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セルフ給油取扱所にAIシステムは導入できるのか|給油許可監視の要件と変更許可も解説

セルフ給油所へのAIシステム導入と留意事項を解説するアイキャッチ画像

セルフスタンドでは、防犯カメラの映像をAIで解析して給油の許可を判断する仕組みの実用化が進んでいます。
令和5年5月、消防庁は顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所にこうしたAIシステムを導入する際の留意事項を通知しました。
判断そのものをAIに委ねるのではなく、従業員の判断を助ける「情報提供型」に限って導入が認められた点がポイントです。
どこまでなら基準に抵触せず、どこから許可手続きが必要になるのかを整理します。

うちのスタンドでも、カメラの映像で給油の許可を判断するようなシステムを入れている同業者がいるんですが、消防法上は大丈夫なんでしょうか。

条件を満たせば認められます。セルフ給油取扱所向けの「情報提供型AIシステム」について、令和5年に消防庁が留意事項を通知しました。
ただし従業員が必ず給油許可監視を行う体制が前提です。

AIに任せきりにはできないんですね。なぜこのタイミングで通知が出たんですか。

消防庁が令和3年度から検討会を開き、スマート保安の一環として結論をまとめたからです。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • AIが給油の許可を代行するのではなく、判断材料を従業員へ提供する「情報提供型AIシステム」に限って導入が認められました
  • 導入の前提として、監視カメラの設置従業員が必ず給油許可監視を行う体制の確保が必要です
  • AIシステムの信頼性評価は、石油連盟の「ガイドラインVer.1」が示す試験方法等に基づいて行います
  • 監視カメラの新設など位置・構造・設備に変更が生じる場合は、消防法第11条第1項の変更許可が必要です
  • 変更の内容によっては、「軽微な変更工事」として資料の提出等を省略できる場合があります

セルフ給油所へのAI導入における監視カメラ設置・従業員体制・監視の周知・変更許可の4点と基準に抵触しないことを示した図解

セルフ給油取扱所へのAI導入になぜ留意事項が示されたのか

検討会でAIシステム導入の資料を確認する担当者のイメージ
給油取扱所へのAI導入は、思いつきで許められたものではありません。
消防庁が数年かけて検討を重ねた結果として示されたものです。
「顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所において給油の許可の判断に資する情報を従業員へ提供するAIシステムの導入に係る留意事項について」(通知)(令和5年5月15日 消防危第124号 消防庁危険物保安室長) 昨今の技術革新やデジタル化の急速な進展から、危険物保安においても新技術の導入により効率的な予防保全を行うなどスマート保安の実現が期待されています。このため、消防庁では令和3年度より「危険物施設におけるスマート保安等に係る調査検討会」を開催し、顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所(以下「セルフ給油取扱所」という。)におけるAI等による給油の許可及び監視(以下「給油許可監視」という。)の支援について検討を行ってきました
背景にあるのは、危険物保安をめぐる人手不足と技術革新です。
消防庁は令和3年度から「危険物施設におけるスマート保安等に係る調査検討会」を開き、AIなどの新技術を使った予防保全の在り方を検討してきました。
検討の対象になったのが、セルフ給油取扱所における給油許可監視、つまり顧客が給油してよいかどうかの許可と監視です。
石油元売会社や石油連盟の側でも技術開発が進んでおり、令和5年5月にその成果を踏まえた留意事項がまとめられました。
まずは、どのようなAIシステムが対象になったのかを見ていきましょう。

