危険物取扱者や危険物保安監督者は、免状の交付を受ければそれで法律上の役割を果たしたと考えていませんか。
実は危険物の規制に関する政令には、免状を持つ人が現場でどう振る舞うべきかまで定めた条文があります。
保安監督者・取扱者本人・立会いをする有資格者、それぞれの立場に別々の義務が課されています。
この記事では危険物の規制に関する政令第31条が定める誠実義務と注意義務の中身を確認します。
うちの危険物保安監督者は資格を持っているので、それで安心していいですよね。
実は資格とは別に果たすべき義務があるんです。
条文を確認しましょう。
資格を持っていることと義務を果たしていることは、別ということですか。
そのとおりです。
誠実義務と注意義務、それぞれの中身を見ていきましょう。
- 危険物保安監督者には、危険物の取扱作業を監督する場合は誠実にその職務を行う義務があります(政令第31条第1項)
- 危険物取扱者本人にも、作業に従事するときは技術上の基準を守り細心の注意を払う義務があります(政令第31条第2項)
- 無資格者に立ち会う甲種または乙種の危険物取扱者には、基準の遵守を監督し必要に応じて指示を与える義務があります(政令第31条第3項)
- 技術上の基準(消防法第10条第3項)に違反すると3月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金の対象になります(第43条第1項第1号)
- 誠実義務や監督義務そのものには罰則の定めがありませんが、果たさなかった結果が事故につながれば別の責任を問われます
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目次
資格を持っていれば危険物の取扱いはそれで安心なのか

まず条文が誰にどんな義務を課しているのかを確認します。
(危険物保安監督者及び危険物取扱者の責務)
1つ目は消防法第13条第1項の危険物保安監督者、2つ目は現場で作業する危険物取扱者本人、3つ目は無資格者に立ち会う甲種または乙種の危険物取扱者です。
免状は取扱作業ができる資格を与えるものであり、その資格を使う場面での振る舞いまでは免状自体には書かれていません。
振る舞いを定めているのがこの政令第31条で、立場ごとに求められる中身が違います。
まず1つ目の危険物保安監督者から確認します。
免状に書かれていない義務が、政令に定められているんですね。
はい、3つの立場ごとに中身が違います。
まず監督者の義務から見てみましょう。
保安監督者に求められる誠実義務とはなにを指すのか

まずこの条文を確認します。
法第13条第1項の危険物保安監督者は、危険物の取扱作業に関して保安の監督をする場合は、誠実にその職務を行わなければならない。
条文は具体的な行為を列挙しておらず、書類に判を押すだけで現場を見に行かない、といった振る舞いを許さない趣旨の規定です。
監督者本人が行うべき業務の中身は危険物の規制に関する規則第48条にあり、作業者への指示や災害発生時の連絡がそこに定められています。
誠実義務はこの規則第48条の業務を、名目だけでなく実際に行うことを条文の側から裏づけていると理解できます。
次は監督される側、危険物取扱者本人の義務を確認します。
誠実にというだけで、具体的になにをすればいいのかわかりにくいですね。
規則第48条の業務を実際に行うことが中身です。
次は取扱者本人の義務を見ましょう。
作業する危険物取扱者本人にはどんな注意義務があるのか

2つの義務が並んでいる点に注目します。
危険物取扱者は、危険物の取扱作業に従事するときは、法第10条第3項の貯蔵又は取扱いの技術上の基準を遵守するとともに、当該危険物の保安の確保について細心の注意を払わなければならない。
前半の技術上の基準の遵守は消防法第10条第3項そのものを指しており、これに違反すると消防法第43条第1項第1号により3月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金の対象になります。
後半の細心の注意を払うは基準の条文を守るだけでは足りず、その先の心構えまで求める上乗せの規定です。
基準そのものに違反すれば罰則の対象になりますが、細心の注意を払ったかどうかは罰則の要件にはなっていません。
次は無資格者に立ち会うときの義務を確認します。
基準を守ることと細心の注意を払うことは、別々に見るということですか。
はい、基準違反だけが罰則の対象です。
次は立会いの義務を見ていきましょう。
無資格者に立ち会うときはそばにいるだけでよいのか

立会いの中で何をすべきかを条文で確認します。
甲種危険物取扱者又は乙種危険物取扱者は、危険物の取扱作業の立会をする場合は、取扱作業に従事する者が法第10条第3項の貯蔵又は取扱の技術上の基準を遵守するように監督するとともに、必要に応じてこれらの者に指示を与えなければならない。
消防法第13条第3項は無資格者が取り扱うときに有資格者が立ち会わなければならないことを定めていますが、その立会い中に何をすべきかを具体化しているのがこの第31条第3項です。
条文は監督することと必要に応じて指示を与えることの両方を求めており、無資格者の作業を見ているだけで声をかけない状態は、この条文が求める水準に届きません。
立会いという行為そのものの要件(場所や人数など)は別の記事で扱っており、この記事では立会い中に果たすべき中身に絞って確認しました。
最後に、ここまでの義務を明日からどう確認すればよいかを整理します。
ただそばに立っているだけでは、立会いをしたことにならないんですね。
はい、監督と指示までが立会いの中身です。
最後に明日からの確認事項をまとめます。
明日からなにをすればよいのか

罰則の有無で優先順位をつけて考えます。
次のいずれかに該当する者は、3月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。
一 第10条第3項の規定に違反した者
ここは罰則が直接かかる部分で、政令第31条第2項が引用する消防法第10条第3項の遵守がそのまま基準になります。
次に、保安監督者の誠実義務と取扱者・立会い者の注意義務や監督義務は、それ自体に罰則はありませんが、果たさなかった結果として危険物を漏出させ火災の危険を生じさせれば消防法第39条の3の業務上過失に問われる可能性があります。
実務では、監督者が現場を巡回した記録を残す、立会い時に指示した内容をメモする、といった形に残す工夫が、誠実義務や監督義務を果たしたことの裏づけになります。
資格を取らせて終わりにせず、日々の職務の中身まで確認する体制を整えておきましょう。
罰則がない義務ほど、かえって記録に残しておく必要があるんですね。
巡回記録と指示メモの習慣化が近道です。
これで確認の流れが一通り整いました。
よくある質問
まとめ
監督者の巡回記録から、今日中に確認します。
立会い時の指示メモもあわせて習慣にしましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第31条
- 消防法第10条第3項
- 消防法第13条第1項・第3項
- 消防法第43条第1項第1号
- 消防法第39条の3
- 危険物の規制に関する規則第48条
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





