無許可で危険物を貯蔵すると罰則があることは知られていますが、消防が最初に動くのは実は罰則ではありません。
市町村長等には、危険物を除去させる命令という手段があります。
根拠になるのは消防法第16条の6です。
命令の中身と、従わなかったときになにが起きるかを見ていきます。
取引先の倉庫に許可のない灯油のドラム缶が積まれていると聞きました。
これは罰金を払えば済む話ですか。
それだけでは済みません。
まず市町村長等が除去命令を出せます。
命令に従わなかったらどうなるんですか。
そこがこの条文の面白いところです。
第16条の6を順番に見ていきましょう。
- 市町村長等は、仮貯蔵の承認も設置許可も受けていないまま指定数量以上の危険物を貯蔵・取扱う者に、除去命令を出せます(第16条の6第1項)
- 命令を出したときは、標識の設置その他の方法で公示しなければなりません(第11条の5第4項準用)
- 施設の所有者・管理者・占有者は、標識の設置を拒み、又は妨げてはなりません(第11条の5第5項準用)
- 命令に従わなければ、行政代執行法に基づいて行政が代わって措置を行えます(第16条の3第5項準用)
- この命令そのものに違反したことへの罰則規定は、消防法のどこにも置かれていません
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目次
許可のない危険物施設に消防はなにができるのか

それでも許可のないまま貯蔵・取扱いが行われてしまうことがあります。
無許可で貯蔵・取扱いをしていたことへの罰則は別に定められていますが、それとは別に、まず危険物そのものを取り除かせる行政上の命令を出せるようになっています。
命令の対象は「危険物の除去その他危険物による災害防止のための必要な措置」で、単に危険物を運び出させるだけでなく、災害防止に必要な措置全般を含みます。
罰するかどうかより先に、まず危険な状態そのものを解消させる仕組みだと理解しておくと分かりやすくなります。
罰則とは別に、命令という手段も用意されているんですね。
そのとおりです。
まず危険な状態を解消させるのが目的です。
命令の対象になるのはどんなときか

どちらに当てはまるかで、そもそもの状況が変わってきます。
第16条の6が指すのは、第10条第1項ただし書の仮貯蔵・仮取扱いの承認も、第11条第1項前段の設置許可も、どちらも受けていない状態です。
一時的に置いているだけのつもりでも、10日以内の仮貯蔵として所轄消防長又は消防署長の承認を受けていなければ、この命令の対象になり得ます。
逆に言えば、仮貯蔵の承認さえ取っていれば、この命令の対象からは外れます。
短期間だけ置くつもりなら、届出だけしておけば大丈夫ですか。
届出ではなく承認が必要です。
所轄消防長又は消防署長の承認を先に受けてください。
命令はどうやって示されるのか

現地にも、誰の目にも分かる形で示されます。
同条第五項 前項の標識は、(中略)製造所、貯蔵所又は取扱所に設置することができる。この場合においては、(中略)当該製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。
第16条の6第2項が第11条の5第4項・第5項を準用しているため、除去命令についても同じ手続きが取られます。
標識はその施設に設置することができると定められており、所有者・管理者・占有者は設置を拒んだり妨げたりしてはならないとされています。
つまり、命令を受けた側が標識を取り外したり隠したりすることは認められていません。
命令を受けた側で標識を外してしまうことはできないんですね。
できません。
設置を拒んだり妨げたりすることは条文で禁じられています。
命令に従わなかったらどうなるのか

ここが第16条の6のいちばんの特徴です。
第16条の6第2項が第16条の3第5項を準用しているため、命令を受けた者が措置を履行しないときは、行政代執行法に基づいて消防職員や第三者が代わりに危険物を除去できます。
一方で、この命令そのものに違反したこと自体への罰則は、消防法第42条から第44条までのいずれにも定められていません。
無許可で貯蔵・取扱いをしたこと自体は別条で罰せられますが、その後に出される除去命令への違反は、罰則ではなく代執行という形で対応する仕組みになっています。
命令を無視しても、罰則ではなく代執行で対応されるんですね。
はい、そのとおりです。
行政代執行法による代執行で危険物が除去されます。
明日からなにを確認すればよいのか

指定数量以上の危険物を扱っている場所であれば、設置許可を受けているか、一時的な保管であれば仮貯蔵の承認を受けているかをまず確かめます。
複数の拠点や現場を抱えている場合は、資材置き場や倉庫の隅に指定数量を超える危険物が無許可のまま持ち込まれていないかも合わせて点検します。
標識を伴う命令を受けてからでは対外的な影響も大きいため、許可の有無は日常点検の項目に加えておくと安心です。
倉庫の隅に置いてある予備の燃料も、量によっては対象になり得るということですね。
はい、その可能性があります。
指定数量を超えていないかを一度確認してみてください。
よくある質問
まとめ
無許可の貯蔵には罰則だけでなく命令もあって、命令自体には罰則が無いことがよく分かりました。
自社の許可の状態も改めて確認します!
命令が出る前に許可の状態を確かめておくのが一番です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第16条の6(無許可貯蔵者等に対する措置命令)
- 消防法第10条(危険物の貯蔵及び取扱いの制限・仮貯蔵仮取扱いの承認)
- 消防法第11条(製造所、貯蔵所又は取扱所の設置の許可)
- 消防法第11条の5(技術上の基準に対する適合命令・標識による公示)
- 消防法第16条の3(危険物の流出等の事故時の応急措置・行政代執行)
- 消防法第42条〜第44条(罰則)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