調査検討会なんてやってたの、まったく知りませんでした。

令和3年度からの検討を経て、令和5年にようやく実務向けの留意事項として示されました。
次は対象となるAIシステムの中身です。

どのようなAIシステムが導入の対象になるのか

監視モニターを確認する従業員と誰もいないカウンターのイメージ
対象になるAIシステムには、はっきりとした線引きがあります。
「判断を助けるだけ」か「判断そのものを行う」かの違いです。
(令和5年5月15日 消防危第124号) 今般、同検討会において、給油許可監視の支援を行うAIシステムのうち、「セルフ給油取扱所において給油の許可の判断に資する情報を従業員へ提供するAIシステム」(以下「情報提供型AIシステム」という。)については、セルフ給油取扱所に導入することについて、差し支えない旨の結論を得るとともに、別添1のとおり、令和4年度中間報告をとりまとめたところです。また、石油元売会社においては、(略)石油連盟において、「セルフSSにおけるAIによる給油許可監視の実装に向けたAIシステム評価方法等に係るガイドラインVer.1」(2023年4月石油連盟給油所技術専門委員会。以下「ガイドライン(Ver.1)」という。)がとりまとめられたところです。
対象は、あくまで従業員に情報を提供するだけの「情報提供型AIシステム」です。
給油の許可を最終的に判断するのはAIではなく、従業員本人という位置づけになります。
このAIシステムをセルフ給油取扱所に導入すること自体は差し支えないという結論が示されました。
信頼性の裏付けとなるのが、石油連盟がまとめた「ガイドラインVer.1」です。
自社で使うシステムがこのガイドラインの想定する範囲に収まっているかを、まず確認しましょう。

てっきり、AIが自動で給油を許可したり止めたりする仕組みかと思ってました。

今回認められたのはあくまで情報提供までです
その分、従業員側に求められる体制も具体的に決まっています。

ガイドラインは導入にあたって何を求めているのか

監視カメラと標示板を備えた給油レーンのイメージ
情報提供型AIシステムだからといって、基準そのものが緩んだわけではありません。
既存の監視義務を、どう満たすかという話です。
危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第40条の3の10(顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所における取扱いの基準) 次に定めるところにより顧客の給油作業等を監視し、及び制御し、並びに顧客に対し必要な指示を行うこと。イ 顧客の給油作業等を直視等により適切に監視すること
(令和5年5月15日 消防危第124号) ガイドライン(Ver.1)においては、情報提供型AIシステムを導入するセルフ給油取扱所について、次の要件を満たすことが求められていること。ア AIシステムによる監視の対象となる給油レーンにおいては、停車枠を捉えることができるカメラを設置し、給油を行う顧客及び給油の対象となる車両を監視できること。イ (ア)必ず従業員が給油許可監視を実施する体制が確保されていること。(イ)AIによる監視の事実が周知されていること。(ウ)AIシステムが正常な情報を従業員に提供できない状態にあるときは、従業員がその状態を認識し、直ちにAIシステムの使用を停止できる体制となっていること。
求められているのは、カメラの設置と3つの体制要件です。
給油レーンを捉えるカメラの設置に加え、必ず従業員が監視する体制、AI監視の周知、異常時に使用を停止できる体制の3つが揃って初めて要件を満たします。
この要件を満たしたうえでガイドラインの試験方法等により信頼性評価を受けたシステムは、既存の直視等による監視の基準に抵触しないとされました。
つまりAIシステムは監視の手段を補うものであり、監視義務そのものを免除するものではありません。

カメラさえ付ければ、あとは従業員が手薄でもいいのかと思ってました。

逆です。従業員が必ず監視する体制があってこそのAI導入です。
ここを見落とすと、思わぬところで手続きにも影響します。

実務で見落としやすいのはどこか

外壁に監視カメラを取り付ける作業員と許可書類を持つ担当者のイメージ
要件を満たすAIシステムでも、設置の仕方によっては別の手続きが要ります。
見落としやすいのは、消防法上の「変更」に当たるかどうかです。
(令和5年5月15日 消防危第124号) AIシステムの導入に伴って、新たに監視カメラ等の機器を設置するなど、セルフ給油取扱所の位置、構造又は設備に変更を生じるときは、消防法(昭和23年法律第186号。以下「法」という。)第11条第1項に基づく変更許可を要すること。(略)当該変更が法第10条第4項の基準の内容と関係が生じないものであること又は保安上の問題を生じさせないものであることが判断できる場合は、(略)「軽微な変更工事」として取り扱うこととされたいこと。
消防法(昭和23年法律第186号)第11条第1項 製造所、貯蔵所又は取扱所を設置しようとする者は、政令で定めるところにより、(略)許可を受けなければならない。製造所、貯蔵所又は取扱所の位置、構造又は設備を変更しようとする者も、同様とする
監視カメラの新設は、原則として消防法上の「変更」に当たります。
AIシステム導入のために新たにカメラなどの機器を設置し、位置・構造・設備に変更が生じるときは、消防法第11条第1項の変更許可が必要です。
一方で、監視カメラの位置や構成に変更がなく、評価結果や要件にも変更がないなど一定の条件を満たせば、平成14年消防危第49号通知に基づく「軽微な変更工事」として資料の提出等を省略できる場合があります。
「AI導入=許可はいらない」と思い込むと、変更許可の手続きを飛ばしてしまう恐れがあるので注意しましょう。

