危険物保安監督者を選任すれば、それで法律上の義務は果たしたと考えていませんか。
実は消防法は、選任した後にもう一つ、消防への手続きを求めています。
この手続きを怠ると、選任そのものは正しくても罰則の対象になります。
この記事では消防法第13条第2項が求める届出の中身と、怠ったときの罰則を確認します。
うちの工場でも危険物保安監督者を決めたので、これでもう安心だと思っていました。
まだなにか必要なことがあるんですか。
実は選任しただけでは終わりません。
順番に確認しましょう。
選任した人を消防に知らせないといけないということですか。
はい、届出という別の義務があります。
まずは条文から確認しましょう。
- 危険物保安監督者を定めたときは、消防法第13条第2項により遅滞なく市町村長等へ届け出なければなりません
- 危険物保安監督者が必要になるのは原則としてすべての製造所貯蔵所取扱所で、一部の小規模施設だけが除外されます
- 届出は危険物の規制に関する規則第48条の3が定める別記様式第20の届出書で行います
- 選任したときだけでなく、解任したときも同様に届出が必要です
- 届出を怠ったり虚偽の届出をすると消防法第44条第8号により30万円以下の罰金又は拘留の対象になり、法人への両罰規定は適用されません
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目次
危険物保安監督者を選任したらそれで終わりなのか

まず選任に続く義務が何かを確認します。
前項の規定により危険物保安監督者を定めたときは、遅滞なくその旨を市町村長等に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
条文が使う遅滞なくという言葉は、猶予期間を区切らず、決まり次第すぐに届け出ることを求める表現です。
届出先は所轄消防署ではなく市町村長等で、これは第11条の許可権者と同じ窓口です。
さらに条文の後段は解任したときも同様と定めており、辞めさせた場合にも同じ届出義務がかかります。
まずは、そもそもどんな施設に危険物保安監督者が必要なのかを確認します。
届出をしていなかったら、選任自体が無効になってしまうんですか。
いいえ、選任の効力と届出の要否は別の話です。
次はどんな施設が対象かを見てみましょう。
どんな施設に危険物保安監督者が必要なのか

条文は選任が必要な施設の範囲を定めています。
政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、甲種危険物取扱者又は乙種危険物取扱者で、6月以上危険物取扱いの実務経験を有するもののうちから危険物保安監督者を定め(略)、その者が取り扱うことができる危険物の取扱作業に関して保安の監督をさせなければならない。
危険物の規制に関する政令第31条の2は、指定数量の倍数が30以下の屋内貯蔵所や地下タンク貯蔵所など、引火点が40度以上の第4類危険物だけを扱う小規模な施設に限って例外を定めています。
選任できる資格も条文で決まっており、甲種または乙種の危険物取扱者で6月以上の実務経験が必要です。
対象施設や資格の詳しい線引きは別記事で扱っているので、ここでは届出の中身に進みます。
次は届出そのものの手続きを確認します。
うちは指定数量の倍数がかなり大きいので、まず対象になりますね。
はい、規模が大きい施設ほど原則どおり対象になります。
では届出の中身を見ていきましょう。
届出はいつどこに何を出せばよいのか

様式や添付書類まで条文で決まっています。
法第13条第2項の規定による危険物保安監督者の選任又は解任の届出は、別記様式第20の届出書によって行わなければならない。この場合において、選任の届出書には、別記様式第20の2による書類を添付しなければならない。
使う様式は別記様式第20で、選任のときはこれに加えて別記様式第20の2による書類、つまり資格と実務経験を示す書類の添付が求められます。
解任のときは人が抜けるだけなので、添付書類までは条文上求められていません。
提出先は市町村長等で、消防本部を置かない市町村では都道府県知事が窓口になる場合もあります。
書類の準備に時間がかかることもあるため、選任が決まった時点で早めに動き出すのが安全です。
様式を作るだけでなく、資格を証明する書類まで一緒に出すんですね。
はい、選任時は添付書類が必要です。
次は見落としやすい点を確認しましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

特に人の入れ替わりのときに注意が必要です。
次のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金又は拘留に処する。
八 第8条第2項(略)、第9条の3第1項(略)、第11条第6項、第11条の4第1項、第12条の6、第12条の7第2項、第13条第2項、第17条の3の2又は第17条の14の規定による届出を怠つた者
担当者が異動や退職で交代するとき、新しい担当者の選任届には気を配っても、前任者の解任届が抜け落ちるケースがあります。
消防法第44条第8号は、危険物保安監督者の届出以外にも複数の届出義務をまとめて同じ号で罰しており、対象は幅広いことがわかります。
また第45条の両罰規定を確認すると、この第8号は列挙から外れているため、届出を怠っても法人自体は罰せられず行為者個人だけが対象になります。
罰則の軽重にかかわらず、担当者交代のたびに届出を忘れない仕組みが必要です。
辞めた人の届出まで必要だとは、正直気づいていませんでした。
選任と解任はセットの義務です。
最後に明日からの動き方を確認しましょう。
明日からなにをすればよいのか

届出の先にある監督者本人の仕事も確認しておきます。
法第13条第1項の規定により、製造所等の所有者、管理者又は占有者が危険物保安監督者に行わせなければならない業務は、次のとおりとする。一 危険物の取扱作業の実施に際し(略)作業者に対し必要な指示を与えること。二 火災等の災害が発生した場合は、作業者を指揮して応急の措置を講ずるとともに、直ちに消防機関その他関係のある者に連絡すること。
選任も解任も市町村長等への控えの有無で確認できるので、書類が手元にあるか確かめておきましょう。
次に、人事異動のフローに危険物保安監督者の解任届と選任届をあらかじめ組み込んでおくと、担当者交代のたびに抜けを防げます。
最後に、選任した本人が規則第48条が定める業務内容を理解しているかも確認しておきましょう。
届出は事務手続きですが、その先には施設の安全を実際に担う人の仕事があります。
届出の控えを保管しておくだけでも、次の異動のときに慌てずに済みそうです。
控えの保管と異動フローへの組み込みが近道です。
これで確認の流れが一通り整いました。
よくある質問
まとめ
届出の控えの保管から、今日中に確認します。
人事異動フローへの組み込みもあわせて進めましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第13条
- 消防法第44条第8号
- 消防法第45条
- 危険物の規制に関する政令第31条の2
- 危険物の規制に関する規則第48条・第48条の3
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





