質問

Q放火火災予防対策の推進についてはいつ出された通知ですか?
A回答は、平成6年2月24日付の消防予第42号で消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長に発出されました。春及び秋の全国火災予防運動の重点事項を踏まえた通知です。
Q空家の管理を怠るとどうなりますか?
A回答は、この通知自体に罰則はありませんが、市町村の火災予防条例が定める空家の管理義務に違反すると条例上の措置の対象になり得ます。通知と条例は別のものとして確認する必要があります。
Q車両のボディーカバーを防炎製品にするのは義務ですか?
A回答は、義務ではなく普及促進を図る呼びかけです。駐車場や車庫を持つ施設から任意で取り組む位置づけとされています。
Q地域環境づくりには誰が関わればよいですか?
A回答は、住民・事業所・関係機関が一体となることを求めており、具体的には町内会、自治会、自主防災組織、事業所、関係機関等との連携が挙げられています。

まとめ

消防庁は平成6年の消防予第42号で地域ぐるみで放火を防ぐ4つの重点対策を示しました
通知の背景には平成5年の全国の放火(放火の疑いを含む)火災が前年比9.7%増加し全出火件数の19.9%を占めたという状況があります
1つ目の柱は町内会・自治会・自主防災組織・事業所・関係機関が一体となる地域環境づくりです
2つ目と4つ目の柱である広報と車両対策は、いずれも呼びかけと普及促進のレベルにとどまります
3つ目の柱である空家の管理は、通知の呼びかけの先に火災予防条例が定める法的な義務が控えています
空家や空き店舗がある施設は、通知だけでなく自分の市町村の条例の条文まで確認する必要があります
防火管理者はまず身の回りの点検から始め、消防計画に地域との連絡体制を加えることが実践の第一歩です

地域ぐるみで取り組む放火対策が、こんなに身近なところから始まるとは思いませんでした。

はい、まずは身の回りの点検から始めてみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「放火火災予防対策の推進について」(平成6年2月24日 消防予第42号 消防庁予防課長通知)
  • 火災予防条例(例)第24条(空地及び空家の管理)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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