カメラを1台足すだけなのに、許可がいる場合があるとは思いませんでした。

だからこそ、工事の前に所轄消防署へ確認することが欠かせません。
最後に、明日からの確認手順をまとめます。

導入にあたって明日からなにを確認すればよいか

チェックリストを持つ担当者と監視カメラを備えた給油所のイメージ
最後に、実際に導入を検討する際の確認事項を整理します。
順番に押さえれば、手続きの抜け漏れを防げます。
(令和5年5月15日 消防危第124号) 上記1(2)イについては、必要に応じ、予防規程に定めることが望ましいものであること。
確認すべきことは、体制・設備・手続き・記録の4点です。
まず、導入予定のAIシステムが「ガイドラインVer.1」の試験方法等による信頼性評価を受けているかを確認します。
次に、必ず従業員が給油許可監視を行う体制と、異常時に使用を停止できる体制が整っているかを点検します。
そのうえで、カメラの新設などが位置・構造・設備の変更に当たらないか、当たる場合は変更許可が必要かを所轄消防署に相談します。
最後に、必要に応じて監視体制を予防規程に記載し、教育や周知の記録を残しておきましょう。

体制・設備・手続き・記録の順に見ればいいんですね。順番があると助かります。

そのとおりです。導入前の相談が一番の近道です。
よくある質問もまとめておきます。

よくある質問

QAIシステムがあれば従業員は不要になるのか?
A不要にはなりません。今回認められた情報提供型AIシステムでは、必ず従業員が給油許可監視を実施する体制が前提条件になっています。
QどんなAIシステムでも導入できるのか?
A対象は情報提供型AIシステムに限られます。石油連盟の「ガイドラインVer.1」が示す試験方法等で信頼性評価を受けたものであることが前提です。
Qカメラを設置すれば必ず変更許可が必要になるのか?
A位置・構造・設備に変更が生じる場合は消防法第11条第1項の変更許可が必要です。ただし条件を満たせば「軽微な変更工事」として資料提出等を省略できる場合があります。
QAI導入を予防規程に書く必要があるのか?
A義務ではありませんが、通知は必要に応じて予防規程に定めることが望ましいとしています。異常時の対応体制など、記録に残しておくと安心です。

まとめ

AIが給油の許可を代行するのではなく、判断材料を従業員へ提供する「情報提供型AIシステム」に限って導入が認められました
背景には、消防庁が令和3年度から進めてきたスマート保安の検討会があります
導入にはカメラの設置と、必ず従業員が監視する体制など3つの体制要件を満たす必要があります
要件を満たすシステムは、既存の直視等による監視の基準に抵触しないとされました
監視カメラの新設などで位置・構造・設備に変更が生じる場合は消防法第11条第1項の変更許可が必要です
条件を満たせば「軽微な変更工事」として資料の提出等を省略できる場合があります
導入前に所轄消防署へ相談し、必要に応じて予防規程への記載も検討しましょう

AI任せにできる話ではなく、体制づくりと手続きの話なんですね。
これで同業者にも説明できます。

体制の確保と変更許可の要否確認、この2点を押さえれば導入は進められます
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参考・出典

  • 「顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所において給油の許可の判断に資する情報を従業員へ提供するAIシステムの導入に係る留意事項について」(通知)(令和5年5月15日 消防危第124号 消防庁危険物保安室長)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第11条第1項・第10条第4項
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第40条の3の10
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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