中山間地域等の給油取扱所は、来店が極端に少なく係員の確保が難しいという課題を抱えています。
消防庁は平成28年、係員が隣接する店舗等に待機し、呼び出しに応じて給油等を行う運用形態への安全確保策を指針としてまとめました。
認められるのは店舗等と給油取扱所の距離や危険物の販売量が一定の目安に収まる場合で、設置する機器にも細かい条件があります。
係員が不在の間になにを備えるかが、この運用を続けられるかどうかの分かれ道です。
客の少ない給油取扱所は、係員がずっと立っていなくてもいいんですか。
はい。
店舗等に待機して呼び出しに応じる運用が、条件付きで認められています。
どんな条件を満たせば認められるんですか。
はい。
対象・中身・落とし穴・手順の順に、指針の内容を見ていきましょう。
- 通常は給油取扱所に常駐する係員が、例外的に隣接する店舗等に所在して呼び出しに応じて給油等を行う運用形態が対象です
- 店舗等から給油取扱所までの距離は15〜60メートル程度が目安です
- 危険物の販売量は一月あたり10〜40キロリットル程度が目安です
- 係員が不在の間は給油ノズルのロックや電源遮断などで無断使用を防ぐ措置が必要です
- 来客時にはインターホン・センサー・監視カメラ・看板を直視の可否に応じて設置します
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目次
呼び出しに応じた給油等の運用はなぜ認められるようになったのか

この課題に対応するため、消防庁は係員が隣接店舗等に待機する運用形態への安全確保策の検討を進めました。
通常は危険物取扱者である係員が給油取扱所に常駐していますが、例外的に隣接する店舗等に所在し、顧客からの呼び出しに応じて速やかに移動して給油又は注油を行う運用形態が一つの方策として取り上げられました。
この検討を経て平成28年3月25日、消防庁は消防危第44号として安全確保策の指針をまとめています。
背景にあるのは、中山間地域等で来店頻度が低く、常時の人員配置が経営上の負担になっているという実情です。
指針は消防組織法第37条に基づく助言として発出されたもので、管轄消防機関の指導に活用することが想定されています。
うちの近くの給油取扱所も、いつ行っても店員さんが見当たらないことがあります。
それは呼び出しに応じて給油等を行う運用形態かもしれません。
どんな距離と販売量の給油取扱所が対象になるのか

この2つを満たさない施設は、そもそもこの指針の対象になりません。
店舗等から給油取扱所までの距離は15〜60メートル程度、来店時や緊急時に係員が迅速に対応できる範囲が想定されています。
危険物の販売量は中山間地域等の来客頻度を踏まえ、一月あたり10〜40キロリットル程度が目安です。
どちらも「程度」とされており、実情を踏まえて所轄消防機関が個別に適否を判断します。
距離が離れすぎている、あるいは販売量が多すぎる施設は、常駐の係員配置が原則のままになります。
うちは店舗から給油取扱所までけっこう離れているんですが、それでも大丈夫ですか。
目安を超える場合は、所轄消防署に個別の判断を確認してください。
係員が不在の間と来客時にはどんな安全策が必要なのか

係員が給油取扱所にいない時の備えと、顧客が来店した時の備えです。
係員が臨場していない時間帯は、給油ノズル及び注油ノズルのロック・固定給油設備等の電源遮断・POSシステムによる使用制限のいずれかで、無断使用やいたずらを防ぎます。
来客があったときに気づけるよう、インターホン・センサー・監視カメラ・看板を、店舗等から給油取扱所を直視できるかどうかに応じて組み合わせて設置します。
直視できない場合はインターホン・センサー・看板が必須で、監視カメラを置けばインターホンを省略できるなど、機器の組み合わせにも段階があります。
看板には呼び出し方法・所在場所・緊急時の対応・自ら給油してはならない旨の4点を、簡潔に表示することが求められます。
ロックだけじゃなくて、来客に気づく仕組みも要るんですね。
直視できるかどうかで、必要な機器の組み合わせが変わります。
実務で見落としやすいのはどこか

静電気対策と、予防規程への記載です。
店舗等から歩いてきた係員は、静電気帯電防止作業服及び静電気帯電防止用作業靴を着用してから給油ノズルを操作する必要があります。
この着用義務自体は労働安全衛生規則第286条の2に以前から定められているもので、指針はその徹底を改めて求めているにすぎません。
もう一つは予防規程への記載です。係員不在時の安全確保策と、来客等を覚知した際の対応を明文化し、市町村長等の認可を受ける必要があります。
機器だけ設置して終わりにせず、作業服・作業靴と予防規程の2点も忘れずに確認してください。
作業服まで指定されているとは知りませんでした。
着用義務は以前からある規則なので、改めて徹底が求められています。
明日から呼び出しに応じた給油等のなにを確認すればよいのか

根拠になるのは、留意事項に示された適否の判断基準と機器の維持管理です。
最終的な適否は管轄の消防機関が、来客等を覚知したときに適切な対応がとれるか、火災等が発生した際に応急の措置を講じられるかという実情を踏まえて判断します。
設置した機器は定期的な点検も欠かせません。看板の表示が消えていないか、機器の周囲に障害物が無いか、破損が無いか、正常に作動するかを確認します。
すでにこの運用形態で営業している既存の給油取扱所についても、施設の実態に応じてこの指針を参考にすることが望ましいとされています。
新設・改修の相談は、所轄消防署に事前に確認しておくと手戻りがありません。
つまり、距離や量だけでなく実際の対応力まで見られるということですね。
そのとおりです。
機器の点検も忘れずに、定期的に確認してください。
よくある質問
まとめ
距離・機器・作業服・予防規程の4点を見ればいいと分かりました。
すっきりしました。
その視点を最初に整理しておけば、新設や運用の相談もスムーズに進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 呼び出しに応じて給油等を行う場合における安全確保策に関する指針について(平成28年3月25日 消防危第44号 消防庁危険物保安室長)
- 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
- 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第286条の2
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第60条の2(予防規程に定めなければならない事項)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





