「うちは200平方メートルよりずっと小さいから、届出は要らない」——その油断が思わぬ落とし穴になります。
平成30年の建築基準法改正で、建築確認が必要になる特殊建築物の基準面積は100平方メートル超から200平方メートル超へ引き上げられました。
これにより、延べ面積100平方メートル超200平方メートル以下の建物を用途変更する場合、建築確認も、それに連動する消防同意も不要になっています。
消防庁は令和元年、この抜け穴を関係部局の連携で埋めるよう通知を発出し、消防法令上の義務は変わらず生きていることを念押ししました。
うちのビルは小さいので、用途を変えても届出は要らないですよね。
いいえ、建築確認が不要なだけで消防法令の義務は消えません。
まずは制度がどう変わったのかを見ていきましょう。
確認が要らないなら、消防に知られずに用途を変えられるということですか。
実は関係部局どうしで情報を共有する仕組みが作られています。
順番に見ていきましょう。
- 消防庁は令和元年6月24日の通知(消防予第58号)で、小規模建築物の用途変更に関する関係部局の連携を求めました
- 建築確認が必要な特殊建築物の基準面積は100平方メートル超から200平方メートル超へ引き上げられました
- 延べ面積100平方メートル超200平方メートル以下の特殊建築物への用途変更は、建築確認も消防同意も不要になっています
- 建築確認が不要でも、消防法令上の義務は変わらず生きています
- 建築部局は、医療福祉施設や宿泊施設等を所管する関係部局への速やかな情報共有を依頼されています
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目次
小規模建築物の用途変更はなぜ確認も同意も不要になったのか

これにより、これまで消防同意を通じて把握できていた小規模な建物の用途変更が、行政の目から漏れる懸念が生まれています。
消防法第七条は、建築確認の権限を持つ行政庁が確認をするとき、消防長又は消防署長の同意を得なければならないと定めています。
つまり建築確認が不要になれば、それに連動する消防同意も不要になるという関係です。
延べ面積100平方メートル超200平方メートル以下の特殊建築物は、この改正で確認・同意の対象から外れました。
外れたのは手続きだけで、建物そのものの防火上の性格が変わったわけではありません。
基準が引き上げられたのは、規制を緩めるためだったんですか。
手続きの負担を軽くする趣旨です。
次はどの建物のどんな変更が対象になるのか見ていきましょう。
どんな建物のどんな用途変更が対象になるのか

建築基準法別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、規模が絞られています。
一般の住宅や事務所を、診療所やグループホーム、簡易宿所、店舗などへ切り替えるような場面が典型例です。
延べ面積は100平方メートル超200平方メートル以下という範囲に限られ、それより大きい建物は従来どおり確認・同意の対象のままです。
用途変更が類似の用途どうしの間にとどまる場合は、そもそも確認そのものが不要とされる扱いも別途あります。
自分の建物がこの範囲に入るかどうかは、床面積の実測から確認する必要があります。
うちの空き店舗をデイサービスに変えたいのですが、これに当てはまりそうです。
床面積を実測しておくことが第一歩です。
次は通知が関係部局に何を求めているのか見ていきましょう。
通知は関係部局に何を求めているのか

通知が示したのは、部局どうしで情報をつなぐという発想です。
医療福祉施設や旅館業、興行場などの許認可権限を持つ関係部局が、業として小規模建築物の情報を把握した場合、建築部局・消防部局へ速やかに共有することが依頼されています。
つまり確認申請という単一の窓口が無くなった代わりに、複数の窓口から情報が集まる形に切り替わったということです。
この通知は消防組織法第37条に基づく助言として発出されており、法的な強制力そのものではなく、運用上の周知徹底を求めるものです。
実務としては、都道府県から市町村へ、さらに各消防本部へと周知が下りていく流れになります。
デイサービスの指定を取るときの窓口からも、消防に情報が伝わるということですか。
その想定で作られた仕組みです。
次は義務そのものが消えるのかを確認しましょう。
確認や同意が不要になっても消防法令の義務は消えるのか

「確認が要らない=消防法令の義務も要らない」ではありません。
用途変更によって防火対象物の区分が変われば、防火管理者の選任や消防用設備等の設置義務が新たに生じることがあります。
確認手続きが省略されたぶん、これまで確認・同意の過程で自然に把握できていた変更が、消防側から見えにくくなるという副作用も生まれています。
「役所を通していないから大丈夫」という思い込みが、実は最も危険な誤解です。
用途変更をした関係者自身が、消防法令上の義務を自主的に確認する姿勢が欠かせません。
確認が不要だったので、防火管理者のことまでは考えていませんでした。
手続きの有無と義務の有無は別です。
最後に、明日から確認すべき手順を整理しましょう。
小規模建築物を用途変更するとき明日から何を確認すればよいのか

床面積の大小にかかわらず、変更前に消防へ相談する習慣をつけることに尽きます。
まず用途変更後の防火対象物の区分を確認し、それに応じた消防用設備等の基準を満たしているかを点検します。
次に、区分によっては防火管理者の選任義務が新たに発生していないかを確認します。
福祉や旅館業などの許認可を申請する窓口でも、消防への情報共有が想定されていることを覚えておくと安心です。
確認・同意という手続きが無いぶん、自分から相談する一手間が、後々のトラブルを防ぐ最短ルートになります。
用途を変える前に、まず消防署へ相談してみようと思います。
それが一番確実な進め方です。
床面積にかかわらず、まず相談することをおすすめします。
よくある質問
まとめ
確認が不要でも安心はできないと分かりました!
まず消防署へ相談してみます!
まずは床面積の実測から始めてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「小規模建築物を対象とした医療福祉施設、宿泊施設、集客施設等を所管する関係部局との連携について」(令和元年6月24日 消防予第58号 消防庁予防課長通知)
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第六条第一項第一号
- 消防法(昭和23年法律第186号)第七条第一項
- 建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





