危険物の規制に関する政令は、製造所と移動タンク貯蔵所の技術上の基準を、それぞれ第九条と第十五条にまとめています。
ただしアルキルアルミニウムのように性質が特殊な危険物には、総務省令でこの基準を超える特例を定められると規定されています。
この特例は製造所の漏えい防止設備から、移動タンク貯蔵所の鋼板の厚さや容量まで、通常の基準よりかなり踏み込んだ内容になっています。
この記事では規則第13条の8と第24条の8が定める特例の中身を条文から整理します。
うちはアルキルアルミニウムを扱う設備の増設を検討しているんですが、普通のタンクローリーでは運べないと聞きました。
アルキルアルミニウム等には専用の特例基準があります。
まずは対象になる危険物から確認していきましょう。
空気や水に触れると燃えると聞いたことがあります。
はい、その性質のせいで通常より厳しい設備が求められます。
順番に見ていきましょう。
- アルキルアルミニウム等を取り扱う製造所と移動タンク貯蔵所には、政令第9条第3項・第15条第4項に基づき通常の基準を超える特例が課されます。
- 対象になるのは、規則第13条の7が定める「アルキルアルミニウム等」を取り扱う施設です。
- 製造所の設備の周囲には、漏えい範囲を局限化する設備と安全な槽への導入設備を別々に設ける必要があります。
- 製造所の設備には不活性の気体を封入する装置も必要で、水蒸気での代用は認められません。
- 移動タンク貯蔵所の移動貯蔵タンクは、鋼板の厚さ10ミリメートル以上・容量1900リットル未満という特例基準を満たす必要があります。
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目次
アルキルアルミニウム等とはどんな危険物を指すのか

アルキルアルミニウムは、この特例が及ぶ危険物の代表格です。
消防法別表第一では、アルキルアルミニウムは第三類の危険物のうち自然発火性物質及び禁水性物質に区分されています。
空気に触れると自然発火し、水に触れると激しく反応するという性質が、専用の特例基準につながっています。
アルキルアルミニウム等の特例は政令第9条第3項(製造所)と第15条第4項(移動タンク貯蔵所)の両方に置かれており、製造所とタンクの両方で通常より厳しい基準が課されます。
次の項目から、それぞれの特例の中身を条文で確認していきます。
アルキルアルミニウムは空気に触れただけで燃えるんですか。
はい、自然発火性があります。
次は製造所の設備を見ていきましょう。
製造所の設備にはどんな漏えい防止措置が必要なのか

条文を確認していきます。
「漏えい範囲を局限化するための設備」は、堰や溝のように漏れの拡散そのものを止める役割を持ちます。
それとは別に、漏れた分を受け止める「安全な場所に設けられた槽」への導入設備も欠かせません。
局限化と回収は別々の機能として条文に書かれており、片方だけでは足りません。
設計段階からこの二つの設備を切り分けて計画しておくことが重要です。
溝を作るだけでは足りないということですか。
はい、受け止める槽も別に必要です。
次は気体の封入装置を見ましょう。
製造所ではなぜ不活性ガスの封入装置も要るのか

条文を確認します。
アルキルアルミニウムは空気(酸素)に触れると自然発火するため、設備内から酸素を排除するという発想の措置です。
アセトアルデヒド等の特例(規則第13条の9)は「不活性の気体又は水蒸気」のどちらでもよいとしていますが、アルキルアルミニウム等の規則第13条の8は不活性の気体のみを定めています。
禁水性の物質であるため、水蒸気を封入する余地そのものが条文上ないと読めます。
この違いを見落とすと、他の特例条文の措置をそのまま流用してしまう恐れがあります。
水蒸気を入れる案も考えていました。
アルキルアルミニウム等では水蒸気は使えません。
次はタンクの構造を見ましょう。
移動タンク貯蔵所はなぜここまで頑丈な構造が求められるのか

通常の移動タンク貯蔵所の基準と比べながら確認します。
容量も通常の上限3万リットル以下に対し、アルキルアルミニウム等の特例では1900リットル未満という大幅に小さい上限が定められています。
このほか、移動貯蔵タンクを固定する緊締金具・すみ金具にもタンク荷重の4倍のせん断荷重に耐える強度が求められ、タンク自体を不活性の気体を封入できる構造にすることも義務付けられています。
外面は赤色で塗装し、注意事項を白文字で表示する義務もあります。
「移動タンク貯蔵所だから基準は一律」と思い込むと、この上乗せ基準を見落とすことになります。
うちのタンクローリーは3万リットル近く積めるタイプなんですが、そのままでは使えませんか。
アルキルアルミニウム等では1900リットル未満に抑える必要があります。
最後に確認の手順をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

新設のときも、既存設備や車両を点検するときも同じ視点で使えます。
- 自社が扱う物品がアルキルアルミニウム又はアルキルリチウム等に該当するかをまず確認する
- 製造所では漏えい範囲を局限化する設備と安全な槽への導入設備が別々に設けられているかを確認する
- 製造所の設備に不活性の気体を封入する装置が常時機能しているかを確認する
- 移動タンク貯蔵所は鋼板の厚さ10ミリメートル以上・容量1900リットル未満という特例基準を満たしているかを仕様書で確認する
- 緊締金具・すみ金具の強度と外面の赤色塗装についてもあわせて確認する
製造所・移動タンク貯蔵所いずれも、新設だけでなく改修や車両の入替え時にも同じ確認が必要になります。
記録を整理しておくと、点検や更新の際の確認もスムーズになります。
うちのタンクローリーがこの基準に当たるか、まず仕様書で確認してみます。
仕様書と現物の両方を確認してみてください。
次のよくある質問もあわせてご覧ください。
よくある質問
まとめ
タンクの仕様確認を、この機会にしてみます。
早めのご相談がおすすめです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法別表第一(危険物の品名及び性質の区分)
- 危険物の規制に関する政令第9条第3項(製造所の基準の特例)
- 危険物の規制に関する政令第15条第1項・第4項(移動タンク貯蔵所の基準及びその特例)
- 危険物の規制に関する規則第13条の7(製造所の特例を定めることができる危険物)
- 危険物の規制に関する規則第13条の8(アルキルアルミニウム等の製造所の特例)
- 危険物の規制に関する規則第24条の8(アルキルアルミニウム等の移動タンク貯蔵所の特例)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





