ヒドロキシルアミンやその塩類は、通常の危険物より重い規制がかかることがあります。
危険物の規制に関する政令は、こうした物質を扱う製造所について総務省令で基準を超える特例を定められると規定しています。
この特例は距離の計算式から塀や土盛りの仕様、危険な反応を防ぐ設備の措置まで幅広く定められています。
この記事では規則第13条の10が定める特例の中身を条文から整理します。
うちの工場でヒドロキシルアミン系の薬品を扱う計画があるんですが、普通の製造所と同じ基準でいいんでしょうか。
ヒドロキシルアミン等には専用の特例基準があります。
距離の計算式から確認していきましょう。
距離の計算式まであるんですか。
うちの取扱量だとどのくらい必要になるのか心配です。
まずは対象になる条件から見ていきます。
指定数量の倍数がポイントです。
- ヒドロキシルアミン等を取り扱う製造所には、令第9条第3項に基づき通常の基準を超える特例が課されます。
- 対象になるのは、規則第13条の10が定める「第1種自己反応性物質」の性状を有するヒドロキシルアミン等を指定数量以上取り扱う製造所です。
- 距離は通常の10メートルや30メートルではなく、「D=51.13×√N」という専用の計算式で求めます。
- 周囲には仕様の定められた塀又は土盛りを設ける必要があります。
- さらに温度・濃度の上昇や鉄イオン等の混入による危険な反応を防止する措置も義務付けられます。
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目次
ヒドロキシルアミン等を取り扱う製造所はなぜ特別な特例があるのか

ただしヒドロキシルアミン等のように性質が特殊な危険物には、この基準を超える特例が別途用意されています。
アルキルアルミニウムやアセトアルデヒドと並んで、ヒドロキシルアミン等もこの対象に含まれています。
「性質に応じ」という文言のとおり、ヒドロキシルアミン等に対する特例の中身は他の物質とは別に規則で定められています。
その特例をまとめているのが規則第13条の10です。
次の項目で、この特例の対象になる条件を確認します。
アセトアルデヒドやアルキルアルミニウムは聞いたことがありますが、ヒドロキシルアミンも同じ枠なんですね。
はい、性質に応じた専用の特例が用意されています。
次で対象範囲を見ていきましょう。
この特例の対象になるのはどんな製造所か

規則は対象を、物質の危険性を示す試験区分で絞り込んでいます。
この区分は、規則が定める圧力容器試験で破裂板が破裂したかどうかによって判定されます。
試験で破裂しなかったもの、つまり第2種自己反応性物質は、この特例の対象には含まれません。
さらに規則第13条の10第1号は、指定数量以上を取り扱う製造所に限って距離の基準を適用すると定めています。
つまり試験区分と数量の両方の条件を満たしたときに、この先の距離や塀の基準が動き出します。
同じヒドロキシルアミンでも、試験の結果次第で扱いが変わるんですね。
はい、試験区分と指定数量の両方がポイントです。
次に距離の計算式を見ていきましょう。
距離と塀土盛りの基準はどう計算するのか

規則は具体的な計算式と設備の仕様を定めています。
たとえば指定数量の倍数が4のときは、D=51.13×2=102.26メートル以上という計算になり、通常の距離基準よりかなり大きくなります。
さらに周囲には塀又は土盛りを設け、外壁から2メートル以上離しつつできるだけ接近させ、高さは取り扱う部分以上とすることが求められます。
塀はコンクリート造など仕様が細かく指定されており、土盛りも60度以上の急な勾配は付けられません。
どちらを選ぶかは事業者の判断ですが、選んだ方式に応じた仕様を満たす必要があります。
うちは指定数量の倍数が10ぐらいになりそうなんですが、距離はどのくらい必要になりますか。
式に当てはめて正確に計算することができます。
早めに確認しておくと安心です。
実務で見落としやすいのはどこか

規則の条文を読み比べると、対象範囲に違いがあることが分かります。
第1号・第2号が対象を「指定数量以上の第1種自己反応性物質の性状を有するヒドロキシルアミン等を取り扱う製造所」に絞っているのに対し、第3号・第4号は「ヒドロキシルアミン等を取り扱う設備」とだけ定めています。
つまり温度・濃度の管理や鉄イオン等の混入防止は、距離や塀の対象より広い範囲の設備にも及ぶ可能性がある書き方です。
具体的な数値基準が条文に書かれていないぶん、対応が現場任せになりやすい部分でもあります。
設計段階でどんな措置を講じるかを明確にし、記録として残しておくことが実務上のポイントです。
距離と塀の基準だけクリアすれば大丈夫だと思っていました。
温度管理や鉄イオン対策も忘れずに確認してください。
次に実務の手順をまとめます。
明日からなにをすればよいのか

新設のときも、既存の製造所を点検するときも同じ視点で使えます。
- 自社が扱う物品がヒドロキシルアミン又はその塩類を含むかどうかをまず確認する
- 試験結果や安全データシート等から、第1種自己反応性物質の性状を有するかを確認する
- 該当する場合は指定数量の倍数を確認し、D=51.13×√Nで必要な距離を計算する
- 塀又は土盛りの仕様(高さ・厚さ・勾配)を設計段階で満たしているか確認する
- 温度・濃度の管理設備と鉄イオン等の混入防止設備についても、具体的な措置を設計に落とし込む
特例の対象になるかどうかの判定は試験結果という客観的な資料に基づくため、自己判断で済ませないことが大切です。
新設だけでなく、取扱量の変更や設備の更新時にも同じ確認が必要になります。
記録を整理しておくと、点検や更新の際の確認もスムーズになります。
うちの物品がどちらの区分か、まず確認してみます。
試験結果の確認から始めてみてください。
次のよくある質問もあわせてご覧ください。
よくある質問
まとめ
試験結果の確認を、この機会にしてみます。
早めのご相談がおすすめです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第9条第3項(製造所の基準の特例)
- 危険物の規制に関する政令別表第三備考第11号(第1種自己反応性物質の定義)
- 危険物の規制に関する規則第13条の10(ヒドロキシルアミン等の製造所の特例)
- 危険物の規制に関する規則第1条の7第5項(圧力容器試験)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





